任命されたけど辞退したい(その②)~委任代理人の場合|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第40話】
長期的な役割を担う委任状代理人
遺言執行人の仕事は、遺言者が亡くなってから最終的な遺産分配まで、平均的に2年前後で全ての仕事が完了します。一方、委任状代理人の場合、委任者が判断能力を喪失してから亡くなるまで続くため、場合によっては、長年にわたり、委任者の財産管理やケアについて決めることも珍しくありません。そのため、任務遂行中に委任状代理人が継続不可能になることもあります。
任命されても辞退することは可能
遺言執行人の場合と同様、もしものための委任状の中で、財産代理人や身体の世話のための代理人に任命された人は、その任命を必ず受け入れなければならないという義務はありません。健康上の理由に限らず、遠くに引っ越して物理的にできない、委任者と疎遠になった、単純にやりたくない等、人それぞれの個人的な理由で、委任状代理人の任命を辞退することは可能です。
1.最初から辞退する場合
もし委任状で代理人に任命されており、まだ代理人の仕事を始めていない場合は、代理人を辞退する旨を書面で表明する必要があります。遺言執行人とは異なり、辞退書(Resignation)には特に決まった書式はありません。辞退は書面で行い、任命を受けている委任状の日付に言及し、代理人を辞退する旨を明記し、サインをして委任者、そして、その他に任命されている代理人に通達する必要があります。
2.途中で辞退する場合
もし委任状代理人がすでに代理人としての仕事を始めており、その途中で代理人の仕事を辞めたい場合の手続きは、次のように定められています。まず、代理人は、辞退書を書面で用意し、辞退書を次の人々に手渡す必要があります。
(b) 代理人として任命されているその他の代理人、及び、
(c) 辞退する代理人ができない場合の代替代理人、並びに、
(d) 辞退する代理人が委任者に判断能力がないと判断し、代替の代理人が委任状で任命されていない場合は、委任者の配偶者、もしくは、辞退する代理人が知るオンタリオ州に居住する委任者の親族
なお、これらの辞退書を受け取る権利がある人物に、辞退書が手渡されなければ、辞退自体が有効になりません。
また、辞退する代理人は、委任者の代理人として対応してきた機関に、辞退することを通知する「合理的な努力(Reasonable efforts)」をしなければなりません。具体的には、財産代理人の場合は、委任者が取引してきた金融機関に、身の回りの世話に関する代理人の場合は、委任者が利用する医療機関や介護施設などに、代理人を辞退した旨を通知することが必要です。
引き受ける前・辞める前にご相談を
このように、委任状代理人としての任命を正式に受ける前に限らず、辞退をすることを考えている場合も、一度専門の弁護士に相談をし、ガイダンスを受けるようにしましょう。
[おことわり] このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。また、本コラムの情報は、2022年10月時点での情報に基づいており、今後法改正により内容が変更する可能性があることをご理解ください。