秋の風物詩!?最低賃金の引き上げ|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第75回
ここカナダのオンタリオ州において、経営者にとってはまた悩ましい季節がやってきました。もはや恒例の季節行事と言ってもよいでしょう。2015年以来、18年と19年を除いて毎年10月に行われてきた、最低賃金の引き上げです。11ドル25セント↓17ドル20セント
2015年10月時点で11ドル25セントだった最低賃金は、この10月からおよそ1.5倍の17ドル20セントとなりました。同時期の消費者物価指数の伸びがおよそ1.25倍ですので、最低賃金はそれを大きく上回る伸びを見せています。とは言え、食品やガソリン、住宅、エネルギー価格の上昇率は依然として高いままですので、妥当に推移していると言えるのでしょう。
しかし、コロナを経てなお堅調に伸びていた経済が、ここに来て少し状況が変わってきているので、果たして単純にコスト増を価格転嫁できるのか、というのが今日のお話です。
物価の上昇には歯止めがかかっている現状
まずは現状の確認です。8月、カナダの消費者物価指数はようやくターゲットの2%を達成しました。加えて、アメリカFRBは9月に0.5%の政策金利の引き下げを決定しました。利下げ幅は通常0.25%ですので、今回の利下げは通常の2倍という事で、ちょっとした焦りも感じられます。
どういうことかと言うと、長らく引き上げられていた金利によって、すでに物価の上昇には歯止めがかかっています。金利を上げるということは、過熱気味の景気にブレーキをかけるという意味合いもありますので、景気は後退するという理屈です。つまり、おおざっぱにまとめると、物価上昇を抑えることと景気後退はセットになっています。アメリカのクレジットカード債務残高が過去最高を更新し続け、支払いの延滞も増えていることからも景気が思わしくないという事はわかります。アメリカが0.5%の引き下げを決定したという事は、すでに物価は落ち着いたので、急いで逆回転をかけて景気を上げていきましょう、というのが今後の世界の大きな流れと言えます。
最低賃金の引き上げは何をもたらす!?
さて、こういった現状の中での最低賃金の引き上げは何をもたらすのでしょうか。労働者からしたら賃金の引き上げは嬉しい話です。企業としても、たくさん給料を払えることは喜ばしいことですが、人件費は当然コストですので、外圧によって否応なしに利益が圧迫されるということでもあります。
お客さんの立場から見ると、車や家のローンの支払いはまだまだ厳しいけど、ようやく物価の上昇も落ち着いて、これから給料も増えて良くなっていくんだね、という不安と期待をいだいていることでしょう。この状況を踏まえたうえで、冒頭のコスト増は価格転嫁できるのか、という問いに戻ると、その判断の難しさが伝わるのではないでしょうか。
このコラムでも紹介したシュリンクフレーション、すなわちステルス値上げであったり、企業に対して儲け過ぎだ!と批判を込めて生まれたグリードフレーションという言葉だったり、近年、値上げに対する反応は以前にくらべて敏感になりました。大手飲食チェーンや、カナダのラーメンチェーンでもすでに値下げやお得なセットメニューの強化に動いた企業がある中で、個人店や中小企業が価格競争にのっかることは危険な判断です。だからといっておいそれと値上げ出来る状況ではないのはこれまで述べてきたとおりです。
こういう難しい判断を迫られるときは、努めて冷静に決断するよう心がけています。それは、付加価値が価格を上回ってこそお金を払ってくれるお客さんが存在しうるという事実であったり、売上とは客数×客単価であったり、短期的な収益を見るのではなく長期的に物事をかんがえるという原理原則です。それでも後から判断を間違えたかなということはありますが、それもまた明日への糧という事で、締めくくりたいと思います。















