賃貸契約の種類と条項にかかる留意点|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第50回 】
皆さん、こんにちは!今回は、賃貸契約の種類と条項にかかる留意点についてお話したいと思います。
賃貸契約の種類
現在オンタリオで賃貸契約を結ぶ際、2種類の賃貸契約書が存在します。1つは「Agreement to Lease(Form400)」と呼ばれるオンタリオ不動産協会(OREA、Ontario Real Estate Association)所定の賃貸契約書です。
オーナー側にもテナント側にもエージェントが存在する賃貸契約の場合、まずテナントエージェントがテナント(借主)の要望を確認しながら、OREA書式の賃貸契約書を作成し、テナントがサインをしたうえで、他の必要書類と共にオーナーエージェントに送ります。これはオファーと呼ばれます。
オーナーエージェントはオファー書類を受け取ったら、賃貸契約書内容をオーナーと確認し、オーナーは①修正無しで賃貸契約の内容を承諾するか、②修正を加えたうえでテナント側へ返送するか(カウンターオファー)、③オファーを断るか、のいずれかを選びます。契約内容について双方の確認、承諾のサインがされたら、契約条項の確定、契約成立となります。
もう一つは「Ontario Residential Tenancy Agreement」と呼ばれる、オンタリオ州所定の賃貸契約書です。上述のように双方のエージェントが存在せず、オーナーとテナントが直接賃貸契約を結ぶ際などは、こちらの書式のみを用いるケースがほとんどです。また、双方エージェントが存在する賃貸契約の場合でも、上述のOREA書式の賃貸契約書の内容が最終的に双方によって承諾・確認された後、オンタリオ州書式の賃貸契約書も署名し、保管する必要があります。
OREA書式とオンタリオ州書式の賃貸契約書の違いは、オンタリオ州書式の方には、オーナーとテナントの連絡先が記載されていること、光熱費やその他賃貸契約の賃料に含まれるものは何かが明記されていること、賃料の支払い方法、レントデポジットやキーデポジットの金額が明記されていることなど、テナントにとって賃貸契約の内容がよりわかりやすく理解できるように記載されています。
また、オンタリオ州書式は、契約開始後3週間以内にオーナーが準備し、双方サインをする必要があります。オーナーエージェントが間に入っている賃貸契約の場合、契約開始までにオンタリオ州書式の賃貸契約書を準備し双方の署名を済ませるケースも多いです。オーナー側からオンタリオ州書式の賃貸契約書が届かない場合、テナントはこれを求める権利があります。
賃貸契約の種類
賃貸契約書は、基本条項と追加条項の2つで構成されます。基本条項の部分には、契約名義人、契約開始日、賃料、など双方合意に基づいた契約の基本的な内容が記載されています。追加条項は、通常「スケジュール」と呼ばれ、基本条項には記載できない、オーナー側、テナント側の要望を記載します。
最初にオファーする際、このスケジュールにできるだけ自分の要望を入れるようにします。オーナーはテナント側からのスケジュール内容を見て、変更や追記することもありますが、このスケジュールに記載された内容が賃貸契約期間中の大事な部分になります。次の項目はテナントにとって入れておくことができれば賃貸期間中に有利になる条項です。
Renewal Option(更新の選択肢)
「1年目の契約期間が終わる60日前までにオーナー側へ書面で伝えれば、テナントは契約更新の選択肢を有する」と記載した条項です。
例えばこのリニューアルオプションを1回有すると入れておけば、テナントの選択によって、初年度(1年目)+1年更新(2年目)=2年間は住居が確保できることになります。
Early Termination(早期解約)
「契約開始から1年を過ぎた後、(人事異動によって)州外へ移動になった際、60日前までにオーナー側へ書面で伝えれば、ペナルティ無しで期中解約できるものとする」と記載した条項です。
通常、固定期間において途中解約はできませんが、Diplomatic Clauseとも呼ばれるこの期中解約条項を入れておけば、例えば2年目や3年目を1年間の固定期間による契約方法で更新している状況でも、60日前通知によってペナルティなしで早期解約ができることになります。
この2点の条項はセットで入れておけばテナントにとって非常に有利ですが、オーナー側にとっては不利な条項なため削除されるケースもしばしばありますが、必要な方はまずはトライしてみることをおすすめします。
この他に、入居までにプロのクリーニングを行う、入居日までにカーテンをとりつけておく、家具はすべて撤去するなど、要望があればすべてスケジュールに記載してオーナーに打診しましょう。またオーナー側からのスケジュール内容も良く確認してからサインをするようにしましょう。
「外国人の不動産購入を2年間禁止」
3月30日、オンタリオ州でのいわゆる「外国人不動産取得税」がこれまでの15%から20%に上がり、課税適用エリアもオンタリオ全域に改定されました。また4月には、トルドー首相より「今後2年間、外国人による住宅不動産の購入を禁止する」と発表がありました。
これは外国人投資家等による不動産売買等によって近年の不動産価格があまりに高騰したことにより、実際に住宅を必要としているカナダ人が購入できない状況を改善するために打ち出された新しい政策です。
外国人投資家の購入を抑え込むとともに、慢性的な不動産不足を解消するため、政府による不動産供給も増加することやカナダ人の住宅購入を助ける新しいプログラムも実施することを発表しています。
契約方法、条項内容を良く確認し、オーナー側と契約後のトラブルや齟齬が生じないようにしましょう!
※※弊社では、契約時のチェック、契約更新時の交渉、書面作成等も承っております。お部屋探しに関する疑問・質問、ご要望についてお気軽にご相談ください。