カナダ・日本・世界を見つめる8人組 2月(2014年)
14. タイムスリップ by ケートリン・グリフィス
12月上旬、小学3年生になる娘のクラスが1890年のスクール・ハウスで一日体験授業に参加した。できるだけ当時の生活を理解し、トロントの歴史を分かってもらうための課外授業である。そのスクール・ハウスには専門の先生がいて、その時代の服装や話し言葉でクラスをまとめ、当時の生活を体験させてくれる。
当日は、同伴してきた担任の先生やボランティアの父母も子供たちと一緒に1890年代の「子供」として一日を過ごすことになる。ロールプレイ方式で、例えば、娘は農家の6人兄弟の5人目という役を与えられ「サラ」の名をもらった。そしてその農家で兄弟たちの一年を通しての家庭仕事と役割分担が何であったかなどを学ぶ。与えられた資料と共にその日は「サラ」になりきるといった、想像力をも働かせるプログラムになっている。「サラ」となった娘にとって一番面白かったのは、いつもの担任の先生が自分の弟役になっていたこと。大いに姉面をして楽しんだようだ。
国語・算数の授業も行われた。紙や鉛筆が貴重な時代、チョークと黒板に似たものをつかっての学習。左利きの娘にとって非常に困ったのが、右手を使わないといけないという決まり。さすがに鞭を使っての体罰の再現はなかったが、行儀悪い子、先生の言うことを聞かない子、また左手で書こうとした子たちへの罰はその日を通して頻繁にあった。一例として、男の子は壁に鼻だけでもたれかける。女の子はポニーテールを釘で壁に打ち付けられ、立たされる。どのような罰があるのだろうかと、わざと悪さをしていた子供たち(あと父母も)も何人かいたが・・・。
当時を再現といっても、やはり完璧には無理のようで、実際にそのスクール・ハウスには電気も通っており、トイレもアウトハウスではなく現代式であった。しかし、昔の人々の生活を本などで読む以上に実感できる良いプログラムである。
さて、このスクール・ハウスに行く前、親への宿題があった。当日着ていく服装、持ち物、そして何よりお弁当、すべてを出来るだけ1890年代を再現できるよう資料を渡された。大抵なんでも手に入る今のトロント、120年前はどれほど自然と共に過ごしていたかを思い知らされた宿題である。お弁当でも今なら冬だろうが、どの季節だろうが多種類の果物や野菜を子供に持たすことができる。しかし、当時はその時期あるものだけ。当時の12月のトロントで食べられる野菜や果物は限られていた。
その日の娘のお弁当は、手作りパン、リンゴ、にんじん&ゆで卵。プラスチックが無い時代だけに、食べ物は布に包み、飲み物はガラスの入れ物にいれ、すべてをバスケットにいれて持参した。おやつのクッキーもその時代に書かれたものをベースに作った。あ、そうか、と気づかされたのが、オーブンの温度設定がないということ。ちゃんと設定が出来るオーブンなんて当時はもちろんない。その上砂糖も貴重な時代、甘みは糖蜜で、またラードもつかう。(家にラードがなかったためバターで補ったが)昔の簡単でおいしいジンジャー・クッキーを娘と作れたのはいい思い出だ。手作りパンも失敗したものの、「おいしいよ」と気を使って食べてくれた娘に感謝している。
母娘でのタイムスリップ小旅行、楽しい一日だった。ちなみにトロント郊外にブラッククリーク・パイオニア・ビレッジという場所があり、ここも昔のオンタリオの生活を垣間見ることができ、体験も出来る楽しいところである。
ブラッククリーク・パイオニア・ビレッジ(Black Creek, Pioneer Village)のサイト:
http://www.blackcreek.ca/
スクール・ハウスの情報・画像もここから見られます。
http://toes.tdsb.on.ca/day/tusc/programs/grade3/school_days/photos.asp
今月の著者
ケートリン・グリフィス(Caitilin Griffiths)
カナダ・バンクーバー生まれ。8歳から15歳までを神戸の公立学校で学び、現在でも神戸弁での会話が大好きだ。大学院では日本史を専攻。ライヤソン大学継続学習スクールとトロント大学で日本語、日本史の講師を勤めてきた。異分野で活躍する女性たち、Group of 8の仲間との刺激的な付き合いからは学ぶことが多く、とても楽しい。
The Group of 8
2011年夏、カナダ在住の翻訳家や通訳、活動家、物書き、研究家、学生などの有志が集まり、それぞれの分野で築き上げてきた仕事や研究、日常について語り合ったのがG8の会の発足のきっかけとなり、月に2回ほどカナダ・日本・世界についてのコラムを発信している。
http://thegroupofeight.com











