カナダでの死亡原因は!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第33回】
今回は、死亡原因について、日本とカナダを比較しながら、それぞれの特徴をお伝えします。
2017年のデータによると、日本とカナダの死亡率には大きな差があります。
この違いは、人口減少の中、高齢者の割合が増えている日本と、移民により人口が増えているカナダの違いが出ているものと思います。しかし、それだけではちょっと説明がつかないほど、大きな違いですね。
まずは日本のデータを見てみましょう。
日本の死亡原因の第一位は癌と言われていますが、男女でその発生部位を見ると異なることがわかります。
男性では、気管、気管支及び肺の部位が24%と特出しており、次いで胃が13%、この2つの部位で全体の1/3を越えます。
女性では、気管、気管支及び肺の部位が14%、結腸が12%、肝臓11%、胃10%、乳房9%と5部位がかなり拮抗しています。ただ、結腸と直腸を大腸がんとしてまとめると、17%となり、気管支及び肺を抜いて、一位となります。
こうした傾向は、高齢化に伴い癌を発症する人が増えているためと言われています。
厚生省から発表になった2017年死亡原因上位は次のようになっています。
日本では、死亡原因4位に入っている老衰が特出しており、2005年から大きく増加しているようです。高齢化が進み、医療水準が上がる中で、今後「老衰」が増えていくことは間違いないと思います。
では、次にカナダの死亡原因はどのようになっているでしょうか。
2017年のカナダの死亡原因レポートがカナダ統計局から発表になりました。
となっています。
悪性新生物(腫瘍、癌)と心疾患が1位、2位を占めているのは同じです。カナダでは、2000年にはこの二つの原因を合わせると、死因の54%を占めていましたが、その後減少し、2017年では約48%まで下がってきました。特に心疾患が25%から19%に下がっていることが主因で、悪性新生物(腫瘍、癌)の割合はほぼ一定。
日本との比較では、3位以下に大きな違いが見られます。
今回発表になったレポートで特に注目され取り上げれているのが’不慮の事故による死亡。
不慮の事故による死亡は、年々増えており、2000年には8589人だったものが、2017年には13894人にまで増加しています。不慮の事故とは、交通事故、銃による死亡、溺死、焼死、そして中毒死などが含まれます。
これらの中で増えているのが、転倒死と中毒死。転倒死は2000年1562人から2017年4904人(35%)に急増。その内86%は、75歳以上の高齢者となっています。中毒死は2017年に4392人(32%)にまで増加。特に中毒死の94%は、薬物過剰摂取によるもので、2015年から急激に増えています。2017年に薬物過剰摂取で死亡した人の年齢層は、30歳代(1096人)が特出しています。
一方、交通事故死は減少しています。2000年には不慮の事故死の中で交通事故がもっとも多く37%を占めていましたが、2017年には14%(1968人)まで減少しています。
その他の原因は、やや減少もしくは同レベルとなっています。
死亡原因として、今後増えていくと思われるのが認知症によるもの。
死亡原因として挙げられているアルツハイマー病による死亡は6675人(8位)となっています。いわゆる認知症による死亡は、2000年4189人だったものが、2017年には19394人と4倍以上に増加。年齢層では、85歳以上が74%を占めています。加えて、認知症が死亡の一因となった死亡ケース数が18967件あり、合計38000人以上となっています。
自殺についてはどうでしょうか。
日本は自殺者が多い国と言われており、2017年の自殺者数は21321人。8年連続で減少しているとは言え、かなりの数です。その原因動機は、健康問題、経済・生活問題、家族問題、勤務問題が主なものと言われています。人口10万人当たりの自殺死亡率では、日本が16.8人となり、先進7か国では最悪レベルです。
カナダでも、自殺死亡は2017年4157人で死亡原因の9位に入っています。自殺死亡率では、11.3人と先進7か国では5番目となっていますが、英国、イタリアの7人台に比べると高いと言われています。
医療制度改革でもメンタルヘルスが大きな課題として取り上げられているように、多くの人が精神的に苦しんでいるようです。日々の生活、勉強、仕事などあらゆる場でストレスを抱え、それがもとで精神的に病んでしまうのは現代人特有のものかもしれません。
医療は日進月歩で進んでいます。今治療できないものも、5年度、10年度には治療できるかもしれません。ただ、人の精神面は、一人ひとり違うものでその治療や対処はますます難しくなっていくのかもしれません。
白ふくろう
1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。