金メダルを取るコツ|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第79回】

スタートライン
①本人・両親ともにコンディショニングの重要性の認識ゼロ。痛いのを我慢して練習したり試合したのが自慢(私にとってはなぜ試合にコンディション合わせられなかったのか疑問)。
②まだ成長期で、体には十分な強度が無い(世界で戦った経験が少ないので、必要とされるフィジカル+メンタル面の強さが理解されていない)。
③オールドファッションなカナダ人コーチが、この選手の強度を理解しておらず猛特訓をする気満々。
という条件をクリアして金メダルを目指すというものでした。
水曜日完全休養
私が始めに手をつけたのはコーチとミーティングの予約を取り「水曜日完全休養」の了承を得ることでした。やる気満々のコーチの部屋での交渉は当然の事ながら難航しましたが、
青嶋 「じゃっ!貴方の言うとうりに猛特訓させたら金メダル獲れるって保証してくれるの?」
コーチ 「それは…出来ない…」と小声で答えてくれたので、
青嶋 「それなら、黙って私の言うこと聞いて!!」
青嶋 「こっちは、金メダル獲れなかったらテレビの前で謝ってあげるくらいの覚悟はある!」
と若気の至りで啖呵を切ってしまいました。
なぜこんな事をしたかと言うと、当時の私たちチームの読みとしては、周囲の諸々の状況から判断して選手は2年後に金メダルを獲るために必要な技術は有していると判断していたので、正直な所コーチにレベルアップしてもらうことは当初から期待しておらず、それよりもこのfragileな選手をどうやって2年間壊さないかが最大の課題で、それを任されたのが私だったのです。
今だから話せますが、先に説明した様に、「選手本人の意識が低すぎる」ことから、このプロジェクトは不可能と判断して、この選手のサポート依頼を断った経緯があるのです。
その後すぐに、日本の有名なドクターから「全ての責任は私の看板の元で取りますので実際のサポートをお願いします」と直々に連絡をいただき引き受けたドクターXみたいなプロジェクトでしたので、私自身も自分のテクニックに過信する事なく、「失敗しない」ために不安要因は一つ一つ潰すのが不可欠だったのです。
ここを見誤ると自分がサポートしている期間中に有名選手を怪我させてファンをガッカリさせる事になります。もっと言うのであれば、この選手の場合、土日の休養で楽になった体で月曜日の練習を張り切る➡火曜日に疲れる➡水曜日に怪我をする可能性が高いというパターンを把握していたので最大のリスク要因を排除したのです(この判断が正しかったことは金メダリストとなった今も、このルーティンを守っていることからも明らかだと思います)。
この一件の副産物として、世界で有名なコーチでも、少なくともコンディショニングに関しては知識、責任感共に欠ける事がプロジェクトの始めから分かった事は、その後の私の作戦上有益でした。
この私の導入した「水曜日完全休養」の真の意図がどこにあるかというと、①怪我予防することにより無駄に練習を休むのを防ぐ。②週の真ん中に完全休養を入れたことにより体を疲れさせず毎日集中した練習が出来る様にする。③周りからは「練習嫌いっぽく」見えて周りの有力選手が油断する??
次に取り組んだのは、過去25年間に延べ20人近くのオリンピアンをサポートしてきた経験を元にした私流のコンディショニングを選手に浸透させる事です。過去のオリンピアンと同様に私の担当期間中は絶対に怪我をさせないためです。その当時、この選手が雑誌インタビューで語った記事があります(写真)。

私にも言わせていただけば、決して怖いことを言っているわけでは無く、当たり前のことを理解していただけるまで丁寧に言い続けているだけです。金メダルを獲りに行くというのは、そのくらいの注意が必要なのは過去25年間に嫌という程思い知らされています。アスリートの心と身体のコンディショニングが整わなければ結果として才能が開花することは絶対無いと思います。
ピンと来ない人も多いと思うのでもう少し説明を追加します。
①何故アスリートにとってコンディショニングが全てなのか?
答えは簡単です。どんなに選手に才能があっても、どんなに良い環境で世界トップコーチをつけても、大事な試合にコンディションを合わせられなければ金メダルを獲ることはあり得ないからです。
②コンディショニングで一番大切な事
アスリートは①体格、②体力、③性格、④生活環境などが皆違います。出来るだけ個人にあったコンディショニングをすることが一番大切です。
③ コンディショニングの方法
方法は色々あり、何がベストと言うのは大変難しいのですが、どんな方法であれ必ず私が取り入れるポイントは
❶目に見える判断基準を持つ。
❷目に見える改善を毎回確認する。
この様なコンディショニングを行うと、毎日確実にコンディションが向上します。
これが基本的に自分で行えるレベルにあればアスリートのコンディションが安定して色々な計画が立てやすく、又自分でやったコンディショニングで良い結果が出れば選手本人の意識が変わってコンディショニングの質が上がります。このフィジカルな変化は直接的にアスリートのメンタルを強くします。
練習ので調子が悪い=コンディションが悪い=コンディションを整えれば練習調子良くなる。というシンプルなロジックが出来上がることによりスランプに陥るのを防ぐのです。
このようにフィジカル面だけで無くメンタル面までも安定させるコンディショニングは、アスリートにとってファーストプライオリティとして取り組むべきである事を理解するのが金メダルを獲る一番のコツだと考えています。この様なアプローチは、色々なフィールドで頑張っているアスリートやダンサーなど幅広い人たちに、一度立ち止まって日頃の練習方法を見直すきっかけになると考えています。
ブログ「金メダルに導くマッサージセラピストの目線」でもエピソードをご紹介しています。
https://massage.sablage.biz/






