賃貸契約の途中解約|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第29回 】
今回は、急なご事情や人事異動により現在の賃貸契約の途中解約を余儀なくされた場合についてお話したいと思います。
日本では2年間等の普通賃貸契約を結んでいる場合、60日や90日前の通知により賃貸契約を途中解約できるケースがありますが、カナダでは、1年など固定期間の賃貸契約を結んでいる場合には基本的に途中解約はできません。事情によりどうしても途中解約をしなければいけなくなった!という場合には、次の方法が挙げられます。
① オーナーに相談・交渉する
何よりもまずオーナーに相談してください。契約期間の途中で解約しなければならない事情、解約が必要な時期を伝え、オーナーの意見を待ちます。何のペナルティ無しで解約してもいいよ、というオーナーさんはなかなかいないと思いますが、例えば2か月分のペナルティでいいよと言ってくれる人、賃貸期間の残存期間すべてについて賃料を払ってくださいと言う人、その反応は様々かと思います。エリアや物件にもよりますが、次の入居者を探すまでには通常1ヶ月(ないし2か月)程度かかること、新しい入居者を探すためにオーナーは再度1ヶ月分の賃料相当額(+HST)の賃貸仲介手数料を自分のエージェントに支払う必要があることから、一般に賃料2~3ヶ月分のペナルティで交渉の折り合いがつくケースが多いように思われます。
しかしながら、現在コロナウイルスの影響で人の行き来が少なく短期賃貸物件のニーズも下がっているため、ダウンタウンを中心に供給量が多めのマーケットになっているように感じます。また賃料をしっかり払ってくれる適切な入居者を見つけることも現在の事情の中ではなかなかスムーズにいかないことも考えられます。そのため、オーナーとしては、いつ適切な入居者を見つけられるかわからないという心配から、2か月以上のペナルティや新しい入居者が決まるまでの賃料を求めたり、現在のテナントにサブリース相手を見つけけるよう求めたりするケースもあります。
オーナーと途中解約について合意に達した場合、契約終了日を決めてN11(解約通知)を作成し、双方がサインを取り交わします。
オーナーとの交渉については、オーナーとテナントの関係による部分も大きいと思います。途中解約だけではなく修理をしてほしい場合なども含めて、日頃からオーナーと良好な関係を築いておくことは大切です。
② サブリースやアサイメントの相手を探す
契約期間の途中に長期間家を空けなければならなくなったり、退去しなければいけなくなった場合、テナントはオーナー同意のもと、自分の契約についてサブリース(Sub Lease、又貸し)やアサイメント(Assignment、名義変更)を行う権利があります。
相手を探す方法としては、自分の周りに適切な人がいないか探す、エージェントを通じてMLS上で探すなどの方法があります。候補の人物がいた場合には、必要書類とともにオーナーに伝え、オーナーの承認を得たら書類を作成してサインを取り交わします。
サブリースとアサイメントの違い
サブリースは又貸しとなるため、契約名義の主体はオーナーとテナントのままの状態に変わりありません。
本来のリース(賃貸)契約はオーナーとテナントとの間、サブリース契約はテナントとサブリース相手との間の契約となります。この場合、テナント自身の責任は契約終了期間までずっと続くこととなります。もし当該期間中に万が一サブリース相手が賃料や光熱費を支払わなかった場合には、テナントも責任を負うことになります。
一方アサイメントは名義変更となりますので、本来のリース契約の残存期間について、オーナーとサブリース相手との間の契約になります。そのため名義を変更した時点から、テナントの責任は生じなくなります。
特にカナダを離れてしまう場合などにおいては、サブリースではなくアサイメントにされることをお勧めいたします。
途中解約によるペナルティを避けるために
固定期間による契約期間中に途中解約の可能性がある場合、その契約を結ぶ際に「Diplomatic Clause」と呼ばれる途中解約条項を入れることをお勧めいたします。これは、当人の意志ではなく「別の都市や国に異動となった場合には60日以上前に通知すれば賃貸契約を解除できるものとする」と定めた条項です。特に更新時に再度1年間の契約のまき直しをされる場合や、2年以上の長い期間の契約を結ばれる場合には、そうした条項を入れることは可能かオーナーに打診してみることをお勧めいたします。
初年度の契約において途中解約事項を入れることはオーナーとしては「1年も経たないうちに出て行ってしまうのか?」と懸念してオファーが受け入れられにくくなる可能性もあります。初年度の契約においてどうしても途中解約事項を入れる必要がある場合には、〝入居後8ヶ月を過ぎた後には2か月前通知で解約できる〟など、ある一定の期間は過ぎた上での途中解約についてオファー時に交渉した方がいいかと思います。
サブリースやアサイメントの際の留意点
オンタリオ州の住宅賃貸法(Tenancy Act)では、テナントは又貸しや名義変更をする権利があると規定されています。しかし実際に住んでいる建物のコンドミニアムルールでそうした又貸しが禁止されている場合、コンドミニアムルールの方が優先されるのが実情です。また最低賃貸期間などコンドミニアムルールで厳しく規定されている場合がありますのでご留意ください。
途中解約について正しく理解し万が一に備えましょう!
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スターツコーポレーション 増田利加
Starts Realty Canada, Inc