新しい年の健康と幸福を願って|お茶コラム
新年明けましておめでとうございます。本年も「お茶コラム」を宜しくお願い致します。
皆さんは年明けに飲まれるお茶として有名な「大福茶(おおぶくちゃ)」をご存じでしょうか?新しい年を迎え、その年の健康と幸福を願って飲まれる縁起のいいお茶です。京都を中心とした関西地方の風習で、私自身は関東出身なので、日本に住んでいた頃はあまり馴染みがありませんでしたが、ここ数年は毎年お正月に飲んでいます。地方によっては黒豆や山椒を使ったりと、バラエティがあるようですが、梅干しと結び昆布に緑茶を注ぐのが一般的のようです。梅干しは、「しわがよるまで元気でいられるように」という健康長寿を願い、昆布は、「喜ぶ(よろこぶ)」の語呂から、「お祝い」の意味が込められているそうです。また、「結び昆布」は、「家族の結びつきをしっかりさせる」という願いが込められているようです。
大福茶のはじまりは諸説あるようですが、1000年以上も前、疫病が流行する京の都で、多くの命が失われことに心を痛めた僧侶、空也上人(くうやしょうにん)が、梅干を添えたお茶を人々へ振舞い、多くの人の病が治ったのだそうです。
余談ですが、「お茶を一服」という言葉がありますが、薬を飲むとき、「服用する」という言葉を使いますよね。同じ、「服」という言葉が使われているのは、お茶はその昔、「薬」として用いられていたからなのです。
話は戻って、時の村上天皇がこの功徳にあやかって、毎年元旦にお茶を服すようになったのだとか。「皇服茶(おうぶくちゃ)=天皇が飲むお茶」といわれるようになり、それがいつしか庶民へも広まり、幸福をもたらす意味から「大福」の文字が当てられるようになったといいます。「人々に幸福をもたらすお茶」という意味が込められ、今日まで風習が続いているのです。
日本ではこの時期、各お茶屋さんがお正月らしいパッケージに、玄米茶や高級茶葉をブレンドした日本茶を「大福茶」として販売しているようです。お茶屋さんによっては、干し梅と昆布をセットにして販売しているところもあるようです。私は家にあるもので手作りしています。作り方はいたって簡単。梅干しと昆布をゆのみへいれ、そこへ煎茶、玄米茶、ほうじ茶などの日本茶をそうっと注げば完成です(昆布は出汁用の乾燥昆布を使います。ふやかして柔らかくなったら、結びやすいよう、細長い大きさにカットし、一回くるっと巻きます)。梅干しの酸味と、昆布の旨味、お茶というよりもスープのような味わいのお茶です。新しい年の幸福と健康の願いを込めて、皆さんも今年のお正月は大福茶で一服してみてはいかがでしょうか。
2025年が読者の皆様にとって、健康で幸せに満ち溢れた年になりますように。
吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア、「桃ティー」と、「日本茶カナダ」という非営利団体の運営。桃ティーは2015年からオンラインと並行して、トロントのお茶の祭典、ティーフェスや日系文化会館のイベントなどに出店。日本茶カナダは昨年2023年に第一回日本茶祭りを開催。今年は11月3日に開催予定で、只今準備中!