カナディアン・ビジネスピープルに迫る。#03
グローバル展開をする日系企業で働く、カナディアン・ビジネスピープルに迫る。#03
日本を代表する企業が、ここカナダでも多岐に渡るビジネスを展開している。現地の社員たちはどのような考えを持って、自社のビジネス・商品・サービスを受け入れ、自分のキャリアに活かしているのだろうか。今回、企業と独立行政法人で働く6人のカナディアン社員に、ビジネス慣習や言語・文化の違い、仕事のスタイルなどについて実際感じていることや体験したことなどを語ってもらった。
電通ボス
Stephen Kielyさん
部署 : Vice President, Client Service
趣味・特技 : Interest Wine collecting!
様々な都市に住み、多様な文化の違いを体験してきたStephenさんは、日本の技術や文化に強い興味を持っていたそうだ。大学卒業と同時に自身が興味を持っていたマーケティング・広告業界の日本企業、電通に就職した。働く中での異文化体験やマルチカルチャリズムについての考えを語ってもらった。
就職先として日系企業を選んだ理由はなんですか?
私はトロントで生まれましたが、成人するまでカナダの様々な都市と、南アメリカに住んだ経験があります。北アメリカの最新テクノロジーのほとんどは日本から発信されていますし、日本はいつも我々の先を行く存在、という印象がありました。なので、ウエストオンタリオ大学を優等学位で卒業後、日系企業の電通を選びました。実際に日本の革新的な技術を第一線で触れることができながら、仕事をするということは、私にはぴったりの環境だと思っています。この仕事を通して、トヨタ・レクサス・サイオン・キャノン・Canada Post・The Bochner Eye Instituteのような優れたブランドをより深く知ることができました。私はクライアントがより多く業績が上げられるように創造性を駆使して仕事に打ち込んでいます。私の業務は主に自動車系クライアントの広告業務をリードし管理することです。そのために多くの部門と協力して仕事をしています。私は特に言語が好きで、英語、スペイン語、ポルトガル語が堪能ですが、日本語はまだまだ勉強中です。
Communicatorとして広告を世界に発信していくことのやりがいについて教えてください。
マーケティングと広告の専門家として、新しい情報を発信していくことにやりがいを持っています。多くの人の興味を引くために、常に革新的なアイディアや面白い場所、新しい視点、さらには他国の文化などを取り入れています。私たちは発信する情報について、いつも他の人がまだ試したことのない分野に挑戦し、開拓していこうと考えています。そして会社が異文化についてとてもオープンな姿勢である理由は、今までに電通が世界的に情報を発信しているからです。広告の効果を上げるためには現地の文化をよく知ることが大切で、知らないこと、新しいことを追及する姿勢は、市場だけではなくクライアントをより深く理解できるという利点もあります。
マルチカルチャリズムのトロントではもちろんクライアントにも様々なバックグラウンドの方がいらっしゃると思いますが、日系企業で働くということはそのような異文化を理解することに役立ちますか?
日本人の文化や技術、そして仕事に対する考え方を理解することで、とても寛容的になれたと思っています。私たちはこの寛容的な習慣を取り入れ、能動的に話しを聞くことでクライアントや同僚、その他の関係者をより深く受け入れることができると思います。お互いの文化の違いを大切にすることで、お互いを尊重し合えて認めることができます。それに異文化を受け入れられる心持ちというのは、私たちがなにか解決案を考える時に、いつも新しいことに挑戦したり、知らないことを探求したりする好奇心の源になっていると思います。シンプルさが物事の本質ではありますが、マルチカルチャリズムは私たちを豊かにしてくれると思います。
社内外ともに異文化に触れる機会が多そうですが、社内の雰囲気はどのような感じですか?
私たちは電通社内で非常に深く良い関係が築けていると思います。まるでひとつの家族のようです。これらは日々の仕事の中で文化や言語の違いから誤解や勘違いなどが出ないように社内のコミュニケーションに気を配っているからです。同時に私たちが日本の文化を学び、理解することによってチームワークの重要性や帰属性というものを感じるようになりました。私のオフィスの雰囲気は日本よりもカナダという印象が強いですが、カナダ人はもともとマルチカルチャリズムがDNAに刻まれているのでどんどん異文化の良い部分を受け入れています。これはクライアントと話をする時にも応用されていると思います。
日本への興味を強くお持ちとのことですが、実際に日本へ行ったことはありますか?
日本に初めて行った時の経験は今でも忘れません。電通の社内研修に参加するため東京に行きました。カナダ以外の様々な国からも参加者がいて、とてもいい刺激になりました。そこで少しだけショックだった出来事がありました。研修参加者たちで食事にいった時に鳥刺しが出てきて、それまで生きてきた中で、生の鶏肉を食べるということを一度も考えたことがなかったので、衝撃でした。あの時は周りの人たちとともに挑戦して食べましたが、もう一度と言われたらどうするか分からないです。しかしながら、衝撃的な日本の思い出もサッポロビールがとても美味しくて、全て良い思い出に変えてくれました。
仕事上では文化の違いにどのように向き合っていますか?
特に異文化が原因になった大きな失敗はありません。確かに私たちと日本人は多少働き方も違いますし、解決策の出し方も違います。だからこそ、常に話し合いが出来る環境を持ち、誠実に話しをすることが非常に大切です。そうすれば私たちは、想像するほど大した違いなんてありません。異文化のギャップも気にならなくなります。
これまでの仕事の経験は、ご自身のキャリアにどのように役立っていくと思いますか?
国際的なビジネス環境で他社と共同で働くことができることは素晴らしいことだと思います。近年は、2つの大きなプロジェクトのために1つは日立と、もう1つはトヨタとともに働きました。どちらのプロジェクトも私にとって、とてもやりがいのある経験でした。個人的にも世界中の人と一緒に仕事をすることで交友関係も広がりました。忘れられないとても大切な経験です。国際ビジネスに関わることで知識や物事に対する理解など、仕事のスキル以外にも様々な経験を積めることがとても大切だと思います。