カナダのNEET(ニート)の実態は!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第24回】
カナダでは、新卒定期採用という社会慣行がないので、卒業後コツコツと企業を当たり、なんとか入社の糸口を探しています。しかし、職歴や実績、即戦力などの才能を重視するために希望する企業、職種に就くのは難関。努力が実って就職できればいいのですが、職に就けない若者も多数います。
ニート(NEET: not in education, employment or training)という言葉を日本のニュースではあまり聞かなくなりました。新卒の就職率が80%、90%というレベルまできており、さらにまだまだ人材が不足しているというニュースばかりが目につき、日本にはニートはいないのではと思うことがあります。実際、日本のニート率(15〜29歳)は、OECD平均より低く、近年は低下傾向にあります。しかし一方で、同世代には社会的離脱(いわゆるひきこもり)にある若者が推定32万人いると言われており、より深刻な問題を抱えています。
他方、多くのOECD諸国では2008年リーマンショック経済危機以降、ニート率が上昇傾向にありますが、カナダの現状はどうでしょうか。
10月上旬にカナダ統計局から出た報告書によりますと、25歳〜29歳の若者で7人に1人がニートだそうです。
これまで20年以上の間、カナダの25〜29歳のニート率は15%から19%の間にあり、常にOECD全体平均を下回ってきました。2017年データでは、OECDの平均18%に対し、カナダ16%となっています。
その内訳をみると、ニートにある人の3分の2は職探しをしておらず、そのほとんどが女性です。失業しているのは3分の1でその多くは男性。男女で大きなギャップがあるようです。
職探しをしていないニート女性のうち、約1割の人は、障害があるなど健康上の理由だそうですが、7割以上の人は、単に働きたくないという理由だとか。
ニートとなる要因には様々なことが考えられます
旅行をする、ボランティアをする、コミュニティサービスをする、もしくは子供の世話をするといった個人的な理由から、病気や障害で働けないという理由まで様々。
たとえば、ボランティア活動。最新データでは、若い成人のボランティア参加率は40%となっており、多くの若者がボランティアに参加しているようです。ニートの定義はこれまで、仕事や教育、訓練といった枠で考えられてきましたが、ボランティアやコミュニティ活動といった社会貢献の面で立派な活動も定義に加えて、若者の実態を考える必要があるかもしれません。
お子さんがいるとまた事情が違ってくるようです
25〜29歳の女性でお子さんを持つ人の場合、同世代でお子さんがいない人に比べ、職探しをしていない(できない)割合が4倍にもなるそうです。ただ、ケベック州ではこのギャップが少なく、その理由は州の政策による保育負担の軽減。ケベック州(ニート率12%)では、デイケアの費用を極力低くし、女性(お母さん)が仕事を続けられる、もしくは新しく職に就けるよう後押ししており、その成果が出ているようです。逆にギャップが大きいのがマニトバ州、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州。西部地区でギャップが大きいのはなぜでしょう?
ニートの現状を州別にみると、カナダ全体の平均が16%であるのに対し、ニューファンドランド・ラブラドール州(25%)、プリンスエドワード島(21%)、ヌナブト(43%)、ノースウェストテリトリー(24%)と高い数字になっており、失業率の高い州やテリトリーでは若者の就職が一層厳しくなっているようです。
ニートとなってしまう要因の一つに教育レベルが関係していると考えられています。
一般的には、高等教育を受けた人はニートになる割合が少なくなっています。特に高校卒業資格があるか、ないかによって大きな違いがあるようです。同様の傾向が大学やカレッジの修了資格の有無でも見ることができます。しかし、大学以上となると、学士、修士、博士などその学位による違いはほとんどないとのこと。
カナダはニートになっても、また大学やカレッジに戻ることが比較的簡単にでき、技能訓練も無料で行うなど社会復帰の道が多岐にわたっています。高校、大学を卒業したあと、そのまま就職せず、あえてニートを選ぶ道もあります。
でもきっと大学を卒業して、なかなか職が見つからないカナダの若者からみれば日本の新卒定期採用という制度はうらやましく見えるのではないでしょうか。
白ふくろう
1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。