冷凍ラーメンの6つの開発目標|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第25回
バンクーバーでも冷凍ラーメンの販売をスタート
トロントに次いでバンクーバーでも、姉妹店の焼き鳥居酒屋ざっ串、麺ヤ雷蔵などを通して冷凍ラーメンの販売がスタートいたしました。過去2回のコラムでは、冷凍ラーメンの商品や販売方法について書きましたが、今回は開発にあたって立てた6つのクリアすべき目標について書いていこうと思います。
6つの目標と「うまい・やすい・はやい」
3月にコロナの影響で緊急事態宣言が敷かれるなか、その直後の4月号のコラムでも触れましたが、チキンラーメン、そしてカップヌードルの産みの親であり、日清食品の創業者・安藤百福氏のことを考えていました。彼は戦後、それまでの事業のすべてを失ったのちに、チキンラーメンを開発するのですが、その際に立てた5つの目標があります。冷凍ラーメンの開発にあたって立てた6つの目標のうちの5つは、お察しの通り、このチキンラーメンの開発目標をそのまま拝借しています。
それは、
- ①おいしくて飽きがこない味
- ②家庭の台所に常備されるような保存性のたかいもの
- ③調理に手間がかからない簡便な食品
- ④値段が安い
- ⑤安全で衛生的
というものでした。
牛丼の吉野家さんが掲げる「うまい・やすい・はやい」というコンセプトからもわかる通り、①、③、④に関しては、マスを対象にして食品を扱う以上、とても重要な条件で、裏を返せばここを徹底的に押さえて達成できてさえいれば、たいていの事業は上手くいくのではないかとすら思います。
ただし、敢えて極端なことを言うならば、「うまい、はやい」は飲食店においてはある程度はどうにかなる目標ですが、ここに「やすい」を両立させようと思うと、たゆまぬ企業努力が必須となります。ちなみにここで言う「やすい」とは、決してチープという意味ではなく、プライスに対して「Valuable」であるという意味合いです。加えて、郊外へ効率よく、自社で大量にデリバリーして、商圏を広げることが必須であったため、②、⑤もマストでクリアする必要があり、そこから「冷凍」ラーメンという商品の形が定まった経緯があります。
6つ目の目標「サステイナブル」
戦後の高度経済成長期に日本国内のみならず、アメリカへの輸出も果たし、進化系としてカップヌードルも含めて大成功を収めたインスタントラーメンの開発目標を押さえていれば、現代においても通用するだろう、と目論んではいたのですが、それから60年以上がたった今、そしてコロナによって急激な行動変容と、意識の変化を経た中で、本当にそれだけで十分なのか、という疑問がぬぐい切れませんでした。
そこで、6つ目のクリアしなければならない目標として、⑥サステイナブルである、という条件を掲げました。プラスチックストローの廃止をはじめとするシングルユーズプラスチックの問題や、グローバルクライメイトといった環境問題、そして2030年までに達成すべきSDGs(持続可能な開発目標)が、コロナによって一時的に吹っ飛んでしまったものの、問題は問題として依然としてそこにあるわけです。そもそも、コロナの発生や、世界的な感染爆発の原因を、過度な開発と自然破壊に見るならば、小規模といえども事業の持続可能性という点は外せないのではないでしょうか。
さて、それでは雷神の冷凍ラーメンは果たして上記の6つの目標を達成しているのでしょうか?それは、ご自身の目と舌で確かめていただければ幸いです。引き続き、応援よろしくお願いいたします。
「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史
ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営のことや子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。