お部屋探しの方法と留意点|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第71回】
春を迎え、新たにトロントにいらっしゃった方、或いはいらっしゃるご予定の方も多いかと思います。新しい土地で必要になることはまず住まい探し。
今回はトロントでのお部屋探しの主な方法と留意点についてお話したいと思います。オーナーにとってはテナント探しの方法としてご参考ください!
トロントでお部屋を探そう!と思った時、主に①エージェント(不動産仲介会社の担当者)を通じて探す、②自分で探すの大きく2つに分かれます。
①エージェントを通じて探す
日本でも不動産会社を通じて物件の紹介を受け賃貸契約をするケースが多いと思います。トロントでもその方法は同じですが、複数の不動産エージェントに同時に依頼する日本と異なり、トロントでは契約に基づいて基本的に1人のエージェントが専属エージェントとしてテナント(借主)から依頼を受けることが多いです。
テナント(借主)エージェントはMLS(Multi Listing System)と呼ばれるエージェント専用の物件検索システムから、テナントの条件・希望に合う物件を検索し物件情報を伝えます。MLSはトロントのエージェントたちが利用するシステムで、住宅情報について80%以上カバーしているといわれています。MLSに出さずに自分の周囲のみで借主を探すポケットリスティングは多く存在しません。
物件情報の確認、内見手配、オファー(入居申込)にかかる交渉、契約書の確認と取り交わし、鍵の受領に至るまでの一連の手続きについて、テナントエージェントが借主の代理としてオーナー側とやりとりしながら進めます。賃貸契約が成立した際の仲介手数料はオーナー側から支払われます。
エージェントに頼むメリットは、①探せる物件情報多く詳細情報を得ることができる、②物件情報、物件見学、契約作成、鍵受領までエージェントがすべて手続きしてくれる、③契約書内容が適法かきちんと確認してくれる、③デポジットや残月分の賃料支払なども明確で安心できる、④契約内容と違いがある場合にはエージェントが間に入ってくれる、⑤契約について後日疑問や質問が生じた際も気軽に問い合わせできる、などが挙げられます。
エージェントに頼む際の留意点
◎MLS掲載物件の契約期間は基本的に1年間
前述のように仲介手数料はオーナーが1か月分を支払い、オーナーエージェントとテナントエージェント2人がこれを折半します。そのため、オーナーは通常、賃貸契約期間は最低1年以上と求めるケースがほとんどです。
留学生・研究生、ワーキングホリデーの方などトロントでの滞在期間が1年間と決まっている方は、無駄な賃料払いを避けるためにもできるかぎり早くお部屋探しをスタートされることをお勧めいたします。
◎デポジットの準備が必要
通常、オンタリオ州では契約が成立したら24時間以内に1年間の契約の最初と最後の月の賃料2か月分をデポジット(賃料前払い)として支払う必要があります。
カナダでは勤務しない又はまだ決まっていない、或いはカナダでの収入実績又は収入証明がない場合、例えば4か月分など2か月分以上のデポジットを求められるケースが少なくありません。オーナーはデポジットの月数を強要できないため、あくまでテナントの任意となりますが、デポジット月数が多いほどオーナーにとっては賃料不払いの懸念が減るためオーナー審査に通る可能性が高くなるのが実情です。
また、契約成立後24時間以内にはデポジットの支払いが必要となるため、カナダの銀行口座にデポジット分の預金が準備できていないとエージェントは動くことができません。
◎BRAの取り交わし
テナントとエージェント間でBuyer Representation Agreement(BRA)と呼ばれる専属媒介契約を取り交わします。専属契約はエージェントがテナントへの忠誠や義務を負うものであり、お部屋探しを請け負う期間、エリア、担当者名が定められています。
同時期に別のエージェントと同様の契約書を取り交わすことはリスクがありますので、エージェントは一人に決めてから、お部屋探しや賃貸申込をされることをおすすめします。
MLS掲載物件は基本的にオーナー側からテナントエージェントに仲介手数料が支払われますが、MLS非掲載物件等オーナー側から仲介手数料が出ない場合には、テナントがエージェントに対して半月分の賃料相当額の仲介手数料を支払う必要が生じるケースもあります。また日本では複数の物件に同時に入居申し込みをすることもできますが、こちらではオファーは1つずつのみとなります。
◎お部屋探しから入居までの所要日数、スケジュール
物件のご案内からご入居(鍵の受領)までの間の必要事項として、物件決定→賃貸申込→契約成立→デポジットのお支払い→テナント保険加入・光熱費等の契約→鍵の受領、が挙げられます。そのため、ご案内からご入居までの所要日数としては最も早くて1週間程度、通常は10日~2週間程度かかります。
また賃貸募集に出されている物件の入居可能日は、①即日入居可能(現在空室)、②来月1日又は月中から可能(現在入居者あり)、③2か月後から入居可能(現在の入居者が退去通知を出したばかり)の3種類に分かれ、①と②が全体の7~8割程度を占めます。現在空室の物件は1か月以上入居日を待ってくれるオーナーは少ないため、自分が契約開始したい日の1か月前から1か月半前頃にお部屋探しをスタートするのが、候補物件が最も多い時期かといえます。
②自分で探す
MLS掲載物件に条件に合う物件がない、1年間は契約しないなどという場合には、自分で物件を探すことになります。
エージェントに頼まず自分で借主を見つけようとするオーナーは、コミュニティーサイトなどのウェブサイトやSNSを通じてテナントを借主を募集します。
物件情報を確認して自分の条件に合う物件を探し、気に入った物件を見つけたら自分でオーナーに連絡します。内見依頼、契約書の取り交わし、デポジットの支払い、入居と全て自分とオーナーとの間で直接やりとりしながら進めます。
自分で探すメリットは、①賃料の低い物件が探せる、②まずは3ヶ月など短期間でも契約ができる、③当初のデポジットが少額で済む、などが挙げられます。
自分で探す際の留意点
◎すべて自己責任
物件を貸し出しているからといって、オーナーが不動産賃貸に関する法律やルールに詳しいとは限りません。オーナーにとって都合のいい有利な契約内容を記載していることもあるかもしれません。自分で物件を探す場合には、契約時も入居後もすべて自己責任であることを自覚して、賃貸契約の内容を十分に確認した上でサインしましょう。
◎内見時にはオーナーや周辺環境もチェック
物件の建物やお部屋自体、共有設備のチェックはもちろんのこと、オーナーはどんな人なのか?物件周辺の買物施設や交通アクセスはいいか?街ゆく人の特徴や治安は?など周辺環境もしっかりチェックしましょう。
◎契約書をよく読む
英語だからよくわからないと思わず、オーナーが用意した契約書は必ずきちんと目を通しましょう。理解不足の状態や空白部分のある契約書には決してサインしてはいけません。内容について疑問を感じた時にはオーナーに理解できるまで確認するか、自分で「Residential Tenancy Act(住宅賃貸法)」を読んで確認してください。
オーナーと住宅賃貸契約を交わす際には、オンタリオ州の所定の賃貸契約書「Ontario Residential Tenancy Agreement (Standard Form of Lease)」を使用して契約書を作成してもらうことをオーナーに求めてください。
お勧め物件検索サイト
「REALTOR」 www.realtor.ca
エージェント専用のMLSと連動している一般向けサイトです。実状況と数日の誤差は見受けられますが、このサイトに掲載されている物件はエージェントが間に入ってご紹介できる物件となります。
オーナーにとってテナント探しの留意点
オンタリオの住宅賃貸に関する法律やルールはテナントを守る傾向が強いです。例えば、賃料が不払いでもすぐに追い出すことができず、仲裁委員会(Landlord Tenant Board)に申し立てをする必要があり非常に時間がかります。
また賃料もレントコントロールを受ける物件が多いため、最初の賃料から大きく上げることが難しいケースも多いです。悪質なテナントを住ませてしまったらオーナーは悲劇です。
オーナー審査においては、①賃料の不払いや遅延のリスクはない相手か?、②自分の大切な資産である部屋や家を大事に使ってくれそうない人や家族か?、③何年くらいで退去する可能性があるか?などを勘案して、後々トラブルにならないような借主を選ぶように心がけましょう。
自分のニーズに合わせて、後でトラブル発生や後悔しないよう納得できるお部屋探しをしましょう!
※弊社では、お部屋探し、入居後のアフターサポート、生活サポート等を承っております。物件検索やお部屋探しに関する疑問・質問、ご要望についてお気軽にご相談ください。