嵐の夜の、止血と攻勢|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第95回
飲食業界に広がる減速感 いま求められる「焦らない経営」
先日、Restaurants Canadaが発表したレポートによると、カナダの飲食業界は第1四半期こそどうにかプラス成長を維持したものの、第2・第3四半期、つまりまさに今、4月から9月にかけてはマイナス成長が予測されています。
事業者の71%が昨年より利益が下がったと回答しており、消費者側から見ても48%のカナダ人が家計の圧迫を理由に外食頻度を減らしています。
トロントを含むGTAではランチの来店頻度が前年比で8%落ち込んでおり、追い打ちをかけるようにスーパーエルニーニョの発生が懸念される今年の夏は、猛暑や荒天による売上低下圧力がさらに加わる可能性があります。ラーメン屋にとって、暑い夏はただでさえ向かい風です。
こういった状況を前に、どうしても焦りを感じざるを得ませんが、こんな時こそ努めて焦りは禁物です。焦りは判断を曇らせ、長期的な視座に立った正しい判断を下せず、場当たり的な対応でかえって状況を悪くしてしまうことすらあり得ます。厳しい局面では、まずは立ち止まって一呼吸おいてから、本質に戻る必要があると思っています。
会社は「法人」とも言われるように、人体に例えられることがあります。売上や利益は血液のようなもので、それ自体が目的ではありません。しかし、血液が失われ続ければ、どんな志を持った会社も死んでしまいます。上位目的を実現するためには、まず生き続けることが前提であり、裏を返せば「死なないこと」が至上命題でもあるのです。厳しい今の局面で言えば、とにもかくにも出血を止めることが最優先です。
ランチ縮小、ディナー強化 いま必要な経営判断
では具体的にどうするか。今考えているのは、攻めと守りを明確に使い分けることです。
守りとは、売上を上げることより、今ある売上でいかに利益を残すかを考えることです。
GTAの現状を見れば、ランチ需要は構造的に落ちています。ここで無理に集客しようとするのではなく、営業時間の短縮や人員の最適化で固定費を削り、少しでも利益を手元に残す。出血を止める、守りの体制です。
一方、攻めとは、将来の顧客基盤をつくるための先行投資です。
データによれば、ディナーは前年比3%の伸びを見せており、GTAでも唯一プラスを維持している時間帯です。ランチの営業時間を短縮した分、ディナーの営業時間を延長してそこにリソースを集中する。スタッフのシフトをなるべく維持しながら、働く時間帯をずらすイメージです。
たとえば、ビールをお得な価格で提供したり、デイリースペシャルやコンボメニューで短期的な利益率を多少犠牲にしてでも集客し、雷神に足を運ぶ習慣をつくる。短期の損を将来の得に変える投資と捉えています。
トントンでもいいいま優先すべきは「生き続けること」
攻めと守り、その判断の根底にあるのは「死なない」哲学です。ビジネスをやっていれば、天候や紛争、政治や世の中の構造の変化といった外部環境要因から、社内のゴタゴタ、人間関係のもつれやチームの不和など、様々な変数がある中で、必ず良い時と悪い時があります。
悪い時を耐え、死なずに生き残れば、必ずまた流れが変わり追い風が吹く。その時に初めて、積み上げてきたものを回収できる。今はトントンでも構わないと、ドンと構えて生き残ることが最優先です。
天候などの影響で売上がガクンと落ちる日が続くと、眠れなくなることもあります。それでもコロナも乗り越えたし、幾多の困難をくぐり抜けてきました。それに比べればどんな困難も乗り切れると、いつも一生懸命自分に言い聞かせています。
今まさに、本当に厳しい瀬戸際にいる事業者の方もいらっしゃるかもしれません。同じ嵐の中にいる一人として、まず死なないための判断を積み重ね、目の前のお客さんを笑顔にするのみだと思っています。






