ROMEO & JULIETから学ぶコンディショニング|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第110回】
先日、Julietからのお誘いでNational Ballet of Canada の「Romeo & Juliet」を観てきました。用意してもらった席は、Grand Ring の一番ステージ寄り。すなわち、Four Seasons Theatre 2017席でJulietを一番近くで観れる席ということになります。以前、白鳥の湖のWhite Swanのお誘いの時も同じ席でした。
通常、バレエ鑑賞においてはステージと同じ目線になるGrand Ringのど真ん中辺りの席がステージ全体を見渡せて鑑賞に向いていると言われていますが、私の場合はプリンシパルダンサーの関節など体の動きをバレエの先生とは違った目線で厳しく観察して欲しいという要望があるので、ステージに一番近い席を用意してもらうことが多くあります。
シアターについてパンフレットに目を通すと、現在いる13人のプリンシパルダンサーのうち7人、つまり50%以上の方をサポートをさせて頂いていることに気がつきました。通常National Ballet of Canada所属のダンサーはカンパニーの治療室でケアを受けますが、過去15年間の私の実績を理解頂き治療室から直接私に依頼されるケースやプリンパルダンサーから「私の体を守ってください」と年間契約を頂いてサポートするケースなどがあります。
新人からベテランプリンシパルダンサーまで多くのバレリーナをサポートしてきた莫大なケーススタディーに基づく情報
この様な貴重な経験を持つ数少ないセラピストとして、これらの経験から得た情報を皆さんと共有したいと思います。新人からベテランプリンシパルダンサーまで多くのバレリーナをサポートしてきた莫大なケーススタディーに基づく情報です。体のコンディションだけでなく日々ダンサーたちの周りに起こる様々な問題点も、大体把握できるようになりました。
ダンスカンパニーに所属するダンサーは、皆プリンシパルダンサーを目標に日々精進していくわけですが、そこに辿り着くには一杯練習してダンステクニックを磨けば良いというわけではなく、色々な条件が揃わないと辿り着けない厳しい道のりです。必然的に長い時間を必要とするケースが多くなります。
ダンサーとしての寿命を長くすることが成功するために大切
この流れからすると、テクニックを磨くことはもとより、自分のダンサーとしての寿命を長くすることが成功するためにとても大切なことです。それも良いコンディションを維持するのが大切なのです。
しかし、長年酷使してきた体を良いコンディションに保ち続けるのは非常に難しいです。競争の激しい世界なので多くのダンサーが、少々体の調子が悪くても、それを隠して無理して現在のポジションまで上り詰めて来ているのが現実です。困ったことにプロのバレエダンサーは、足首、膝や腰に問題があっても他人にバレないくらいに綺麗に踊るテクニックがあるので、長年問題点が放置されているケースが多いのです。
なぜ、問題点が長年放置されてしまうか?
それは、バレエダンサー特有の見逃し易い問題が存在するからです。バレエダンサー特有の柔らかい筋肉は、ストレッチポジションでもまだ伸びなかったりするのでストレッチするのが難しいわけです。これに気づかないでいると、時間をかけてストレッチをしていたはずなのになぜ怪我をしてしまったんだろう?ということになります。バレエダンサー特有の問題点を見逃してしまうパターンです。
基本的に体が完璧な状態で練習すべきなのにストレッチが効かずに足首、膝、腰に溜まった10%~20%くらいの疲れを見逃してしまうことで知らず知らずのうちに体をダメージしてしまうのです。ストレッチなどと並行して腱の部分を直接刺激するなどしてコンディショニングのクオリティーを上げる必要があります。
新人の頃からコンディションを出来るだけ100%に近づける努力をするのが、ダンサー寿命を長くする一番良い方法そして成功への近道です。ダンサー寿命が長くなれば必然的に成功へのチャンスが巡ってくる確率も上がるからです。
では、過去15年間どの様に多くのバレエダンサーをサポートしてきたかというと、ストレッチが効かないポイントを具体的に触って、改善してセルフケアを説明して自己管理してもらいました。最終的にコンディショニングは自分で出来るのが良いと考えるからです。
これは一般の方が抱える肩凝りや腰痛のメカニズムと共通している
長年悩まされる慢性化した症状には、新しいエクササイズや特別な治療法、良い先生を探すのだけが解決策ではなく、今回説明したポイントが抜けている可能性があるのです。単純なことですが、自分で関節周りなどを丁寧に触って、
❶ 硬いところ
❷ 筋張ったところ
❸ 熱を持っているところ
❸ 音がするところ
などを把握すれば、どの筋肉、腱が問題なのか?筋肉のどの部分が問題なのか?どのような動きの時に問題なのか?と具体的にアプローチする場所や方法が明確になります。これに毎回確認作業を入れれば色々やっているのに一向に改善しないという状況は発生しにくいのです。
コンディショニングにおいて基準になるのは主要関節の動きです。関節の動く方向や動きの大きさを目安に正確に行うとコンディショニングのクオリティーを上げることができます。