賃貸契約の要点|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第62回】
今回は、Ontario Residential Tenancy Agreement(オンタリオ州書式賃貸契約書)に記載された、覚えておいていただきたい賃貸契約の要点についてお伝えしたいと思います。テナントに自分の物件を貸す場合、オーナーから部屋を借りる場合、次の点について理解しておく必要がありますので、ご参考ください。
Ontario Residential Tenancy Agreement(オンタリオ州書式賃貸契約書)とは?
オンタリオ州政府所定の賃貸契約書で、契約開始後21日以内にオーナーがテナントに送るよう、テナント側は求めることができます。通常、エージェントが間に入った契約の場合、先にAgreement to Leaseというオンタリオ不動産協会所定の契約書で契約を結び、その後に、オンタリオ州所定の賃貸契約書を結びます。
契約の解除について
テナントは、①マンスリー契約あるいはそれ以上の固定期間の契約においては60日前通知で解約可能、②デイリーまたはウィークリーの契約においては28日前通知で解約が可能です。
オーナーは、次の状況の場合テナントに解約通知を出すことができます。
- テナントが賃料を全額支払わない場合
- テナントが部屋や建物にダメージを与えた場合
- テナントが継続的に隣人のテナントやオーナーに迷惑をかけた場合
また、オーナーは契約期間終了時に次の場合は解約通知を出すことができます。
- オーナーまたは直属の家族が住む場合
- 空室状態を求める内装、改装を行う場合
※前述のケースにおいては、テナントは補償金を求めたり、改装後に戻ることを求めることができる可能性があります。
解約通知を出してもテナントが退去しない場合、LTB(Landlord Tenant Board)に仲裁を求めることになります。
賃料の支払いとレシート
テナントは、賃料を期日までに支払う必要があります。もし賃料を支払わない場合、オーナーは解約通知を出すことができます。もしテナントがオーナーに対して、賃料やデポジット等の支払いに関してレシートを求めた場合、オーナーはこれを無料で提供する必要があります。また、現在居住していなくても、解約後12か月以内は同じように求めることができます。
レントデポジットおよびキーデポジット
オーナーは、レントデポジットとして最終月の賃料(Last Month Deposit)、ならびにキーデポジットを契約開始前にテナントに求めることができます。ペットデポジットやダメージデポジットなどのデポジットは強制ではありません。レントデポジットの金額は1か月の家賃分以上を超えてはならず、1か月分あるいは特定期間分(1週間など)のどちらか少ない方の金額とします。テナントはレントデポジットについてオーナーに利息を求めることができます。オーナーがキーデポジットを受け取った場合、退去時にはこれを返却する必要があります。テナントが鍵を紛失した場合には、鍵の実費分のみ請求することができます。
賃料アップ
通常、オーナーは12か月ごとに賃料をアップすることができます。その場合、オーナーはテナントに最低90日前に通知を行う必要があります。賃料アップの金額は、オンタリオ州政府の発表するガイドラインでのパーセンテージ(2023年の場合2.5%)以内としてレントコントロールが定められていますが、次のケースはそのコントロールの適応外となり、オーナーは賃料をそれ以上に上げることが可能です。
- 2018年11月15日以降に 建てられた新しい建物
- 2018年11月15日以降に完成した既存の建物の中に増築された新しい居住部分
- ベースメントアパートなど、2018年11月15日以降に完成した既存の建物中の別世帯部分
メンテナンス
テナントは借りた部屋について、通常のクリーニングを行う必要があります。また、オーナーは、テナントが部屋に住める状態を保つ必要があります。テナントやテナントのゲストによって過失や不注意により部屋にダメージを与えた場合には、テナントは修理責任を負います(経年劣化による修理は含みません)。オーナーが修理をしてくれない場合、あるいはテナントが修理をしてくれない場合、双方はLandlord Tenant Boardに訴えることができます。
バイタルサービス
オーナーはテナントに対して電気、ガス、水道などのインフラ提供の確保と、部屋を最低20℃以上に保つ必要があります。ただし、テナントが光熱費の支払いを怠りインフラが滞った場合には、オーナー責任を要求することはできません。
部屋への立ち入り
オーナーは主に次の理由等においては24時間以上前通知により部屋に立ち入ることができます。
- 修理の実施
- 部屋の点検
- 買主候補者、保険担当者、モルゲージ担当者による内見
- 不動産エージェントが買主
- 候補者に部屋を見せる場合
オーナーは次の理由等においては、事前通知なしで部屋に立ち入ることができます。
- 緊急時
- テナントが同意した場合
- 賃貸契約にてオーナーによる部屋のクリーニングが 定められた場合
- 次の借主候補者が部屋を内見する場合(内見は午前8時~午後 8時の間、テナントに合理的な内見通知を行った場合)
鍵の交換
オーナー、テナントともに、勝手にカギを交換することはできません。
名義変更、サブリース
テナントはオーナーの同意を得た場合、部屋を名義変更またはサブリースすることができます。
名義変更の場合、新しく住む居住者とオーナーとの契約関係に変更になり、現在のテナントの責任は終了となります。サブリースの場合、一定期間を別の居住者が住むことになりますが、テナントとオーナーの契約関係は変更せず、テナントが継続して責任を負います。サブリースの場合、テナントは自分が支払っている賃料以上の金額やその他の費用をサブリース相手に求めることができません。
その他特に契約書に定められた事項
前述の各項目は基本的な賃貸契約法に定められた内容となります。賃貸契約法に明記されていない事項については、双方がサインした契約書において「Schedule」として定めた条項が有効となりますので、契約時には確認が必要です。
入居中・退去の際にトラブルがないよう、契約内容はしっかり確認し、必要時には双方のこまめなコミュニケーションをはかりましょう!
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