トロントも冬本番!ところで…1年の半分は冬ってホント?|三大特集で送る「戻ってきた日常」


「トロントの1年の半分は冬だ」―。雪がたくさん降る、氷点下の日が続くなど、トロントの冬は決して過ごしやすいわけではない。トロントに来たばかりで寒さに驚く人もいれば、トロントで暮らす時間が長くなり寒さに慣れて来た人もいるだろうが、冬の寒さはときに私たちの生活に多大な影響を与えるほど厄介な存在だ。そんな冬が、もし1年の半分もあるとしたら…。果たしてこの通説は正しいのか、そして実際のところトロントの冬はどれだけ寒いのか、今回はトロントの「冬」に注目してみよう。
Statistics Canadaが公開している気象データの中から1990~2022年に範囲を絞り、各年の平均気温、最高気温、最低気温を見てみる。グラフからは、最高気温と最低気温は年によってかなり差出るが、平均気温はある程度一定であることがわかる。平均気温は10℃前後であり、低い年は6.9℃(2014年)、高い年は11.4℃(19998年)だ。次に最低気温を比較してみると、グラフからもわかるように上がったり下がったりを繰り返している。毎年最低気温は−15℃を下回っているが、年によっては−25℃まで冷え込んだこともあった。ここ30年では2004年の−27.8℃が最も低い。最高気温については、35℃を基準にプラスマイナス3℃程度の違いが出ているようだ。


範囲を1840年~2022年に広げ、約180年にわたる豊富なデータから最高・最低気温の月平均と各月の最高・最低気温について分析すると、最低気温は7~9月以外で0℃以下を記録している。1月には最低気温が−30℃を超えたこともあり、1859年1月10日に−32.8℃(過去最低気温)を観測した際には、まさかの最高気温でさえ−10℃だった。さらに1934年2月8日に最低気温が−29.4℃、最高気温が−25℃という史上最低の”最高気温”をトロントは経験していることも紹介しておきたい。そんな最低気温の平均は、1月、2月がほぼ−20℃、3~5月にかけても0℃を超えない程度。6~9月という真夏でさえ、平均最低気温は約10℃しかないことがわかるだろう。気温のグラフだけみると、「1年の半分は冬」というのは正しいのではないかと感じられるはずだ。

1日の気温データ分析を始める前に、まず「冬」の定義を決めておきたい。明確な定義があるわけではないが、一般的にトロントの冬は11月末から3月中旬ごろまでと言われ、オフィシャルには12月21日ごろから3月20日ごろまでとされている。今回の記事では、季節の境目である3月~4月と10月~11月の平均気温が約5℃であることを考慮し、平均気温が5℃以下であれば冬だとみなすことにする。
まず2022年までの183年分の気象データを使い、1年で平均気温が特定の数字のグループだった日数がどのくらいあるのかを計算してみた。グラフでは気温をそれぞれ5℃ずつに区切ったグループでわけて表示してみたところ、最も多かったのは全体の17%を占めた15~20℃、2番目に多かったのは16.5%を占めた0~5℃だった。平均が5℃以下だったのは全体の約40%で、うち半分は0~−10℃だ。平均5℃以下が40%ということは、このグラフからは冬の日数は1年の4割にとどまるという結果になる。

より細かく、1日の平均気温が5℃以下だった日数で比較してみる。1840~2022年の平均気温が5℃以下だった日数は、分析の結果によると年間平均150日。年別だと、最も多かったのは1875年の186日だった。2位は1857年の183日、3位は1843年の182日で、トップ10全てが1800年代という興味深い事実が見えてきた。1800年代からは時間が経ちすぎているため、より身近に1990年以降に範囲を絞って分析してみると、2018年が最も多くて164日、その後は2002年の162日、2013年の152日と続く。最も少なかったのは1998年で、1年の3分の1以下である109日だった。
「1年の半分」というと、単純計算で183日。2018年や2002年は、160日台のため1年の半分を惜しくも超えていない。しかし一方で1840年からのデータでは、トップ2の1875年も1857年も183日以上であり、1年の半分をギリギリ超えている。さらに、トップ10全てで177日以上を記録しており、「1年の半分は冬」と言ってもほぼ間違いではない。つまり、1800年代において通説は正しかった。現代でも平均気温が5℃以下になる日が150日、160日を超える年もあり、正確には1年の半分を超えていないが、約5ヶ月が平均5℃以下だと考えれば通説はあながち間違いではないと言えるだろう。
寒さではなく、雪も冬の大きな悩みの種だ。1840年~2022年までのデータ(一部データなし)によると、雪が降る量は年によって差が激しいがトロントの年間平均降雪量は約149cmだということがわかっている。突出しているのは1860年~1870年代。平均気温も他の年より低く、6~7℃だ。その中で最も降雪量が多かったのは1869~1870年の314.4cmだった。1872~1873年にも290.6cmを記録するなどしていたが、それ以降長い間おおよそ100cm~150cmの間を推移していた。しかし、2000年代後半の冬がトロントを再び“雪の国”へと変えた。2007~2008年に年平均を大きく上回る251.6cm、2008~2009年には253cmを記録し、ここ数十年の中ではワーストだ。
月別の降雪量を示したグラフから、1月、2月だけで1年の50%以上の雪が降っていることがわかった。
各月の史上最高降雪量については、3月の158.5㎝(1870年)、10月の30.5㎝(1844年)というのはすさまじいものを感じる。
1月の118.4㎝については、「スノーマゲドン」、「世紀の大雪」などと呼ばれている1999年1月に記録したものだ。なんとたった2週間で、場合によっては1年間の合計降雪量を超えるほどの雪が降ったのだから驚きである。雪が溶けることなく降り続けた結果、1m以上の高さまで積雪したところもあったようで、当時のトロント市長が400人以上の兵士を呼んで除雪させたという伝説がある。
ところで、1日の降雪量が最も多く最悪の年だったと語り継がれているのは、今から約80年前の1944年12月12日。1日で48.3㎝の雪が降り、店を閉めざるをえなかっただけでなく、路面電車が倒れて1人が死亡、43人がけがをする大きな事故まで発生した。
さて、1年で雪が降るのは何日あるのか調べてみたところ、1840年~2022年(一部データなし)の平均は48日だった。日数が多かった順に見ていくと、1851~1852年は73日、1873~1874年は72日、1922~1923年は70日と、1年で2ヶ月以上も雪が降っていたことになる。前述した2007~2009年もそれぞれ60日を超え、その他2004~2005年も68日で5位にランクインしており、2000年代は異常な冬を経験していたことが明らかになった。参考までに、同じく異常だった2021~2022年は52日で54位。日数としては特に目立つものではなかった。
また、初雪についても触れておきたい。トロントでは平均的に10月下旬~11月中旬までに初雪を観測し、その年最後の雪は4月中旬であることが多い。そんな中、これまでで最も早かった初雪は1920年の10月1日である。夏が過ぎればすぐに冬が来たというスピード感だ。次は1889年の10月6日、そして1906年10月11日と続く。反対に、雪が季節外れに一番遅くまで降ったのは2021年。2年前の5月28日に雪が降ったことを記憶している人も多いだろう。
ある日突然、自分のスマホに天気に関する注意報が送られて来たことはないだろうか。毎年11月15日~4月15日の間、カナダ環境省がトロントの気温が−15℃以下、または体感温度が−20℃になると予測した場合に「Extreme Cold Weather Alert(極寒注意報)」が出されることになっている。このアラートの回数は、つまりその冬の寒さを図る1つの指標にもなる。公開されている2004年~2022年のデータを分析すると、アラートは毎年平均で21回発令されている。年別では、2021年~2022年にかけて出された49回が最も多かった。
少ない年には7回など数回しかアラートが鳴らないこともあり、年によって大きな差がある。アラート回数が最多の2022年は、合計降雪量と最低気温だけ見ると他の年よりも寒い冬だったというイメージはわかないだろうが、実は2022年1月17日に1978年以来初となる「吹雪警報」が発令されている。また、同じ日にトロントピアソン空港では、1956年の39cm、1966年の36cmに次いで史上3番目に多い33cmの降雪量を記録した。それだけではなく、体感温度でも新たな記録を残した。
1938年以降導入された体感温度だが、昨年2022年1月15日の−41℃がこれまでで一番低い記録ではないかと考えられている。体感温度については2018年に−37.4℃を記録したこともあり(当時は過去最低)、気温だけではなくて降雪量や体感温度などさまざまな観点から見ると、なおさらトロントの冬は想像以上に寒いということを実感できるだろう。
寒い日が多いトロントでも、やはり忘れていけないのは温暖化の影響。1841年から昨年までの気象データをもとに180年にわたる平均最高気温、平均最低気温、平均気温の推移とトレンド線をグラフで示してみたところ、それぞれのトレンド線が右肩上がりであることが一目瞭然だ。平均最高気温は4℃、平均最低気温は4.5℃、平均気温は3℃上昇し、少しずつ着実に温暖化が進んでいるということは心に留めておきたい。
またトロント市の発表によると、とある予測ではトロントで30℃を超える真夏日が現在の約18日(1年の約5%)から66日ほど(1年の約18%)にまで増えると言われている。世界的にますます温暖化が進むことによって、トロントもいずれ今より暖かな冬を経験することになるのかもしれない。暖かな冬は悪くないかもしれないが、私たちの暮らす地球のために、1人1人が環境に優しい取り組みなどを積極的にしていく必要があるだろう。



























