アジア人女性の和太鼓グループ ソロコンサート
アジア人女性の和太鼓グループRaging
Asian Women Taiko Drummersによるソロコンサート
“CROOKED LINES: STORIES IN BETWEEN”
■ 太鼓の演奏と交互に北米に住むアジア人女性としての自分のことや、日々ぶつかる悩みや恐怖心、とまどいなどをそれぞれの語り口で語っていく。
そこにはただ太鼓の音が耳に届くのではなく、彼女たちから出てくる内面が心に届く。人には言えない自分達の想いをメンバーが共有し合ってそのパワーを太鼓に乗せているのだろうか。ダイバーシティを大切にし、異なるバックグランドを共有して、そこで解放されたエネルギーや彼女達から生まれてくるパワーによって、高まっていくクリエイティビティがぶつかりあい、彼女達が奏でる太鼓の創造性につながっているようだ。
5周年を迎えた東日本大震災に捧げた“SIMA UTA”は、 打たれ強さの精神をもった人々に捧げる曲を国際的に活躍するミュージシャンであるハイディ・チャン氏とテイヤ・カサハラ氏が様々な楽器とコラボレーションをし、聴いている人の心に悲劇と美しさ、光と闇の共存が表現され、涙を誘う。そして“MIYAKE”ではソロが圧巻のパフォーマンスで魅せてくれた。三宅島の漁師の話がベースになっている同曲は、頑張っている人々のファイティング・スピリットを一人ずつ表現方法でアレンジし、聴衆を盛り上げた。
会場に生まれた一体感は、それぞれの心情が吐露されているからこそ、観客とパーソナルなつながりを持たせてくれたのだと思う。演奏者のバックグランドや生きて来た悩みや苦悩をたった1〜2時間で共有できる魅力があったからこそ、演奏に入り込めることができた。彼女達のありのままの姿で表現されたパフォーマンスを見て、自分なりの人生のストーリーを見つけれれば良いなと感じさせてくれる時間だった。
■ ライブを終えての感想を教えてください。
アジア系の若い人たちだけでなく、幅広い層の多様な方々にお越しいただけたことに感謝し、光栄に思っています。多くの方々に“感動した”と言っていただき、とても嬉しいです。今回の3日間のコンサートは、私たちRAWにとって、2回目のソロコンサートになります。(最初のソロコンサートはグループ結成15周年にあたった2013年12月)。前回のコンサートの成功で、私たちのグループは、一見すると矛盾するような人間の両極の側面を、太鼓演奏、ダンスとビデオのメッセージを通じて同時に表現することで知っていただけるようになりました。例えば、力強さとその裏にある脆弱さ、伝統的な部分とハイブリッド(新旧の折衷)の独自性、圧倒的な迫力と内省的な部分などです。そういった 私たちの存在やメッセージを今回来て下さった方々にも十分に受け取っていただけて、とても満足しています。私たちの持てるものや日々感じていること、太鼓やビデオを通じて表現したかったことを伝えられたことで、見て下さった方々もご自分の姿を私たちに見ていただくことが出来たのはないでしょうか。
■ 東日本大震災5周年に捧げた“島唄”のコラボは多くの方がとても感動していたようでした。このコラボの実現の背景などを教えてください。
今回のコンサートは、タイトルの、”Crooked Lines”に焦点をあてました。 ”Crooked Lines”とは、曲がった(歪曲した)数々の線、という意味で、私たちの色々な思いをこめました。例えば、私たちグループ成員の経験が必ずしも同じまっすぐな線でなく、様々な方向から来て様々な方向に向かっていること、RAWというグループ自体の発展そのものが紆余曲折を経て現在に至っていること、また私たちのような北米にいるアジア系女性というとステレオタイプ的にとらえられがちですが、その人生経験は実は多様であることなどを意味しています。
また今回のコンサートではコラボや対話を大切にしたので、そういう意味もあります。今回演奏した“島唄”(日本のバンド「The Boom」が1992年に発表)は、2人の国際的に活躍するミュージシャン(ハイディ・チャン、テイヤ・カサハラ)とのコラボであると同時に、いろいろな楽器(音楽手段)のコラボでもあります(ビオラ、篠笛、歌声、太鼓)。東日本大震災5周年の3月11日に最初のコンサートでしたので、震災と津波に遭われた方々やいろいろな苦しみに遭っている方々すべてにこの曲を捧げました。島唄を選んだのは、現在の日本でのみでなく国際的にも多くの人に愛されている重要な歌だからです。ハイディ・チャンの素晴らしい編曲が、悲嘆や喪失感から生まれる希望と強い回復力を、完璧に捉えて美しくまとめあげてくれました。
■ 今後の展開を教えてください。
大きなイベントとしては、第二回目トロント太鼓フェスティバルを近年中に企画する予定です(第一回のトロント太鼓フェスティバルは2012年に、他のカナダの和太鼓グループやアメリカの演奏家の協力を受けてRAW が企画・開催)。普段の活動ももちろん続けて行きます。今までのようにトロントや近隣の都市のイベントで演奏をしたり(PRIDE・ROM・女性団体・労働組合の大会や学校での演奏)をしたり、アジア系のLGBTQのユース(10代から20代半ばぐらいまでの人たち)のエンパワメントを目的としたワークショップ、また新しい企画としては、Taiko Jamという誰でも参加が出来るイベントを定期的に開催して行く予定です。
■ 読者のみなさまに一言お願いします。
これからも太鼓という芸術表現を通じて、私たちの過去や現在から様々なストーリーを紡ぎだして行きたいです。 私たちは組織的な後ろ盾のない非営利団体として活動しているので、大変なこともありますが、これからも設立20周年に向けて邁進していきます!TORJA読者の皆さん、これからも応援してくださいね!