見直されるブルーカラー、ラーメン屋のすすめ|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第72回

電気工や配管工、工事現場の作業員など、いわゆるブルーカラーと呼ばれる職業が、アメリカのZ世代のあいだで人気になってきているそうです。
一昔前は、ホコリにまみれてキツイ仕事をこなす肉体労働というイメージで、大学を出てホワイトカラーの職につくのが理想的、というような風潮があったように思います。ところが近年、大学に行くにも多額の借金を背負わされ、それでも一部の高収入な仕事につけるかどうかは不確定で、仮に仕事を得られたとしても、一日中パソコンの前に座って仕事をし続けることは退屈、というのが彼らの考え方です。
確かにホワイトカラーの仕事は人工知能に奪われる、というようなネガティブなイメージが付きまとうようになってきましたし、コロナ以降、エッセンシャルワーカーという言葉が世の中に浸透したせいか、誰かの役に立ったり、何か形のあるものを作り上げたり、壊れたモノを直したり、そういった仕事における価値を生むリアリティみたいなものが重要視されてきているのかなという感覚があります。
また、これまで不人気だったせいか給与が高く、人手不足もあいまって職につける可能性も高い、さらに上には引退を控える熟練工がいるのでキャリアアップもねらえ、非常に合理的な選択でさえあると感じてしまいます。そして中にはガテン系インフルエンサーとして活動をし、広告収入やブランドとの契約にこぎつけ、数千万の年収をたたき出す強者もいるということなので、夢は大いに広がります。
飲食業もご多分にもれず、かつては3K(キツイ、汚い、危険)と呼ばれる職業の代表格でした。しかしここカナダで十年以上ラーメン屋をやってきて感じるのは、最低限の語学力があってラーメンを作れれば、世界中どこでも生きていけるだろうし、ビジネスの組み立て方しだいで、稼げるうえにクリーンな職場環境を作ることもそう難しくないという実感です。
知識も経験も浅はかだったころは、たしかに自分の時間と身体を資本にするしかなく、それなりにキツイ時代もありました。しかし十年も経てば一通りのトラブルは経験しましたし、味の構築の仕方、店づくり、オペレーションの組み立て、従業員のマネージメント、戦略の立て方なんかは何となくコツがつかめてきます。何より、食材に付加価値をつけて売る、というシンプルなビジネスモデルゆえ、自分のクリエイティビティがどこまで通用するのか、というやりがいを感じながら、常にチャレンジをし続けながら働くことが出来るのです。
それでいて金銭的にある程度、余裕のある生活を送りながら、家族との時間や趣味の時間も確保し、従業員に対しても年間で総額ウン万ドルのボーナスを支払い、この土台の上にさらに大きなチャレンジが出来るわけですから、ラーメン屋だって大きな夢を見られる職業です。
もちろんブルーカラーやラーメン屋が良くて、ホワイトカラーがダメという事ではなく、すべての仕事はグラデーションの中に位置づけられるものでしょうから、キャリアの先には管理職的な業務があったりもしますし、ホワイトカラーだからこそ感じられるやりがいや大きなチャレンジもあるでしょう。
しかし、かつて存在した特定の職業に対するざっくりとしたイメージや印象、稼げるかどうかや人気のあるなしは、この変化の時代においては一過性のトレンドと言っても過言ではありません。ですので、そういった曖昧な指標に頼りすぎず、好きなものやかっこいいと思える職業、時間を忘れて没頭できるようなこととまで行かずとも、苦と思わずずっと続けられる仕事を突き詰めてみる、というのが幸せな人生を送るうえで大切なのかなと思います。







