第10回「WBCと野球の未来」文=鶯 大樹|スポーツは武器になる|J Athletics Canada

文:鶯 大樹 | J Athletics Canada
「WBC2026はベネズエラが優勝」
今年のWBC(World Baseball Classic)は決勝戦でベネズエラがアメリカを破り、6大会目にして初めて、優勝トロフィーが南米大陸に渡る事となった。準々決勝で日本連覇の夢を鮮やかに打ち砕いた彼らは、その勢いのまま頂点まで駆け上がっていった。
この大会は過去に類を見ないほどMLBのスーパースターが参加し、現代野球のまさに最高到達点だったわけだが、そんな大会で日本がその頂きに届かなかったのは非常に残念だった。投手起用、打線のつながりなど理由を挙げればキリがない。なので、その議論は読者の方々にお任せするとして、今回は「WBCと野球の未来」について少し考えてみたいと思う。
「初ベスト4!イタリアはなぜ強かった?」
さて、初めてWBCをご覧になられた方の中には、少し驚かれた国があったのではないだろうか。それはイタリアだ。イタリアと野球をすぐに結びつけることができる人は少ないと思う。ではなぜイタリアは並み居る強豪国を相手に準決勝まで駒をすすめることができたのか?
答えはシンプル。MLBにいるイタリア系アメリカ人が大活躍したからだ。そしてその背景には代表資格のゆるさというWBCの仕掛けが見え隠れする。
「WBC代表資格」
大会規定によれば(World Baseball Classic Inc.が運営)6つの条件の内1つでも満たせばその国の代表として出場が認められる。
以下①国籍②出生地③親の国籍④祖父母の国籍⑤永住権⑥過去のその国での代表経験、と幅広く、かなり〝ゆるい〟規定と言えるだろう。ちなみにサッカーW杯(FIFA)はWBCに比べるとかなり厳格だ。まずその国籍を持っていることが第一条件で、さらにA代表(公式戦)に出たらその国以外で出場することは原則できない。
例えばドジャースのフリーマンは母方の祖父母がカナダ人のため前回、前々回カナダ代表として出場したが、今回アメリカ代表として出場することも可能だった(今回は出場辞退)。一方、元マンチェスターシティのリヤド・マフレズという選手、彼はフランス生まれ、国籍はモロッコとアルジェリアを有するがアルジェリア代表を選んだため、今後フランスやモロッコ代表としてW杯に出ることは原則不可能だ(ちなみに主将としてアルジェリアを今年のW杯出場に導いている)。
もちろんWBCにしろW杯にしろ、国を背負う国際大会なので、コロコロ国を変える選手などほとんどいないが、その規定の差は明確だ。
「野球を世界へ」
様々な国にルーツを持つ選手たちが参加するMLBは野球普及の重要な役割をもっている。そしてMLBが全面協力しているWBCが世界的なイベントとして認知されていくには、幅広い国に参加してもらう必要がある。そのため代表資格の柔軟さは必須だ。
今回のWBCに参加した選手たちもいずれは引退し、その後少なからず指導者になりその国の野球普及に貢献していくことになるだろう。MLBに頼るだけでなく、その国独自の野球文化が醸成されてこそ、世界中の野球レベルが上がっていく。MLBはもちろん人気だが、世界的にみれば野球はまだまだマイナースポーツだ。WBCで世界一なることの『価値』が、これからもっともっと上がっていくことを期待したい。

J Athletics Canada
「スポーツは武器になる」をモットーに、トロントを拠点にスポーツの教育的価値を大切にしながら、多世代・多国籍が交流できる日本語スポーツコミュニティー。スポーツを通じた人づくり・地域づくりを目指し、子どもからシニアまでがレベルに応じてスポーツを楽しめる場づくりを展開中。






