第10回 国際結婚家庭はモノが多い|カエデの多言語はぐくみ通信
この号が出る頃には、クリスマスやお正月をどのように過ごそうかと考えている海外在住家庭も多いのではないでしょうか。日本人が国際結婚や移住で海外に住んでいると、「日本の行事もする派」と「現地の行事のみする派」に分かれるようです。わが家は子どもたちに日本の行事にも親しみを持ってほしいので「どちらもする派」なのですが、特に子どもが小さい間は大忙しでしたし、その分物も多くなりました。
カナダで炬燵にミカン
わが家に来たことのある日本人の友人たちは、うちに来るとまるで日本のお茶の間にいるようで落ち着くと言います。日本の和食器棚があり、箪笥があり、炬燵テーブルがあります。和食器棚と箪笥は結婚時に母が買ってくれた物で、日本に置いていくには忍びなくて持ってきました。わが家は和食をよく作るので食器棚は和食器で埋まっています。箪笥の中には日本から持ってきた着物がたくさん入っています。
炬燵テーブルは冬になると布団をかけて炬燵に変わり、日本の風物詩「炬燵にミカン」を子どもたちに経験させることができました。子どもたちは、寒くなり炬燵が出てくると大喜びでした。ただ、これには難点があり、子どもたちが炬燵から出ないでダラダラしたり、私がそこで居眠りしたりするのです。
日本式のお風呂は誰でも恋しい物ですね。カナダではシャワーが主流でバスタブも浅く、日本のようにゆったり肩まで入れるほど深い浴槽はありません。わが家はバスルームを増築する時に日本のような洗い場を作りました。お湯が石鹸だらけにならないのが良いのですが、カナダで買えるバスタブは薄いのでお湯がすぐに冷めるところが難点。できれば日本からホーローなど保温の良い浴槽を輸入したかったのですが、そこまでお金をかけることはできませんでした。
イベントで忙しい
わが家で主にしていたイベントは、お正月、節分、ひな祭り、イースター、子どもの日、七夕、お月見、サンクスギビングとクリスマスでした。お盆だけはうちは仏壇がないのでやっていませんでしたが、ほぼ毎月何かしら日本とカナダのイベントがありました。お正月にはお節を作って義家族や友人を招待していました。こういったイベントがあると子どもたちもわくわくするものです。わが家には正月飾りに重箱、ひな人形、兜に鯉のぼりやハロウィーンのパンプキンライト、クリスマス飾り等があります。鯉のぼりは毎年玄関先に上げていましたが、5月初旬はトロントの長い冬もやっと終わり爽やかで、青空に色鮮やかな鯉のぼりはとてもよく映えます。
イベントグッズだけでなく教材や本もたくさんあります。わが家は日英仏3か国語教育をしていたので、本棚には日英仏語の教材、辞書、漫画、雑誌や小説で埋まっています。特に教材はどんどん溜まり整理が大変でした。ビデオも3か国語が揃っています。今のように手軽にオンラインで日本のアニメや映画を観られない時代だったので、それらはVHSテープで持ってきましたが、嵩高く場所を取っていました。
このように、どの文化も手元にある状態にするためわが家はたいそう物が多く、広くない家なので収納が大変です。しかし、そこは収納上手な日本人の私がどうにか整理して片付けています。
日本文化の継承は家庭それぞれだが
私はカナダ人の夫と日本で結婚した時は、カナダに移住するつもりはありませんでした。結果的にカナダに移住し、子育てができたことは正解だったと思っています。しかし、カナダ文化を十分受け入れてはいるものの、私はカナダ人にはなれません。和食がなければ生きていけないし、日本文化が好きで仕方がありません。そして、子どもたちにも日本人のルーツも大事にして欲しいと思っていますし、夫もそのため長年子どもたちへの日本文化継承に協力してくれました。子どもたちも十分私たちの熱意は理解してくれています。
ただ、すべての国際結婚や移住家庭の親御さんが、私のように日本語や日本文化に執着しているわけではありません。「郷に入れば郷に従え」という言葉のように、海外での生活を楽しみ、子どもには現地の生活習慣や文化、言葉で十分と考える家庭もありますし、和食を食べない子どももたくさんいます。バイリンガル教育やバイカルチャー子育ては親の時間的・経済的負担も大きいので、簡単なことではありません。また、現地の配偶者やその家族からのプレッシャーで、なかなか日本語や日本文化の継承が難しいのかも知れません。
移民の言葉の継承は3世代で消えるのが一般的です。いえ、一般的でした。現代は、私や私の前の世代が子育てしていた頃とは比べものにならないくらいテクノロジーが発達しています。日本語ニュースや日本映画、アニメ、ドラマ、日本語本や雑誌も簡単にオンラインで観たり読んだりすることが出来ます。都会なら日本食材も格段に手に入りやすくなり、以前に比べて値段も下がっています。移住家庭にとっては夢のような時代になり、もしかしたら3世代を超えた言葉や文化の継承が可能になるかも知れません。
テクノロジーの恩恵を受けながら、日本文化の継承は、各家庭が無理のない程度で、自分たちに合った方法で続ければよいと私は思います。
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