第三回 「会津ほまれ」|女史が綴るカナダ日本酒歳時記|カドエンタープライズ・宮下清子
日本酒エージェントKadoエンタープライズの宮下さんが語る酒蔵ストーリー。今回取り上げるのは、福島・会津の酒蔵「会津ほまれ」です。出会いは一杯のストロベリーにごり酒でした。そこから始まった関係は、革新と品質、そして人の温かさへとつながっていきます。
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すべては“ストロベリーにごり酒”から
十数年前、JETRO Canada主催のアルコール飲料エージェント招聘プログラムに参加し、福島を訪れました。蔵とのマッチングミーティングにも参加しましたが、その時点では会津ほまれと個別にお目にかかることはありませんでした。
転機はプログラム最終日のパーティーでした。蔵関係者とエージェントが集まり、各蔵が思い思いの商品をテーブルに並べる中、一回りしたところで、これまでの日本酒では見たことのない「ストロベリーにごり酒」が現れました。
その場で会津ほまれの唐橋社長から声をかけていただいたのが、私と会津ほまれとの出会いです。
その後、このストロベリーにごり酒をトロントに持ち帰りました。現在は種類も増え、会津ほまれの日本酒はLCBO店舗で購入できるようになっています。
今では考えられませんが、当時フルーツ入り日本酒といえば梅酒しかなく、市場はまったくの未知数でした。立ち上がりも約一年ほどはスローでした。日本酒ベースのフルーツ酒がオンタリオ州のアルコール購買者にとって魅力的な市場なのか、ダウンタウンのLCBO店舗に市場調査のため、出向いた折、店舗スタッフからも好感のある応答を得られ、嬉しかったのを今でも覚えています。
雪景色に重なる、会津の酒の輪郭
会津ほまれの酒造りは冬に行われます。豊かな自然の中で育った地元の米と清らかな水に恵まれ、穏やかな酒に仕上がります。近年ではテロワールを意識した酒造りにも力を入れています。
これまで何度か蔵を訪れていますが、特に印象に残っているのは庭園の雪景色です。静かに積もる雪の中に佇むその風景は、凛としていながらも温かみを感じさせます。
会津ほまれの酒もまた、芯がしっかりしていながら、どこかほっこりとした温もりと気品を感じます。その庭園は、まるで蔵そのものを象徴しているように思えました。
素直で、ぶれない酒
会津ほまれの酒は、クセのない素直で綺麗な味わいが特徴です。これは水の個性によるものかもしれません。
燗にするとその透明感はより際立ち、料理の邪魔をしないお酒になります。冷酒では甘みが現れ、旨味をより強く感じることができます。
会津の人々には「ならぬことはならぬものです」という言葉があります。道徳や規律を重んじ、誠実で実直な生き方を尊ぶ精神的支柱です。この言葉こそ、会津ほまれの酒造りそのものだと感じています。ぶれない姿勢が、そのまま酒に表れているのです。
革新と品格、その両立
会津ほまれは、日本酒としての革新を率先して行っている蔵です。柚子のアラジンボトルやライチにごり酒といったフルーツ酒は、アルコールに馴染みのない若者にも喜ばれています。
一方で、2015年にはイギリスのIWCで世界一のチャンピオン酒に選ばれ、当時のG7サミットの食事会でも取り扱われました。品質と品格の高さは国際的にも認められています。
現在は、さらに厳格な基準のテロワール酒にも挑戦しており、オンタリオ州ではこのシリーズも購入することができます。
食卓に寄り添う、日本酒


柚子や純米酒、にごり酒のアラジンボトルは、その可愛らしい形もあり、ホームパーティーのアペリティフにぴったりです。
ストロベリーにごり酒は、苺の甘い香りを持ち、デザート代わりとして楽しむことができます。
また、雄町や山田錦を使用した酒はコクがあり、チーズやステーキにも負けない旨味があります。日本酒でありながら、幅広い食文化に寄り添える懐の深さがあります。
人がつなぐ、世界へ広がる酒

唐橋社長には、人とのつながりを大切にする温かさと責任感を感じます。それは様々な国を旅して得た経験や、生まれ持った人徳によるものだと思います。
現在カナダでは、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、オンタリオ州、ケベック州で購入することができます。
この酒は、革新から始まり、誠実さへと辿り着き、今、世界へと広がっています。














