お茶のお正月|お茶コラム
12月。年の瀬ですね。茶道をしていると四季の移ろいを日常を通して感じることができるような気がします。茶道のお点前では、茶杓(ちゃしゃく:抹茶をすくう竹のスプーン)を使うのですが、その中で、お茶を入れる亭主がお客様から「銘」をきかれる問答があります。「銘」は「禅語」だったり「季語」だったり、その時のテーマに相応しいと思う言葉を選ぶのですが、12月によく使われる銘として、初雪、寒月(かんげつ)、氷花(ひょうか:雪の結晶をさしています)、無事、年忘れ などがあげられます。そんな中、「冬至粥」という銘がこの時期に使われるとということがわかり、その由来を調べてみました。
冬至(とうじ)とは一年で夜が一番長い日です。今年は12月21日です。日が一番長い、夏至と対局にある日です。「一年でもっとも太陽が出ている時間が短い日」として知られていますが、昔の人々は「一年でもっとも太陽の力が弱まる日」として、冬至を「一番 死に近い日」と考えていたそうです。そういった理由から、冬至には厄を追い払い、無病息災を願うために、運を呼び込むことのできる食材を食べる風習が生まれたといいます。
「小豆」の赤い色は邪気を払うと考えられていたことから、冬至の日の朝に小豆粥を食べるとよいとされていたことから、「冬至粥」なのですね。
あったかい小豆ご飯にあいそうなのは、熱々の玄米茶でしょうか。朝から心も体もぽかぽかに温まると、先人の暗示にかかり、いい運が舞い込んできそうな気持ちになります。
他には「冬至の七種」と呼ばれる食材として、南京→なんきん(かぼちゃ)、蓮根→れんこん、人参→にんじん、銀杏→ぎんなん、金柑→きんかん、寒天 かんてん、饂飩→うんどん(うどん)があげられます。どれも「ん」が二つ、ついています。たくさんの「ん=運」を呼び込めるという、いわゆる ダジャレ…ですが、運担ぎでこれらの食材が冬至の七種として食べられるようになったと言われているようです。
また、病気に強く寿命が長い「柚子」にあやかって、柚子湯に入って体を温めたりする習慣も、「運」にあやかりたいという気持ちから生まれた習慣といえるでしょう。
海外に住んでいると手にはいる食材は日本よりも限られているかもしれませんが、食材名や料理名の響きから縁起を担ぐ風習、先人の思い、今を生きる私たちも取り入れてみてはいかがでしょうか?
吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア、「桃ティー」と、「日本茶カナダ」という非営利団体の運営。桃ティーは2015年からオンラインと並行して、トロントのお茶の祭典、ティーフェスや日系文化会館のイベントなどに出店。日本茶カナダは昨年2023年に第一回日本茶祭りを開催。今年は11月3日に開催予定で、只今準備中!