カナディアン・ビジネスピープルに迫る。#01
グローバル展開をする日系企業で働く、カナディアン・ビジネスピープルに迫る。#01
日本を代表する企業が、ここカナダでも多岐に渡るビジネスを展開している。現地の社員たちはどのような考えを持って、自社のビジネス・商品・サービスを受け入れ、自分のキャリアに活かしているのだろうか。今回、企業と独立行政法人で働く6人のカナディアン社員に、ビジネス慣習や言語・文化の違い、仕事のスタイルなどについて実際感じていることや体験したことなどを語ってもらった。
三井物産
Cassandra Chappellさん
部署 : Corporate Planning & Service Administration
職歴 : 2.75 years at Mitsui Canada
趣味・特技 : Cuisine, fitness and travel
三井物産に入社して間もなく3年目を迎えるCassandraさん。日本文化と西洋文化の違いに戸惑いを感じることも多々あったそうだが、今では日本を代表する企業で働いていることを誇りに思っている。そして自分自身も日本文化を知ることで成長していると語る。
管理マネージャーとして様々な部署を連携を取られてますが、実際はどのようなことをされているのですか?
私の仕事は、経営企画·サービス管理部門の管理マネージャーで、その職務内容は多岐に渡ります。まず第一に社内の業務がより円滑に進められるように事務作業の準備や他事務員の管理をしています。その中には社内イベントの企画・実行、経営戦略の発案、そして必要に応じて他役員の補佐などが含まれています。その中でも主な実務は、経理処理とIT関連やベンダー事業の管理などがあります。
貴社で働くことに憧れを抱く日本人も多いですが、ご自身はどう思われていますか?
私はいつも三井物産で働いていることを誇りに思っています。理由としては、まず三井物産が世界的に知られたグローバル企業だからです。当社の製品とサービスは、世界中にあるオフィスが作り出す世界的なネットワークによってサポートされています。このようなグローバル企業であるということは、新規事業開拓時などに必要な市場情報を世界中から取得することができます。また当社はカナダの資源を活用し、世界中のお客様のニーズに答えています。当社の文化、雰囲気は日本のビジネス文化が基礎として色濃く出ています。しかし我々のような現地従業員によって少しずつ変わり、再形成された三井物産カナダの社内文化は、グローバル化の進む今、マルチカルチャリズムに大きく貢献していると思います。異文化をよく理解することでさらに良い製品やサービスを開拓、提供していくことができると思います。
実際に日本文化に触れてどのように感じますか?
私が日本の文化や技術が魅力的だと思うのは、伝統が最先端の技術の中に組み込まれていることがあるからです。日本の技術は、非常に優れていますし、とても実用的だと思います。日本の強みは、日本独特の文化的価値観、豊富な経験からくるノウハウ、そしてそれらを集約する細部にいたるまでの注意力だと言えると思います。私は日本人が本当に一生懸命働いていることを知ったとき、唖然としました。仕事への意識が西欧社会とはまるで違うからです。三井物産で働き始めてから、私は日本の仕事に対する考え方を知り、日本人は厳しい仕事を乗り越え完璧にこなせるようになることで、仕事に対する満足感を得ていることに気が付きました。
始めは日本人しかいない部門に配属になって「義理」という言葉を学んだとそうですね。
入社してまず所属した部署が、私を除いて全員が日本人だったので、すぐに文化の違いを感じました。特に違いを感じたのは彼らの言語、価値観、仕事の考え方、そして他人に対する尊敬の仕方などほとんど全てです。私のデスクは仕切りもない部屋にあり、上司と多くの空間を共有しながら一緒に働きました。仕事量は非常に多かったですが、不思議なことにそれが私に帰属意識を与えてくれました。そして上司を含め、多くの日本人の方と一緒に仕事をしていく中で、私は日本文化の根底にあると思われる言葉「義理」を学びました。
仕事上で日本とのやり取りも多いそうですね。
残念ながらまだ日本に行ったことはありませんが、今後研修などを通して日本に行けることを楽しみにしています。一方、仕事では日常的に日本本社の社員と話をする機会があります。電話ですとメールよりも言語の壁を強く感じますが、日本の方々はいつもとても親切で非常に礼儀正しいです。それに日本人からのメールは私よりも難しい文法や正しいスペルを使っている時もあり、逆に英語を学ぶことも多々あります。
文化や言語が原因で何か誤解やトラブルを経験したことはありますか?
私は自分のコミュニケーションスタイルが、周りの人よりもダイレクトだということにすぐ気が付きました。率直に物事対して「NO」と言いますし、自分と意見が違ったり、矛盾があったりしたら、しっかり自分の意見を述べてきました。文化や言語の問題でトラブルになったことはありませんが、意見を交わすときなどは相手のことを理解するまで、話し合うことを心がけています。
自分のコミュニケーションスタイルをどのように変えていきましたか?
日本人と一緒に働くときの生産性を上げるために、自分のコミュニケーションスタイルを少し変えていきました。まず気にかけたことは、働きやすい雰囲気や話しかけやすい雰囲気を作ることです。チームワークを大切にしているので、皆が働きやすい環境はとても大切だと思います。次に、能動的に聞くこと、質問は発言者が喋り終わってからすることです。そして沈黙に慣れること、本音と建て前を区別し、空気を読むこと、最後に少しゆっくりはっきり発言することやスラングを使わないなど、私自身の英語に気を配ることを気にかけるようにしました。これらの行動を心掛けることによって、日本の社会やビジネス関係の役割をきちんと理解できました。また実際に私の態度や言葉が、相手にどのように認識されているかを把握することにも役に立ちました。
日本を代表するグローバル企業で働いている経験は、ご自身にとってどのようなものですか?
日本企業で働くことで、ビジネスや社会に対する理解と視点が大きく広がりました。今までとは違う視点から国際情勢、社会問題、経済をとらえるヒントになっています。三井物産で私は自分のコミュニケーション能力を向上させること、仕事の価値を理解すること、日本の伝統文化を学ぶことなど、とても興味深い機会に恵まれています。時には慣れないこともありましたが、それは自分の居心地のいい場所から外に出る練習になりましたし、居心地のいい場所から出ることは難しいですが、そこに居続けてはいけないということに気がつかされました。そして変化を求め、常に挑戦しなければ革新や創造性、成長は生まれないということを知りました。この職場での経験は今後、様々なシーンで生か活かされていくと思います。