オンタリオ州予算で何が変わる!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第18回】
今回は、その予算に織り込まれた政策の中から、皆さんに関心の高い内容をご紹介します。
今年の州政府予算の3つのポイントは
―Affordability
人々が暮らせるオンタリオ州を作る
―Care
必要な人に、最適なサービスを提供する
―Opportunity~
すべての人に、有益となる機会を与える
となっています。
このポイントに沿って多くの施策が計画されていますが、その中でトップ10に上げているのが以下の項目
1.65歳以上の人の処方薬無料(OHIP+)
2.保育制度の充実と無料化(2歳半から幼稚園入学前まで)
3.処方箋薬代・歯科治療費補助プログラム
4.高齢者住宅補修援助プログラム
5.医療機関サービスレベル改善
6.メンタルヘルス対応強化
7.高齢者健康支援
8.障害者社会参加支援
9.大学カレッジ進学支援(授業料支援)
10.最低賃金引上げと雇用創出
高齢者に片足突っ込んでいる白ふくろうとしては、高齢者健康支援や処方薬無料制度などは非常に気になるところですが、この読者の方にはあまり関心がないでしょうから、若い方の関心が高いポイントに絞ってお話しましょう。まずは、
保育制度の充実と無料化(2歳半から幼稚園入学前まで)
カナダでは、夫婦共稼ぎが一般的で女性のキャリア形成とその維持が非常に重要視されています。今回の州予算では、育児家庭支援として2歳半から幼稚園入学まで保育を2020年9月から無料とすることにしました。この無料化で、子供一人あたり年平均17,000ドルの支援となるそうです。併せて保育スペースを数年計画で10万人分増やす計画も出ています。12歳までの児童の学校始業前、終業後のプログラム(学童保育に相当)も増やすことが計画されており、子育て支援充実に力が入っています。
処方箋薬代・歯科治療費補助プログラム
オンタリオ州の公的医療保険OHIPでは(一部年齢特例を除き)処方箋薬代と歯科治療はカバーされません。多くの企業では、社員福利厚生として医療保険を提供し、処方箋薬代、歯科治療代、視力矯正(眼鏡、コンタクトレンズ)費用、整体・マッサージ費用などをカバーしています。しかし、雇用先でそのような医療保険を提供していない、職についていない、自営業など職場健康保険に加入できない人や、個人で医療保険に加入する財政的余裕がないという方も多いようで、就労世代の四人に一人がそうした状況にあるそうです。今回の州予算では、そうした人たちに対して、州が定めた処方箋薬の代金と歯科治療代金の80%(年間上限、独身者400ドル、カップル600ドル、子供一人につき50ドル加算)を支援するプログラムを2019年夏より実施する予定です。
メンタルヘルス対応強化
年齢や世代に関係なく、今の時代に生きる人すべてが考えなければならないのが精神的苦痛。プレッシャーでストレスが高まり、精神的に不安定になる人が多く、その結果、酒、薬物、ギャンブルなどの中毒になったり、健康を害する人、引きこもりで孤立する人、最悪は自殺に至るケースなど、オンタリオ州でも大きな問題となっています。しかし、これまではメンタルヘルスや中毒に対処する制度が十分でなく、オンタリオ州内でも三人に一人がそうした症状で苦しんでいるのだそうです。今回の州予算では、3.8ビリオンの継続予算に加え、向う4年間で2.1ビリオンの追加予算を当て、サービスレベルをあげるとしています。その特定の対象として、先住民、少数人種、LGBTQI2-Sなど、マイノリティーの人をあげていますが、その他にもすべての高校にカウンセラーなどを配置する計画です。
大学カレッジ進学支援(授業料支援)
オンタリオ州内にある大学およびカレッジは、ほとんどが州立。ただ、その授業料はカナダ国内でもっとも高く、学生にとっては厳しい現実となっています。これまでも、授業料30%減額や奨学金制度がありましたが、昨年から制度が改編され、授業料無償が拡大しました。2017年-2018年では、オンタリオ州学生支援プログラム(OSAP)申請者の内、カレッジフルタイム学生の約75%、大学フルタイム学生の約50%が、授業料無料となっています。今年度の予算措置で、この秋に入学する学生の内22万5千人程度が授業料無料となる予定だそうです。
その他にも様々な項目が予算に織り込まれておりますがすべてをご紹介できないのが残念です。ご興味ある方は、オンタリオ州政府のサイトから予算全ページ333ページをPDFでダウンロードできますので是非お読みください。
え!白ふくろうは読んだのかって?近眼、老眼、乱視、さらには緑内障の白ふくろうには、英文の予算全ページを読むのはちょっと…
白ふくろう
1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。