【カナダ6店舗目、トロント3店舗目となるスカボロー店オープン!】「らーめん山頭火」 畠中 仁会長スペシャルインタビュー

「らーめん山頭火」その名を聞けば、クリーミーでコク深いスープと絶妙なバランスの一杯を思い浮かべる人も多いだろう。1988年、北海道・旭川で誕生し、今や世界各地へと広がるこのラーメンブランドを生み出したのが、畠中仁会長だ。カナダ6店舗目、トロント3号店となるカナダ初の独立社員による加盟店のオープンを機に、畠中会長が海外展開への思い、ラーメン作りにおける哲学、そしてスタッフの育成や経営方針について語ってくれた。「ラーメン作りは、人を育てるのと同じ。環境に適応しながら進化を続けることが大切です」と語る会長。海外進出と事業展開の方針、さらにスタッフ育成や味の再現性に対するこだわりまで、その情熱と独自の視点が詰まったインタビューをお届けする。
味の再現と現地適応の工夫

ーカナダは6店舗目、トロントでは3店舗目のオープンになりますが、ここにはもう何度も来られているのですよね?
そうですね。それぞれのお店のオープンのときもそうですし、その後も何度か来ています。トロントは日本のラーメン文化が根付き始めている都市のひとつで、現地の人々がどのようにラーメンを楽しんでいるのかを直接見ることができるのは貴重な経験ですね。
ーアジアや米国など海外の多くの都市に進出されていますが、日本との違いを感じることはありますか?
やはり水の違いは大きいですね。水質が異なると、麺の食感やスープの味にも影響が出ます。また、食材の種類や品質も国ごとに異なるので、それぞれの環境に適応することが重要です。最初は試行錯誤しましたが、現地の水に合わせて微調整を重ねることで、味の再現性を高めました。
ー「山頭火」の味を再現するために、現地でどのような調整をされていますか?

大事なのは現地の人に受け入れられる味にする必要があります。例えば、ラーメンを提供する際も、塩分や味の濃さを少しずつ調整しながら、環境に適応させていきます。商品を安定して提供するためには、環境リソースの違いを考慮しなければなりません。水質が違えば出汁の取り方も変わりますし、麺の食感にも影響します。
ー世界各都市に展開する中で、味のブレを抑えるために大事にしていることはなんでしょうか?

海外でラーメンを作る際、味を完全に統一するのは非常に難しいんです。水質や湿度の違い、気候による食材の変化など、あらゆる要素が影響を及ぼします。その上で大事なのは、バランスですね。例えば、スープの温度や香り、湿度など、細かい要素が組み合わさって味が決まります。それを維持するために、現地の水や食材の特性をしっかり理解し、調整しています。
カナダでは空気が澄んでいるし、水のカルシウムの含有量も異なるため、スープの仕上がりにも変化が生じます。火の加減や温度管理も影響を与えるので、現地に行かなければ分からないことがたくさんあります。
また、スープの温度や香り、麺の食感を現地の気候に適応させることも重要です。そうした細かい部分にまで気を配ることで、初めて「海外でも美味しいラーメンを作れる」と言えるのだと思います。
ーオープン前に現地の水や流行している食べ物を調べたりするのでしょうか?

以前はそうでしたが、今は逆ですね。事前に情報を収集し、現地での調整を行いながら決めるスタイルに変わりました。現地の人々がどのような味を求めているのか、また、どの食材が手に入るのかを把握した上で調整します。最近では、現地のスタッフが持つ知識やアイデアを積極的に取り入れています。
山頭火誕生秘話

ー映画『タンポポ』を観た後に食べたラーメンに納得がいかず、自宅で家族に作ったラーメンから山頭火が誕生したと伺いました。
それまでは芸能やイベント関係の仕事をしていたんですよ。移動や付き合いも多い仕事です。夜遅くまで働いて最後のシメはラーメンを食べるという日常の中で、ラーメンにはこだわりがあったんです。
そんなわけでラーメンに興味はありましたが、「自分が作るならどうするか」という視点で考えたとき、すでに頭の中でレシピが組み立てられていました。「とんこつラーメンはこうあるべき」という固定観念にとらわれず、とんこつの臭みがない、白湯系のとんこつラーメンをもっと自由に発想してよいのではないかと考えるようにしました。
ースープは独特の味わいですね。

スープの厚みを大事にしながら、臭みを取り除く工夫をしています。とんこつの臭みを抑えつつコクを残す方法を研究し、バランスの良い仕上がりを目指しました。また、チャーシューはじっくり時間をかけて仕上げています。九州のラーメンのように小さく乗せるのではなく、スープに溶け込むような食感を目指しました。
創業者が語るブランドの責任と進化
ー今回トロントで初めての加盟店が誕生しました。振り返ると海外店は2003年に初めて香港へ進出しましたが、2年足らずで撤退されています。この経験を通じて、基本的には直営を重視し、信頼できるパートナーと組んでいくという方針になったのでしょうか?
私はもともと店舗展開にはあまり積極的ではなく、「30店舗以上は出すな」と言ってきました。我々が適切に管理できるのは、5人のオーナーがそれぞれ6店舗を運営する規模が限界だと考えています。つまり、最大で30店舗。それ以上になると、管理が行き届かなくなり、ブランドの品質を維持するのが難しくなると思っています。
実際、新しい店舗を増やすことには消極的でしたが、スタッフが成長し、独立したいという思いを持つようになったこともあり、社員の独立による加盟店運営も受け入れました。よく私は「3年で暖簾を返せ」と言っています。新入社員にも「3年経ったら出て行け」と話します。3年間で技術や知識、経営ノウハウを学び、その後は独立するのが理想です。ただ、現実的にはすべてがその通りに進むわけではありませんね。しかし、基本的なポリシーは変わりません。
海外展開をする際、「3ヶ月以上、現地に根付く覚悟がないと難しい」と考えています。例えば、半年間で現地の水や野菜、調味料の違いを修正し、その間に現地スタッフを育成します。そして、その後の3ヶ月で現地の人たちに完全に任せられる状態にする。そうしないと、本当に成功するのは難しいんです。
ー「山頭火」というすでに世界中で知られるブランドになっていることに会長は喜びを感じていらっしゃいますか?
それは全くありません。むしろ、気になって仕方がないだけです。しかし、そう言いながらも、気づけば毎年新しい店舗が増えています。これは私が望んだことではありませんが、従業員たちが新たな道を切り開いている結果だと思っています。みんなが頑張っているのは確かで、そこには敬意を払っています。熱意を持って取り組んでいる人たちがいるのは良いことですよね。
「山頭火」のオペレーションは、スタッフに負担をかけずに運営できる方法を常に考えています。こうした取り組みは、経営者だけでなく、そこで働く人たちにとっても非常に重要なことです。
この商売は自分が始めたことなので、誰がどう運営していても、やはり気になってしまいますし、責任を無視することはできません。「知らない」とは言えませんし、創業者である以上、その重みをずっと引きずることになります。
世界に伝えたい味と世界の食文化との融合
ー一方でラーメンは早い段階から世界でブームでした。貴社の海外進出も早かったです。そして今や訪日観光客も増えており、ラーメンへの注目は今後さらに高まると思います。
私の中では、創業当初から「海外を目指す」ことを考えていました。ラーメンにはその可能性があると確信していたからです。そして今はこれが単なる流行ではなく、日本の食文化が世界に広がっている証拠だと思います。私たちが作る一杯のラーメンは、ただの食事ではなく、日本の味や想いを伝えるもの。その価値を大切にしながら、これからも進化させていく必要があります。
アイデアはどんどん出てきますが、実行するかどうかは別の話です。それでも、新しい発想が生まれること自体が大切なんです。「これは前と同じだから、こうしよう」という固定観念にとらわれるのではなく、「これは違うかもしれない」と試行錯誤しながら進めることが大事だと思います。
僕も普段から、本やテレビ、SNSを通じていろんな情報を見ています。例えば、「これ面白いな」と思ったことはすべてメモしておく。そうやってアイデアを蓄積していくことで、いつか役立つこともあるんですよね。
私のやり方は、ただ効率を求めるだけではありません。大切なのは、必要なものを適切な量だけ確保し、無駄なく活用することです。もったいない精神も大切ですね。そこに意味を持たせることで、より価値のあるものになる。「どうすればもっと良くなるか」を常に考えることが、結果的に料理の質を向上させるんです。
ー海外展開を進める中で得た成長や変化はどのようなものでしょうか?
昔は、「山頭火の味をそのまま再現してくれ」とこだわることもありましたが、今ではそういう考えはほとんどなくなりました。水や気候の違いによって、同じレシピでも全く異なる味になるのは当然です。
また、現地の人たちの方が、我々以上にその土地の食文化をよく知っています。味の感じ方も国ごとに違いがあるため、「これが正解」というものはありません。気候や土地が違えば、同じ食材でも異なる仕上がりになります。日常的に異なる香りや食文化を体験しながら、その中でバランスを取ることが求められているのです。環境の違いを理解し、適応していくことが最も重要だと思います。
ー必然的にそのような考え方が人材育成にもつながっていくのではないでしょうか。
料理も、人を育てるのと同じです。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という言葉がありますが、その通りだと思います。環境に適応し、試行錯誤を重ねることで、より良いものが生まれるのです。
現地で働く人たちが独立を目指す際、その個性を生かしながら新しい挑戦をすることを支援したいと考えています。これは、親が子供を育てるのと同じで、彼らが経験を積みながら独自のスタイルを確立していくことが重要です。結局のところ、料理も人間の成長と同じで、伝統を守りつつも進化させることが必要です。トップの意見を取り入れながら、次の世代へとつなげていくことが、今後の発展につながるでしょう。変化することを恐れず、進化を続けることが大切なのです。
「また食べたい」と思われる一杯を。
ー日本は少子高齢化が進み、事業継承が難しくなっている企業も多いです。個人商店や中小企業の後継者不足が問題になっていますよね。本店は息子さんが継がれていますね。
特に「こうしてほしい」と決めているわけではありません。私自身、何かを新しく始めるときは、「まずやってみる」ことを重視してきました。もちろん、挑戦の中で無駄な部分は削っていきますが、初めから完璧を求めるのではなく、試行錯誤しながら形を作っていくことが重要です。
料理にしても、ただ作るだけではなく、楽しみながら工夫することが大切です。だから、子供たちにも料理を手伝わせるようにしていました。そうすることで、自分の手で作ることの大切さを学べるからです。
企業の運営も同じで、楽しみながら仕組みを作ることが大事です。最初から完璧なシステムを作るのではなく、実践しながら最適な形を探っていくのが良いではないでしょうか。
また、会社の中では、相手との関係性を大事にすることも重要です。例えば、社内の人間関係においても、ただ役職で呼ぶのではなく、個々の尊重を忘れないことが大切です。
ー最後になりますが、今後も「山頭火」というブランドはどんどん拡大していくと思います。すでに多くの国で待っている人たちがいて、新たに展開したい地域もあると思います。一方で、会長は単なる拡大路線ではなく、何か特別な想いを持っていると感じました。その上で、「山頭火」というブランドをどういう形で世界に広げていきたいか、また、どんなお店であってほしいとお考えですか?

ブランドとしては、どんどん拡大するというよりも、しっかりとした運営を続けることが大切です。お客様に“また食べたい”と思ってもらえるような一杯を提供し続けることが目標ですね。
ラーメンは単なる食事ではなく、日本の味や想いを伝えるものです。これからも、環境の変化を受け入れながら、新しい挑戦を続けていきます。ぜひ、各地の「山頭火」でその味を楽しんでいただければと思います。
株式会社アブ・アウト代表取締役会長。1961年歌登町(現枝幸町)生まれ。歌登町で家業のクリーニング店を継いだ後、自宅で作ったラーメンが好評だったことがきっかけでラーメン店を志し、1988年3月に旭川市内にらーめん山頭火1号店を出店。国内、海外に店舗網を拡大し、カナダでは6店舗を展開中。

Santouka – Scarborough
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