カナダ・日本・世界を見つめる8人組 3月(2014年)
15. ジャスティン・ビーバーもベッカムも訪問!
フィリピンの台風被災地は今 by 斎藤文栄

昨年11月10日にフィリピンを襲った台風ハイエン(地元名はヨランダ)は、レイテ島やサマール島に大きな爪あとを残しました。被害者は1月29日現在で死者6,201人、負傷者28,626人、行方不明者1,785人とのこと。1600万人以上が被災し、そのうち自宅から避難して暮らしている人も、まだ400万人もいます。
1月下旬にレイテ島北東部にあるタクロバンという被災地を訪問する機会がありましたので、街の様子をレポートします。
街の一部やホテルでは先月から電気が復旧していますが、依然多くの電柱が倒れたままで市内全体に電気が行き渡るのがいつになるのか全くメドが立っていません。発電機の値段が高騰し通常の400倍もするのでなかなか手に入れることができないとのこと。街の水道管に被害が少なかったため水はなんとか確保できていましたが、まだ水量は少なく十分ではありません。現地で妊産婦支援活動をしているフィリピン家族計画協会の事務所兼住居にお邪魔しましたが、水がチョロチョロとしか出ないので、シャワーを浴びることができないのが大変だとスタッフの女性が語っていました。気温も日中、30度くらいになる中で、水が思うように使えないのはかなり辛いことです。
一番被害がひどかった海岸沿いは、まだほとんどの家が全壊・半壊したままで瓦礫も片付けられていません。この地域は、もともと多くが貧困世帯であり、そのため家の構造が脆弱であること(家というより小屋のようなところに住んでいる人が多い)から被害が拡大したそうです。人々は壊れた家にそのまま住み続けているため、また同じような災害が起きたらと思うとゾッとします。こんな状況でも子どもたちは外で遊んでおり、笑顔で挨拶をしてくれます。フィリピンの人々の特徴なのでしょうか。少なくとも私の出会った人々に悲壮感はなく、明るくたくましく生きていこうという力強い姿勢が感じられました。
避難所に使われている海沿いにある体育館も訪問しました。台風襲来時、多くの住民がここに避難しましたが、高潮が押し寄せ、水がバスケットゴールの高さにまでのぼり、その中で溺死した人も多かったそうです。普段から災害が多いこの地域でも、台風と高潮が同時に襲来するのは初めてで、そのために犠牲者が多かったといいます。訪問時には、周辺で458世帯、2,069人が暮らしていました。2月から、一部の世帯がようやく避難所から仮設住宅に移転し始めるということでした。
今回は、日本の公益財団法人であるジョイセフの支援している医療ミッションの同行がメイン。タクロバンから車で一時間ほどかかるマヨルガ市に妊産婦用の医療ミッションが入るのは台風後初めてとのこと。私が出会った20歳のお母さんは、台風の来る2週間前に女の子を産んだものの、台風で市の保健施設もダメージを受けたこともあり、出産後3ヶ月経って、これが初めての母子検診。赤ちゃんの足にできた湿疹への対応方法を聞くことができてとても喜んでいました。緊急支援段階が終わり、これからは生活の復旧に向けこのような地道な医療支援が求められています。(ジョイセフ http://www.joicfp.or.jp/jp/ )

ところで、被災地には、国連の潘基文事務総長を初め、私が滞在していた際にはスウェーデン国王が訪問するなど、国際機関や各国の首脳が視察に来ているようです。その中でも、地元の若者からは、やはりジャスティン・ビーバーの訪問が印象的だったという感想を聞きました。彼は災害後1ヶ月ほどで現地に入り、被災者の前で歌ったそうです。最近、飲酒運転や暴行容疑で逮捕され素行の悪さばかりが目立ちますが、案外、その合間に(?)こういうこともしているんだと感心しました。つい最近、ベッカムもユニセフ大使としてタクロバンを訪問しました。
被災地では課題が山積しており復興にはまだまだ長い時間がかかりそうです。もっとも心配なのは、すでに私たちがニュースで台風ハイエンの被災地の状況を聞くことが少なくなってきたことです。関心も薄れつつある中、今後も支援を継続していく必要性を切に感じて帰って来ました。
今月の著者
斎藤文栄 (Fumie Saito)
新潟県三条市出身。大学卒業後地元にUターン就職後、米国に留学。帰国してからは国会議員秘書として様々な立法・政策づくりに関わる。内閣府政策調整企画官を経て、東日本大震災女性支援ネットワークのコーディネーター、世話人を務める。昨年夏頃よりトロントに定住中。まれに週刊金曜日に寄稿したりしている。
The Group of 8
2011年夏、カナダ在住の翻訳家や通訳、活動家、物書き、研究家、学生などの有志が集まり、それぞれの分野で築き上げてきた仕事や研究、日常について語り合ったのがG8の会の発足のきっかけとなり、月に2回ほどカナダ・日本・世界についてのコラムを発信している。
http://thegroupofeight.com













