ディストピア化する飲食店|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第73回

店内飲食でプラスチック容器を使用した某牛丼チェーン店
某牛丼チェーン店が一部の店舗で、オペレーションの簡素化のために陶器のどんぶりから使い捨てのプラスチック容器に変更したところ、「ディストピア容器」と揶揄され、一定の顧客からは「温かみがない」といった不満の声があがっているそうです。あくまでネット上で一部の声が大きく取りざたされているという側面は当然ありますが、ここカナダで暮らしていると感覚のズレがありすぎて、一瞬、思考が止まってしまいました。
事のいきさつとしては、人件費や食材の高騰に対して経費を削減するため、そして従業員の負担の軽減のために、意外と手がかかる皿洗いの手間をまるっと省いてしまおうと、店内飲食の際にもプラスチック容器を使用するようにしたのがはじまりです。
すでにカナダではシングルユースのプラスチックが禁止されて久しいなか、時代に逆行するような企業の決定に違和感を覚えざるを得ませんが、国が変われば確かにそういったことも起こりうるのかと、一定の理解は示せます。ただ、そうは言ってもさすがにこれには世間の反発があるだろうと思いきや、消費者の反応はそこではなかったのです。
安い、美味い、早い牛丼に一体これ以上なにを求めているんだろう
たゆまぬ企業努力の末にしか辿り着けないであろうワンコイン以下の牛丼は、僕も若かりし頃に大変お世話になりましたが、本当にあり得ないとしか言いようのない値段で提供されている安い、美味い、早い牛丼に一体これ以上なにを求めているんだろう、というのが率直な気持ちです。
たしかに安さを売りにしている以上、どうしても安いお客さんがついてしまうというのは飲食店の性ではあります。それにしてもあれだけクオリティの高い牛丼を清潔な店内で食べて4ドル以下というのは衝撃以外の何物でもなく、容器が使い捨てになったぐらいで「ディストピア」とあげつらうなど、自分だったらやっていられないという気持ちになるのはたやすく想像がつきます。それでもこういった声に真摯に向き合わなくてはいけないのもまた現実ですので、同情の念を禁じえません。こういったどうでもいいイチャモンこそディストピアの根源とさえ思います。
またこういったキャッチーなネット上の話題を大きく取り上げるメディアも、悪意はないにせよ、生きづらい社会の形成を助長していると感じますが、発信者として自分のことを棚に上げて批判するわけにはいきませんので、最後に自分なりの解決策を示しておきます。
私が考える解決策
まずは値上げとセットでの賃金の引上げで、これは今後、日本が国際社会のなかでうまく立ち回るためにも必ず成し遂げなければならない必須の課題です。そして、いつかどこかでやらなくてならないことなので、問題を先送りにせず、政府主導でも企業からでも出来るだけ早くやらなくてはいけません。
それからもう一つ、年中無休の24時間営業に対して、何かしらの規制をかけるか、深夜料金をのせるか、従業員にさらに深夜手当をつけるなどして、それでも採算が取れる店舗以外は、深夜は閉店を促していく。
現状は、経済合理性のもとにできあがった当たり前なのかもしれませんが、経済とは経世済民、すなわち「世を治めて民を救う」という言葉が語源だそうです。便利を突き詰めるのは決して悪いことではありませんが、どこかで誰かが割を食う社会は健全とは言えません。そして、いつでも割を食うのは弱者や若者です。
今こそ、「人」や「温かみ」に焦点を当てた策や挑戦をガシガシやっていく必要があると思っています。






