テナントが知っておくべきLTBの通知書|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第52回 】
今回は、Landlord Tenant Board(LTB)が定めている通知書についてお話したいと思います。オーナー(貸主)またはテナント(借主)が、相手方に意志を伝える場合、以下の正式な通知書(フォーム)を使用し伝達する方法が最も正式かつ確実な方法といえます。
双方のやりとりは必ず書面で
オーナーとテナントの間で様々な連絡を行う際、契約の締結、更新、解除など大事な事項については必ず書面で連絡し記録を取っておくことをおすすめします。テナントとオーナーがお互いに明確に理解し確認し合うことは、良好な関係を築き、保つための不可欠です。書面とは書面(通知書)、メール、テキストなど様々な方法がありますが、最も正式なのはLTBの定める通知書です。電話での口約束は意味がありません。「あの時はこう言ってたのに…」と後ほどのトラブルを避けるためにも、口頭で約束した場合には、その後メールで内容を確認し相手の承諾の返事を得るようにしましょう。
LTBの定める通知書
特にオーナー側からテナント側へ何かの要求をする際には、LTBの規定に即して正式書面をテナントへ送付する必要があります。自分にとって不利な内容となる場合やこうした正式書面を知らない場合、メールやテキストで済ませようとするオーナーもいます。メール等で双方に合意した場合はその取り決めは有効となりますので、どんな時も絶対に必要という訳ではありませんが、会社へエビデンスの提出が必要な方などはオーナーにメールの他にも正式な書面を送ってほしい、と依頼しましょう。
LTBが定める正式通知書(FORM)は次の15種類あります。
借主として知っておいてほしい通知書のタイプ(リスト中青字)
N1 Notice of Rent Increase(賃料アップの通知)
オーナーが賃料をアップした際にテナントへ送る通知書です。オーナーは12か月毎に賃料をアップする権利があります。賃料をアップしたい場合、オーナーはオンタリオ州のガイドラインが定める賃料上限に基づき、90日前までに新賃料についてテナントに伝えます。賃料上限に関するオンタリオ州のガイドラインは2021年はコロナの影響もあり1.2%と低い数字でしたが、来年はコロナ前と同様に2%台になるのではないかと予想されます。なお、2018年11月以降に建てられた新築物件については賃料上限の規制を受けないケースに該当しますのでご留意ください。
オーナーからN1を受け取ったらテナントは1か月検討する時間があります。もし賃料アップに応じずに賃貸契約の解除および退去を希望する場合には、契約満期日の60日前までにオーナーへ通知します。
N9 Tenant’s Notice to End Tenancy(テナントによる契約解除の通知)
テナントが契約を解除したい際にオーナーへ送る通知書です。1年等の固定期間による賃貸契約が満期を迎えるタイミングで契約解除したい場合、またはマンスリー契約において契約を解除したい場合、このN9に記入しオーナーへ送付します。オーナーがN9を受け取ったことを確認する返事をメールでもらい保管しておきましょう。オーナーのサインは不要です。
契約解除は最低60日前となります。例えば7月15日から始まった契約で現在マンスリー契約となっている場合、契約解除日は、9月14日など月賃料の支払日の前日が解約日となりますのでご留意ください。なお初年度1年間における早期解約においてはN9は使用できません。
N11 Agreement to End the Tenancy(双方合意による契約解除)
オーナーまたはテナントのいずれか一方が契約期間途中で解除したい際に相手方へ送る通知書です。上述のN9はテナントが契約満期またはマンスリー更新中において2か月前通知をすればオーナーの承諾サイン無しに解約が可能ですが、固定期間における早期解約などの場合、双方の確認とサインが必要になります。例えばオーナーから家を売却したいから退去してほしいと言われ、これに応じる場合、N11を取り交わすケースが多いです。勿論、「売るから出ていって」というのはオーナーがテナントに退去を求める正当な理由にはならない点についてご留意ください。解約日は月賃料の支払日の前日であることが基本ですが、もし双方の合意のもと賃貸サイクル期間の途中で解約する場合には、賃料は日割りで戻ってくるかなどについてもオーナーに確認しましょう。
N12 Notice to End your Tenancy Because the Landlord, a Purchaser or a Family Member Requires the Rental Unit
(オーナーまたは購入者ならびにその家族が居住する理由による契約解除の通知)
オーナーが自己使用の理由で契約を解除したい際にテナントへ送る通知書です。契約が満期を迎える際、またはマンスリー契約期間において、オーナー或いは物件を購入した新オーナーが自分または自分の家族、介護人が住みたい場合において、60日前通知でテナントに退去を求めることができます。N12を受け取ったテナントは、書面に記載された期日までに退去する必要がありますが、その前に新居を決めた場合、10日前通知で退去することができます。月賃料は日割りで計算しオーナーから戻してもらいます。またオーナーが代替住居を提供できない場合、1か月分の立ち退き料をテナントに払う必要があります。
LTBの各種通知書の詳細説明については次のリンクをご参照ください。
https://tribunalsontario.ca/ltb/forms/
通知書について正しく理解し、必要時にはオーナー側へしっかり主張しましょう!
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