持続可能な発展(開発)!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第20回】
白ふくろうも、子供たちが小さいころは毎年夏に数回キャンプに行きましたが、成長するにつれ子供たちも忙しくなって、ここ数年はキャンプに行かなくなりました。さて、あのテントはどうなるのでしょうか。
こうした文化自然環境は作り上げるのは大変ですが、壊すのは簡単です。でも、知恵があるはずの人間は、こうした環境を維持し、さらによいものにしていかなくてはなりません。
2015年9月25日に、国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という目標が採択され、2016年1月1日より世界中で実行されていることをご存じでしょうか。そこには、世界を変えるたのの17の目標として定められ、各国がそれぞれ独自に取り組んでいます。
その17の目標とは以下の内容です(日本国政府外務省ウェブページより和訳掲載)
1. No Poverty 貧困をなくそう
2. Zero Hunger 飢餓をゼロに
3. Good Health and Well-Being すべての人に健康と福祉を
4. Quality Education 質の高い教育をみんなに
5. Gender Equality ジェンダー平等を実現しよう
6. Clean Water and Sanitation 安全な水とトイレを世界中に
7. Affordable and Clean Energy エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8. Decent Work and Economic Growth 働きがいも経済成長も
9. Industry, Innovation and Infrastructure 産業と技術確認の基盤をつくろう
10. Reduced Inequalities 人や国の不平等をなくそう
11. Sustainable Cities and Communities 住み続けられるまちづくりを
12. Responsible Consumption and Production つくる責任つかう責任
13. Climate Action 気候変動に具体的な対策を
14. Life Below Water 海の豊かさを守ろう
15. Life on Land 陸の豊かさを守ろう
16. Peace, Justice and Strong Institutions 平和と公正をすべての人に
17. Partnerships for the Goals パートナーシップで目標を達成しよう
これだけの目標を世界各国が努力しようという決意は、凄いことだと思いませんか。社会問題、環境問題、経済問題と幅広い項目をカバーしています。敢えて、カバーされていないものを探すとすれば、政治、宗教、安全保障などでしょうか。
日本もカナダもこの目標達成に向け、努力をしているわけですが、カナダでは、これら17項目についてどれだけ努力をし成果を出しているかをデータとして提供するために、誰でも見れるウェブ上のデータハブを作成しました。その主体となっているのが、カナダ統計局。カナダ統計局は2016年以来、この目標を数値で進捗管理するための国連の専門家グループの活動メンバーであり、グローバルインディケーターのフレームワーク作りにかかわってきました。全部で244ものインディケーターを設定し、世界中で進捗を管理しています。
5月16日、カナダ統計局は、そのデータハブの第一弾を発表しました。今後も新しいデータが出る都度、アップデートされていく予定です。以下のサイトで最新データを見ることができますので、時々見てみてはどうでしょうか。
www144.statcan.gc.ca/sdg-odd/index-eng.htm
例えば、「3. すべての人に健康と福祉を」というゴールについては、2013年から2014年にかけて、安全でない水や不衛生な環境による死亡率は減少しているものの、予期せぬ薬物接種などによる死亡はわずかに増えています。
「5. ジェンダー平等を実現しよう」では、2015年のデータでは、女性が1日24時間のうち平均4.1時間の無給労働をしていると出ており、男性よりも1時間多く無給労働をしているのだそうです。ただし、2010年に較べると、女性も男性もともに、無給労働時間は少なくなっており、男女間の無給労働の差は小さくなっているそうです。この無給労働とは、決してサービス残業などではなく、いわゆる家事や私事の活動のようです。カナディアンの男性は積極的に家事を行うと言われていますが、それもこうしたデータに表れていますね。
「12. つくる責任つかう責任」では、家計で消費する電力は2014年から2015年にかけ2%減少、水道使用量については、2011年から2013年の間で7.6%減少しているのだそうです。カナダは、世帯当たり電力使用量がアメリカと並び世界でトップレベルの浪費国。もっともっと改善できる余地がありそうです。
データは、詳細な区分けになっており、興味ある項目を定期的に見てみるとカナダの努力が見えてくるかもしれません。
白ふくろうは、仕事柄、経済や雇用など企業活動に関連するデータはよく見ますが、環境や教育などのデータはあまり詳細に見ることがありませんでした。でも、このデータハブで17の目標に沿ったデータが見られるようになり、今後カナダ統計局のサイトへのアクセスがますます増えてしまいそうです。
日本の取り組みはというと、推進本部会合やアワード、フォトコンテストの活動やピコ太郎とコラボした広報啓発活動などが見られますが、具体的な数値検証が見つかりません。人口減少が加速し、経済でも徐々に落ちていく日本ですが、こうした分野で世界貢献して欲しいと思います。しかし実態はなかなか難しいのかもしれませんね。
白ふくろう
1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。