お茶のお正月|お茶コラム
11月は「お茶のお正月」と呼ばれ、おめでたい月なことをご存じでしょうか?抹茶の産地で有名な宇治などを中心に、日本ではこの時期、いろんなところで、お茶会が開催されているようです。「口切り」と「炉開き」があることに由来しています。
昔は、5月頃に収穫したお茶を、茶壷にいれて封をして大切に保管していました。封をしたあと、夏の間茶壷の中で熟成させ、その保管したした茶壷を11月にあけるのです。茶壺の封を切って、茶葉を取り出し、茶葉を石臼で挽いた抹茶でお客様をおもてなしする茶事のことを茶道では「口切り」といいます。
「炉開き」という言葉は茶道をしていない方は聞き慣れない言葉かと思いますが、「炉」は文字通り、湯を沸かすために炭をいれて、火をいれる「炉」のことです。この「炉」は季節に応じて使い分け、お客様が楽しく茶会を過ごせるような心配りをします。
夏に使われる「炉」のことを、「風炉」といいます。「風炉」がもちいられる時期は、5月5日頃の立夏(りっか)から、11月7、8日あたりの立冬(りっとう)の季節までと言われます。「風炉」は持ち運びができ、炭の火をお客さまから遠く離れた場所に移動することができます。反対に、冬の「炉」は、畳の部屋に四方の穴を開けて、炭を組む小さな囲炉裏(いろり)のことを指します。その上に釜を掛け、湯を沸かし、抹茶を点てる訳です。囲炉裏の位置はお客様へ近い位置にあり、少しでも暖かさを届けれるよう、お客様への心づかいが感じられます。
「炉開き」とは、夏に使った「風炉」をしまい、冬の「炉」に火を入れる行事です。茶道を確立した千利休が残した言葉に、客をもてなす心、「夏は涼しいように、冬は暖かなように、茶は呑みよきように」これが極意。とあります。季節にあわせて、お客様がより居心地よく、美味しくお茶が飲めるよう、細やかな配慮を常に心がけることで、本当の意味での「おもてなし」を茶道を通して学んでいるような気がします。
また、「炉開き」と言えば、「亥の子餅」。イノシシがモチーフの和菓子です。「亥の子餅」は昔から、無病息災を願って食べられていた風習があったそうです。
また、少し横道がそれますが、「亥」は五行思想(万物は木、火、土、金、水の5種類の元素からなるという自然哲学)で、「水」の性質を持ち、「火」を防ぐとも考えられていたようです。そこで、茶道の世界では、火事にならないように、「炉開き」のこの時期に「亥の子餅」を食べる習慣が始まったようです。日本には昔から続いているさまざまな行事がたくさんあり、現代を生きている私たちが先人の信仰や風習を知り、体験できることも茶道の魅力のひとつだと私は思います。

吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア「Momo Tea」とお茶団体「Nihoncha Canada」を運営。Momo Teaは2015年からトロントのお茶の祭典、Tea Festivalや、日系文化会館の季節のイベントを中心に出店。2023から日本茶の良さをカナダの人に広めたいという想いを込めて、日本茶と日本の文化に特化した「日本茶祭り」を主催。毎年11月第一日曜開催予定。










