商工賃貸マーケットの動向|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第65回】
今回は、トロントでの最近の商工賃貸のマーケット動向についてお話したいと思います。商工物件の種類は、Office(オフィス)、Retail(店舗)、Industrial(工場、倉庫等)の大きく3種類に分かれますが、本編では主にオフィスと店舗について取り上げます。
オフィスと店舗の平均賃料

トロント不動産協会(Toronto Real Estate Board=TREB)の報告によれば、2023年第1四半期の商工賃貸マーケット全体における賃貸案件数は減少(前年同期比約20%ダウン)、オフィスは前年同期比約4%ダウン、店舗は前年同期比約7.3%のダウンでした。平均賃料においてはオフィスは1sqftあたり15・48ドル(前年同期比約0.1%UP)、店舗は1sqftあたり29・04ドル(前年同期比約22.2%DOWN)となっています(図1)。

図2のとおり、直近5年間における平均賃料の推移を見てみますと、コロナ期間を経てオフィス、店舗ともにアップダウンの推移をしていますが、コロナ期間においても劇的に減少した結果ではなかったことを示しています。

前述の2023年第1四半期の発表によると、2022年第1四半期における店舗の平均賃料は39.34ドルでしたが、2022年第1四半期当時の発表では22.74ドルと大きな差があります。TREBのデータ抽出方法の結果この差が生じたと思われますが、2022年第1四半期から第4四半期にかけての店舗の平均賃料は(26.58ドル~19.79ドル)と発表されていますので、当時発表の22.74ドルの方がより適正な数値ではないかと考えます。その場合、2023年第1四半期における平均賃料は前年同期比約27.7%UPとなり、オフィス・店舗ともに前年にくらべて若干の上昇傾向にあることがうかがえます。

CBREの発表によりますと、2023年第1四半期における、カナダ全体のオフィスの空室率は17.7%、トロントのオフィスの空室率はダウンタウンで15.3%、郊外で20.1%となっています(図3)。
商工物件の費用
賃貸商工物件においてテナントが負担する費用は、住宅物件といくつか異なる点があります。
①賃料に税金がかかる
住宅賃料にはHSTはかかりませんが、オフィスや店舗の賃料にはHSTがかかります。
②TMIはテナント負担
T(Property Tax)、M(Maintenance Fee)、I(Insurance)の3つをすべてテナントが毎年の実費額を負担する必要があります。
例えば面積:1,000sqft、賃料:18ドル/1sqft当たり、TM:12ドル/1sqft当たりのオフィスを借りる場合、
18ドル×1.13=20.34ドル(税込賃料)+12ドル(TMI)=32.34ドル×1000(sqft)=3万2340ドル(年間賃料)÷12=2695ドル(月賃料)となります。
③光熱費はテナント負担
電気、ガス、水道、インターネット代などテナント自身が支払います。
商工物件の探し方
①MLSで探す
MLSではオフィスや店舗の賃貸情報、ならびに営業権の売買に関する情報が掲載されています。しかし住宅物件の賃貸情報はMLSにほぼ9割程度掲載されているといわれるのに比べて、商工物件はMLSにすべて記載されている訳ではありません。
②商工エージェントネットワークで探す
MLSに掲載する前のステップとして、「EXCLUSIVE」と呼ばれるクローズの形で情報がやりとりされる場合も多く、こうした情報は商工エージェントのネットワーク内においてやりとりされます。
③現場に行き探す
特に店舗などはMLSを通じた一般公開情報にはされにくいため、現場でのみ賃貸情報が掲載されることもしばしばあります。またAAAランクのオフィスビルなどはオーナー側のリーシングマネージャーに直接連絡して賃貸情報を確認する必要があります。
契約について
①基本的に5年間契約
賃貸商工物件において、住宅のようにレントコントロールはありません。そのため、テナントにとっては安定した賃料を確保するため、オーナーにとっては賃料相場の予想がつくため、5年間の契約がもっとも多いケースといわれます。
特に記載がない場合は、5年間の賃料金額は固定となりますが、通常は今後のマーケットプライスの同行を見込んで、毎年ごとに数%、あるいは1~2年目は〇〇ドル、3~5年目は〇〇ドルと、と定めるケースが多いです。
また5年間が終了したら、再度5年間の賃貸を行う権利を有する、リニューアルオプションを記載することがほとんどです。5年+5年の合計10年が最も多いケースですが、事業計画によっては5年+5年の更新×2回と合計15年分を最初から確保するケースもあります。
②TMIは実費払い
特に固定資産税や管理費は年々上昇する可能性が大きいため、テナントはこれを全額実費するよう定めるケースが多いです。
③弁護士のリーガルチェックが必須
商工賃貸においては、期間も長く賃貸契約も複雑な内容を伴うケースもあるため、弁護士によるリーガルチェックが必要となります。
まずオファーを出して成約後、弁護士による賃貸契約書の作成となりますが、リース契約内容だけではなく、オファーの段階から弁護士によるレビューを行うことをおすすめします。
また店舗物件において営業権を買い取ってビジネスを行う場合、営業権譲渡に関する売買契約、ならびに店舗物件自体に関する賃貸契約の2種類の契約が存在しますので、必ず弁護士のリーガルチェックが必要です。
④途中解約時のサブリース
例えば現在のオフィスの賃貸契約が5年間で、まだ2年しか経っていないけれどオフィスを移転したい場合、残存の3年間についてサブリース、あるいは名義変更の引き受け先を探すことができます。
⑤フリーレント
オフィスや店舗には契約締結後に内装期間が必要となります。そのため、フリーレントとして数か月間の賃料を無料にしてもらうか、内装においてオーナーに一部費用を負担してもらうなど交渉し、契約に明記する必要があります。
⑥デポジット
住宅では最終月1か月分のデポジットが規定となりますが、商工において明確な規定はありません。オーナーと交渉になり、通常3~6か月程度のケースが多いです。
⑦契約違反による立ち退き
例えばテナントが賃料を滞納した場合、住宅においてはテナントを追い出すことは実現するには時間を要しますが、商工物件においては弁護士の介入のもと、オーナーは鍵を取り換え、店舗やオフィス内に残っていた物品を差し押さえ、これを売却する権利を有します。
オンタリオの法律ではテナントをかなり守っている規定が多いですが、商工ではそうした傾向はありません。そのため契約する際には専門家のアドバイスを受け、十分に確認してから契約することをおすすめします。
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