カナダの雇用情勢や労働マーケット注目の4つのケーススタディ:特集「働く」
ケース1 産油業盛んな4州にて若者の早期就職が進む
2000年代の産油業の盛んな州における若者の早期就職が著しいことが、カナダ統計局の調査の結果判明した。この調査により、賃金の上昇によってフルタイムで大学に行く男性が減るとともに、また、学生でもない職にも就いていないいわゆるニート状態の若い男性も減る傾向が見られた。
17~24歳までの青年の平均時給は2001年から2008年の間に産油業の盛んなアルバータ州サスカチュワン州、ニューファンランド州、ラブラドール州では21%も上昇し、これは産油業の盛んでない他の州が4%しか上昇しなかったのに比べて5倍以上であった。
この賃金上昇は若者の就職率にも影響を与え、他州が2%上昇にとどまったのに対し、同4州では17~24歳の青年の就職率が5~6%も上昇した。その結果、産油業の盛んな州では進学率が下がる傾向となり、アルバータ州を例にとると高校やその後の学校進学率が44%から37%、フルタイムの大学の進学率が17%から16%に落ち、これは他州が逆に52%から53%、20%から24%と上がっているのとは正反対となった。
ニート状態の青年の減少については、逆に産油業の盛んでない他州が1%にとどまるのに対してアルバータ州は3%であった。これらの変化は、最低賃金、労働市場、また、学費などにも影響を与えることになると言われている。
ケース2 過去6年間失業率最低値、立役者は若者と女性
2014年9月に行ったLabour Force Surveyによれば、雇用者は74,000人増え、そのほとんどはフルタイムワーカーであった。これにより失業率は0.2%落ちて6.8%となり、2008年12月以来最低値となった。この1年を見ると雇用者は毎月約13,000人ずつ増加、合計で150,000人も増加している。
この9月の調査では15̃〜24歳の若者と25̃54歳の女性の雇用者が増えたことが確認された。州ごとに見てみると、オンタリオ州では25,000人の雇用が増え失業率も0.3%下がり、7.1%となった。アルバータ州、サスカチュワン州ではオンタリオ州ほど数が増えたわけではないが、州内の労働人口と相対的に比較すると大きく増加しており、アルバータ州の失業率は0.5%下がって4.4%。またサスカチェワン州では0.7%と大きく変化し、現在の失業率は3.5%。他にもニューファンランド州、ラブラドール州で雇用増加が見られた。宿泊施設やフード サービス、不動産業など様々な職種での雇用が上昇した。
先にも述べた若者の雇用者は43,000人増加したが、失業率の変化はほとんどなく13.5%。若者が労働人口に加わり、1年前と比べ全体における若い雇用者はわずかに増加した。25̃〜54歳の女性の雇用者は事実上あまり増えてはいないが、失業率は0.5%下降し5.1%となった。
ケース3 シニア層の再就職率上がる
カナダでは長期雇用の仕事を辞める=退職して老後の始まりというわけでもなく、実際、1994~2000年の間に退職をした55~64歳の人の約半数がその後10年の間に再就職をしているという調査結果がある。
新しい調査では、10年間以上にわたり長期雇用の仕事(ここでは12年以上のものを指す)を退いた人のその後の経過を調査すると、就職人口の約3分の2が50代に入る時に長期雇用に就いている。55歳~59歳の10年以内での再就職は60%で、60~64歳でも44%に上る。 オンタリオ州と他で比べると、大西洋側では再就職がしにくく、一方でプレーリー一帯の州、また、北西準州の方が再就職しやすい結果となった。
ほとんどの再雇用の機会は仕事を辞めてすぐに訪れており、たとえば、60~64歳の間に辞めた人で、再就職した人の42%は辞めたその年のうちに再就職を果たした。21%は次の年に再就職をしている。 再就職をした60~64歳の人は男性でその後4.6年、女性で3.8年雇用されている。この間の給与は元の仕事よりは低いが、それぞれが別の価値を見いだし、再就職に至っている。
ケース4 高卒VS大卒、給与の差は縮まるものの雇用形態には格差有り
2000年代の石油ブームにより上昇するカナダの実質最低賃金。そして、過去10年間で高卒の給与と大卒(ここでは学士号を取った人のことを指す)の給与の差が縮んできている。最新の調査から至った結論は、2000-2002年と2010-2012年の卒業生を比べたもので、この10年間で実質平均時給は高卒で働く20~34歳の男性で9%、女性は11%も増加した。
それとは反対に大卒で働く男性の実質平均時給はほとんど変わりがなく、女性でも5%の増加にとどまった。実際の数字で比べると、大卒の男性が1ドル稼いでいるときに高卒男性は75セント稼いでおり、10年前と比べると7セント増加している。女性の場合は64セントであったのが68セントに増加している。大卒と高卒での実質最低賃金の差は縮んだが、一方でフルタイムの雇用率の差は広がっており、大卒女性の雇用率は10年の間63%のままであったが、高卒女性のそれは49%から44%に下がった。
また、大卒男性の雇用率は72%から68%に下がり、高卒男性は68%から61%と、両者ともに減少するも差は広まる結果となった。いずれにせよここ10年でのフルタイムの雇用率が下がっていることは世界的な不景気が関係していると思われる。