I’m a SUBIE #01
Chapter 1: なぜSUBARUは多くの支持を集めるのか。
SUBARU CANADA社長 太田士郎氏に聞く
昨年2月のカナディアン・インターナショナル・オートショーで、同社としては初めてセダンの「レガシィ」がカーオブザイヤーに輝き、ますます注目を浴びるスバル。カナダでの販売台数が2万3000台だった2009年に比べ、昨年4万6000台と2倍の販売台数の実績を誇り、北米で絶好調な成長を遂げている。日本ではSUBARIST、北米ではSUBIEと称し、愛好者たちはスバル車を絶賛する。ここカナダでも販売力・ブランド力ともに圧倒的な強さを誇っているスバルカナダの太田士郎社長に、業績が好調な理由や、北米で支持を集め熱烈な愛好者が多いスバル車の特徴などについてお話を伺った。
北米の成長戦略をカナダで支える太田社長のお考えを教えてください。
私はよくスバルの成長戦略を2つのエンジンと例えるのですが、「ディーラーネットワークの強化」と「北米市場にフォーカスした商品戦略」、この両軸がうまく回って今の北米販売の好調がある、といえます。
2010年に私はスバルカナダの社長として赴任しましたが、2005年から2010年までは 富士重工業本社の北米部門を統括する部署にいたので、アメリカとカナダの両方を見てきました。北米にフォーカスした商品戦略は昨日今日に決まったことではなく、長い年月をかけて決定されてきたものなので、それに見合った受け皿を現地で準備しなくてはいけないというのはカナダに来る前から強く課題として考えており、2010年からそれらにフォーカスして指揮をとってきました。
自動車販売の場合、商品力と販売力、この2つがキーとなります。商品力というのはメーカーが良い商品を開発するわけですが、販売力の場合、ディーラーネットワークが大事になります。日本の場合、多くのディーラーはメーカーの直営店なので、メーカーが資金を出し土地を買い、店を構え、良い人材を雇えばいいわけです。しかし海外では、北米に限らずヨーロッパやアジアでもメーカーの直営店ではないので、ディーラーのオーナーに投資をしてもらわなければなりません。お金を使うのはディーラー自身なので、彼らに投資をしてもらうためには彼らの収益を上げていかなければいけません。それは最初に我々が高い商品力でディーラーに収益を上げてもらい、上がった収益をハード・ソフト面に再投資をしてもらい、最終的にお客様の満足度の向上につなげていただくという考えをずっと発信しています。
カナダでの好調な販売を後押ししている太田社長が力を入れる「ディーラーネットワーク」や販売戦略について教えてください。
弊社のディーラーは現在カナダに90店舗あります。ここ数年ディーラー数は変わっておらず、店舗当たりの販売台数をいかに伸ばすかということに注力してきました。店舗数が変わらず、販売台数が倍になっているということは、店舗当たりの販売台数が倍になったということを意味します。 販売台数が上がれば各ディーラーの収益が向上するので、その収益でさらなる発展のための再投資をお願いしています。ここ5・6年で約60%、50店以上のディーラーが店舗の大型化や立地の良い場所に移転し、お客様の利便性のために投資を行っています。当然、良い立地に移れば、お客様も足を運びやすく、メンテナンスなどのサービスを受けるために訪れやすくなります。また、台数が増え、メンテナンスをするお客様の数も増加していくので、サービスショップのキャパシティも増えています。建て替えなどの際はショールームも大きくなるので、色々な車種が見やすくなります。同時に工場でのサービス・キャパシティを増やし、修理やメンテナンスにかかる時間が短くなるようにするなど、お客様の利便性を向上していただくことを呼びかけています。そういったセールスとアフターセールスの両面で、お客様の利便性が飛躍的によくなっていることが好調な背景のひとつです。
そしてもう1つは、商品戦略として設計段階から北米市場に重点を置いた設計をしていることです。自動車の大きなマーケットといえば、北米・ヨーロッパ・中国など多様なグローバル市場がありますが、ベストは各地域にあった設計・開発を行うことです。年間生産販売台数が100万台規模の弊社は北米に軸足を置き、このマーケットにマッチした設計・開発をした自動車を投入しています。
北米市場を長く見られてきて、消費者が車に求めているものなどに変化はありますか?
根本的な市場のファンダメンタルというのは20年前と変わってきてはいません。カナダの場合、日本のように週末にレジャーで車に乗るということだけではなく、ショッピングや通勤に使う実用品として車に乗り、10万キロ、20万キロと長い間保有します。スバルの過去10年間の販売車の95%以上は今も現役で走っているデータもあります。これはおそらく業界の中でも相当高い割合だと思います。私が思うに自動車は、住宅の次に高い買い物で、服のように気にいらないからといって買い替えることも簡単にはできません。だから長く気に入って使っていただけるというのが大事です。その意味で私がよく社員に話しているのは、車というのはお客様の人生のパートナーでなければいけないということです。10年20年乗っていただける人生のパートナーとしてお客様のライフスタイルをサポートできるのが我々の車である、ということです。
スバル車の特徴として、シンメトリカルAWDや水平対向エンジンなど素晴らしい機能が搭載されています。
スバル車は、全てAWDが標準となっていますのでカナダやアメリカなどの雪がよく降る地域ではやはり人気です。AWDといっても各メーカーでそれぞれシステムが違い、システムが違うと能力も違います。スバルはAWDの技術はグローバルなマーケットの中でも得意分野です。さらにエンジンは全車種に水平対向エンジンを使用しているので、シンメトリカルAWDと水平対向エンジンがマッチングし、各四輪が路面の状況に合わせてトラクション(駆動力)をバランスよく分配して常に安定した走行が可能になります。
また車の搭載機能の中で1番重いエンジンが縦ではなく水平に乗っているので、車の重心が低いのですが、これは重心が低ければ低いほど、走る・曲がる・止まるといった動作の安定性につながります。水平対向エンジンを市販車で採用しているのは私が知っている中では、フェラーリ・ポルシェ、そしてスバルだけです。
スバルブランドは技術を大事にするという社風なのですね。
弊社はもともと中島飛行機といって飛行機を作る会社でしたが、戦後、自動車製造に移り変わりました。エンジンや技術にこだわる社風というのは社名が富士重工に変わっても70年以上ずっと続いてきていることです。
御社が今までにSUVの車で多くの賞を受賞されてきた中で、2015年はセダンの「新型レガシィ」が外観や内装の質感などのモデルチェンジを経て、カーオブザイヤーを初めて受賞されました。
弊社は昔から技術力重視のメーカーなので、車のリライアビリティ(信頼性)や、パフォーマンス(性能)などでは相当自信を持って販売していたのですが、やはりどこかに重点を置くと、どこかが手薄になってしまいます。弊社の場合、それが外観のデザインや内装の質感でした。いくら性能が評価できるといってもお客様からすると外観も内装の質も良くなって欲しいというのは当然ですよね。そこを大幅にテコ入れしたのが新型レガシィで、従来の良さを継承しつつデザインや内装の質感をグレードアップしました。
2016年、2017年のスバル車の商品展開や、戦略をお聞かせください。
我々の基本的な車づくりの哲学というのは決して変わりません。リライアビリティや安全性の良いものをお客様にお届けする、それに加えて新型レガシィのようにより外観や内装の質感にもこだわったものを提供していくということです。2016年末には新型インプレッサが登場しますが、従来のこだわりは一切妥協せず、外観と内装の質感も圧倒的によくなっています。
また、スバル車は全てAWDであると同時に、FWD並みの燃費も実現できているのが特徴です。 次期インプレッサに関しても燃費はさらによくなります。我々も自信を持ってマーケットに送り出すことができる新型車なので、特にコンパクトカーをご希望のお客様は期待していただきたいです。先月のLAオートショーでその新型インプレッサのコンセプトカーを展示した際も評判がとても良かったので、今からマーケットに出すのが楽しみです。
スバルカナダでは車のコンセプトにマッチしたイベントなどにも積極的にスポンサーとして参加されている印象ですが、具体的にはどのようなイベントなどに参加されているのでしょうか。
弊社が長くスポンサーとして協力している代表的なイベントは、トライアスロン競技のアイアンマンシリーズです。特にケベック州のモントランブランとブリティッシュ・コロンビア州のウィスラーで行われる大会は、世界中から2000人以上ものアスリートが参加する世界大会です。そのほかにもスキーインストラクター協会のサポートもしています。カナダには週末にキャンプやカヌー、サイクリング、スキーなどといったアウトドアを楽しむなどアクティブな方が多いですし、そのようなライフスタイルはスバル車のブランドともマッチしていると考えています。
好調なスバル車に対して、多くの方々が注目をしています。是非、読者の方々にメッセージをお願いします。
スバル車のラインナップの中にお客様の人生のパートナーとしてマッチする車があれば我々としては非常に嬉しいです。様々なライフスタイルに合わせた車を取り揃えていますので、ぜひ一度ディーラーで実際に試乗していただき、スバル車の魅力を体験して頂ければ幸いです。
SUBIE(スビー)
日本ではスバル車の愛好者をSUBARIST(スバリスト)と呼ぶように、カナダやアメリカなどの北米ではスバルを愛車としてドライブを楽しむ人々は、自らの愛車をSUBIE(スビー)と呼ぶ。SNSでも“#subie”として発信され、熱狂的なスバルファンの間ではファンクラブもあるほどだ。