【TORJA読者旅行記】#027 野生の王国アルゴンキン! 旅行私記
野生の王国アルゴンキン! 旅行私記
今月のレポーター あんなさん
- 車の上にのっているカヌーを見た時に、そのサイズに驚愕。 担いで歩くとかって本当にできるのか?とドギマギしたけどやってみたら以外と簡単。人間の体にあわせて作られた道具なのねと感動しました。
- カヌーには各々の荷物や食材を載せます。一回載せちゃうと重さなんて気にせずにすいすい進めます。乗る時のポイントは重心をめちゃくちゃ低くして乗り込むこと。そうすると全然揺れずにちゃちゃっと乗り込めます。
- 後ろに座っている人が水中でパドルを動かして進路を決めていきます。前方は障害物がないかの確認。浅瀬になると岩がゴロゴロあるので気がついたら岩の上に乗っちゃって動けないとか簡単に起こります。 特にビーバーのダムは鬼門。ぼーっとしていると突っ込んでしまい、なかなか抜け出せません。
- 勇気を出して飛び込むと、本当に気持ちがいいです。飛び込めそうな岩がある場所にキャンプをはると気が向いたらいつでも飛び込めるので楽しいですよ。でもそういうところは人気なので、カヌーを飛ばして誰よりも先に行きましょう。
- 勿論お風呂やシャワーなんてないから、汗をかいたら泳いで流します。 夏は9時過ぎまで明るいので、それこそ朝から晩まで泳げます。海 水と違いべたべたすることはありません。海では味わえない湖ならではの醍醐味ですね!
- 陸地ではこんな感じに黙々と歩きます。進むっきゃないのです。
夏の初めにトロントから車で4時間ほどの場所にある、アルゴンキン州立公園に行ってきました。カナダの人達からするとアルゴンキンは「ここぞカナダ」という環境らしく、こちらに引っ越してきてからずっと、カナダ人の友人たちに「とりあえず見なくちゃ始まらない」と言われていました。大自然と都市という意味ではかなり違いますが、外国から来た人には是非見てもらいたい風景という意味では、日本でいうところの京都みたいなものなのかもしれません。アルゴンキンの説明をしてくれている時点で、友人たちの表情は完璧に「っどや!」。州立公園の営業の方ですか?って勢いでお薦めされました。
公園という可愛らしい名前ではあるけれど、アルゴンキンは東京都の3.5倍ある巨大な自然保護地区です。2000個近くの大小の湖があり、その湖を繋ぐ獣道が、森の中に縦横無尽に走っています。 シートン動物記を書いた、シートンさんもキャビンを持っていた野生の王国で、夜はオオカミの遠吠えが聞こえ、日中運が良ければムースやビーバーを見ることができます。カナダの国鳥のルーンのコーラスも聞こえます。あと、運が悪いと熊にも出会います。友人たちは「アルゴンキン着いたらカヌーで湖を横断して、陸地は熊に用心しながらカヌーや食料品やテント担いで横断だ!これぞカナダ!大冒険!」と鼻息荒い。話しを聞いているだけで、求められている逞しさのレベルが日常生活のとは明らかに違い、こっちはそんな場所で自分が足手まといになったり熊に食べられたりしないかハラハラドキドキ。
どんな苦行に巻き込まれるのかとビビりながらの参加だったのですが、(多くの場合は)非常に穏やかで美しく、とても優雅な場所でした。百聞は一見にしかず。どうやら荒行とか、苦行とか、脂汗かきながらの我慢とかは、カナダスタイルじゃない。大変だけど、穏やかで優雅。特に穏やかな湖をカヌーで横断している時の静寂さは、それこそ体験したことがないものでした。禅寺とかが作り上げようとしている環境の巨大版って感じ。ムースとかに近づくときは、本当にしずーーーかに、しずーーーかにパドルを動かして進む訳で、その時のリズム感や湖との一体感は他では体験できない静かな喜びに溢れていました。旅行中の食料やテント、カヌーを担いで進む陸地の移動も、厳しさ故に、虚しくなったり諦めたり甘えたりする余地がないため、粛々とやるしかなく、それはなかなかに爽やかな経験でした。
普段私たちは沢山の人達が時間をかけて作りあげた人間用の巣の中に住んでいます。そこには道や上下水道や電気が通っていて、温かい家があり、魅力的な芸術やエンタメが溢れています。でもアルゴンキンのような場所では、自分の持っている知恵や持ち運べる範囲内の道具で数日間暮らすことになります。そうなると一緒にいる一人一人の影響を感じはじめます。相手の持っている知恵や経験が自分の生活を支えてくれるのを肌で感じます。途中湖の上で雨と強風にあたり、どうにか自分達の力と知恵のみでその状況から脱出しなくちゃいけなくなったりしたのだけど、そんなシンプルな、でもとても具体的で切実な挑戦は初めてでした。どうやら美しい自然や、迫力ある野生動物だけではなく、このミニマルな時間と人間関係もアルゴンキン体験の大切な一部なようです。
旅行の間ぽろっとカナダ人の子が「こういう経験が性格を作っていくんだ。」と言っていたのがとても印象的でした。私にとっては何もかもはじめてで、こんなミニマルな体験はしたことがありませんでした。相手からしてみたら、何も分かっていない初心者中の初心者が危険な目にあわないように環境や計画を整えなくてはいけない。確かに、これは一人一人の性格を作っていくのだと思います。アルゴンキンの自然はあっけにとられるほど美しく、その中で性格を育める幸運に、「こりゃカナダの人もどやって感じになるわ!」と、私にとっても大切な場所になりました。
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