カカポとの出会い|カナダ・日本・世界を見つめる8人組 |文・ケートリン・グリフィス
ケートリン・グリフィス Caitilin Griffiths
バンクーバー生まれ。8〜15歳を関西で過ごした。トロント大学博士課程修了、研究テーマは日本中世遍歴尼。学術書『Tracing the Itinerant Nuns』をハワイ大学から出版。2020年までトロント大学で日本史、古文等の教鞭を執った。歴史家として資料調査やリサーチを続けている。
今年2月から5月中旬まで毎日チェックを欠かさなかったYouTubeチャンネル(以下YT)があった。「Kākāpō Cam: Rakiura the kākāpō – 2026 nest」というタイトルで、ニュージーランド南沖島で暮らす珍鳥カカポの巣穴にカメラが設置され、そこが住処であるメス・カカポのラキウラとそのヒナたちの成長ぶりを24時間生配信で視聴できた。
ニュージーランド環境保全省(Department of Conservation – DOC)公式チャンネルであり、配信に至ったのは、「ニュージーランドだけでなく、世界の多くの人々が(絶滅危惧の)カカポに興味を抱き保護の大切さに共鳴し、幅広い形でカカポの生存確保に貢献してほしい」という願いからだそうだ。
カカポ(Kākāpō 和名:フクロウオウム)は、マオリ(Maori)語で「夜のオウム」という意味をもち、ニュージーランドにのみ生息する愛らしい顔立ちの夜行性オウムである。体を覆う羽は緑がかった黄緑色で、森の中では見事にカモフラージュされる。他のニュージーランド固有種鳥のキーウィやウェカと同様、飛べない。翼はあるが翼の筋肉が体重を支えられないため飛ぶのは無理。だが木登りは大の得意で、木から飛び降りる時に翼をパラシュートのように使う。

昔は「木をゆすったらカカポが数羽落ちる」という言い伝えがあるほどニュージーランドのいたるところに生存していたが、西洋からの船で持ち込まれたネズミ、ポッサム、ネコといった外来の動物と西洋人の大量捕獲(飛べない為、簡単に食として捕獲された)などで絶滅されたと思われていた。それが1977年に南島の沖島(Stewart Island)にカカポがまだ生存していることが分かり、保護対策が開始された。しかしすでに島に住み着いた人間による開発とペットの猫や犬等がカカポの生存確率を脅かしたため、確実に守るため自然保護区をさらに沖合の離れ島に築いた。1995年には55羽が確認されたがほとんどオスであったため、絶滅は免れないと思われていた。それでも諦めず環境保全省や動物保護団体などの懸命な努力の成果もあって2026年2月時点では236羽まで増えた。

トロントから見れば、ニュージーランドはそれこそ世界の反対側だが、この生配信のおかげで、貴重な生物に巡りあえた。YTチャンネルの2月の平均視聴者は50人ほどであったのが3月中旬で250人まで増えた。コメント欄の書き込みには、保護支援の相談もあれば「病気で大変だけどラクイラをみると心が和む」「今の社会現状に精神的にダメージを感じていた。でもラキウラの生き様を見ることで平常心を保てている」と環境保全省が期待していた以上の効果をこの生配信は果たしていると思う。
野生動物保護の観点から、限られた予算の中でライブカメラをとりつけたため、どのような生活模様なのか、その動物の「文化」「生態」に触れる機会が増えている。カメラや電池の性能がよくなったおかげだ。カナダの各州そして日本でもこのような「覗き見」が出来るチャンスを増やしてほしい。
多くの人の理解が深まれば、社会全体としても親近感がわき大切に思えるようになる。
環境問題の深刻さは深まるばかりだが、「あきらめず出来ることから始めて行けばいい」とラキウラの配信を見つめながら確信がもてるようになった。まずは「・・・環境破壊反対」等の署名。そしてオンタリオ州環境データベース(Environmental Registry of Ontario)のウェブサイトをチェックし環境に影響を与える提案や政策の規制へ対する不満、疑問点、懸念がある場合躊躇せず意見を書いては提出している。
このように少しずつでもあきらめず前向きに取り組んでいくしかない。カカポたちもあきらめていないのだし。
これからも出来ることをしながらラキウラとヒナたちの成長をずっと見守っていきたい。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLL6KEl0oZPfs0SbJnJX9c7ah4cZe03BaPEnvironmental Registry of Ontario(ERO):
https://ero.ontario.ca
オンタリオ州絶滅危惧種リスト:
https://www.ontario.ca/page/species-risk-ontario

2011年夏、カナダ在住の翻訳家や通訳、活動家、物書き、研究家、学生などの有志が集まり、それぞれの分野で築き上げてきた仕事や研究、日常について語り合ったのがG8の会の発足のきっかけとなり、月に2回ほどカナダ・日本・世界についてのコラムを発信している。
http://thegroupofeight.com










