プロ契約待ちのサッカー選手|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第90回】

トライアルまでの期間にコンディションを万全にしたいという事で2ヶ月前からZoomで日本と繋いでコンディショニングを始めました。
夏にトロントで練習に参加した際は、気合十分で時差ボケにも関わらずカナダのプロチームの選手にも引けを取らないプレーでコーチを驚かせたほどでしたが、3~4週間目から体に疲れが感じるようになり課題が残りました。来シーズンのプロ本契約に向けてよりコンディションを向上させるのが目的で日本とカナダを繋いでコンディショニングを続けています。
大学サッカーチームからも、「君は怪我しないね!何で?」と不思議がられる存在
彼はトロントに滞在していた7年前からサポートさせてもらい、アメリカの大学でプレーする間も定期的にコンディションを報告してもらい自己管理を怠らなかった結果、大学サッカーチームからも、「君は怪我しないね!何で?」と不思議がられる存在でした。大学3年生の時エースナンバー10番をつけ、チームメートからも信頼されるプレーヤーに成長しました。
このような流れなので、毎週コンディショニングにも通ってくれますが、別に怪我している所も痛い所もありません。毎回何をしているかと言うと、本人の気が付かない体の主要関節の動きを確認したり、今週の練習や試合で気になった動きを元に、より細かく体の問題点や疲れが溜まってきている部分やプレーを妨げる可能性のある箇所を見つけて改善していきます。
具体的には、「昨日の試合で出したパスが、あと10度くらい右に角度をつけて出すことが出来たら、相手がボールに触る事が出来なかった」という話に対して、「じゃあ、とりあえず足首もっと緩めてボールを蹴り出す角度広げてみる?」といった感じです。
100%以上という意味
100%以上という意味は、例えば足首が良い状態にあっても、それで良しとせず、関連する膝や股関節の状態もさらに整えて足首にアクシデントによって負荷がかかったとしても、他の部位で衝撃を吸収するなどし、怪我を防ぐ2重3重の保険をかけているという意味です。
このように慎重に正確にコンディショニングを行ってきたので私がサポートさせてもらってからの過去7年間は、空中のポジションで足元をすくわれて手をついた時の骨折のみです。本人曰く「筋肉系の怪我はする気がしない!」と言い切っています。
コンディショニングが上手く行っている時に気をつけるべきは、小さなサインを見逃さないこと
先日も日本からのZoomでのコンディショニングの際に「調子は良いが昨日の試合で、なんかプレーに集中出来なかった」「まっ、時々あることなので問題ないです!」「サッカーをやっていた父親も、よくあることと言っている」という会話になりました。
問題ないと言えば問題ない会話ですが、怪我する気がしない絶好調の選手が試合に集中出来ないのは引っかかるので、「プレー自体はどうだった?」「気になった動きは?」「前日の練習内容は?」などこちらから質問を続けました。
すると、「試合とは関係ないが、最近取り入れている高地トレーニング(標高2900m相当の環境を再現して行う)で、血中酸素濃度が今まで90%くらいに維持できたのに、先週から81%に落ちてしまった」と教えてくれました。
血中酸素濃度が下る=脳を含めた体の運動能力が低下するような状態を過去に何回も経験していたので、一見マッサージセラピストには無関係な領域に見えますが、改善に向けてTAD式ゴリラ風マッサージ(両手でゴリラが胸を叩いている様なポジションになります)を試みました。
TAD式ゴリラ風マッサージ

方法は自分の指を肋骨間にピッタリとあてて、肋骨の間をマッサージするだけです。
【目的】
血中酸素濃度を上げるために新たなトレーニングをするのではなく、まずは自分の体の持つ能力を最大限に発揮するために、呼吸(特に吸気)を妨げるポイントを改善することを目的とします。
【期待される効果】
肋骨(胸郭)の動きが柔らかくなり呼吸(吸気)がしやすくなること。付加的に、体内への酸素摂取量が増え持久力が増したり、頭がスッキリするかもしれない。
フィギュアスケートの世界選手権に帯同した際。人気上昇中の選手でしたのでスポンサーや日本スケート連盟の幹部の方などと一緒に試合を観戦していましたが、ショートプログラムの途中で選手のスタミナが切れて、最後のスピンで完全に失速。手をついて決めのポーズが出来ないというカッコ悪い状況に遭遇しました。
「明後日のロングプログラムは大丈夫?」と不機嫌そうにスポンサーや幹部に言われても「絶対大丈夫です!」と答えるしかないわけですが、オフィシャルホテルに戻ってからスケーター本人に尋ねると「オリンピックの出場枠がかかった大事な試合なので実力以上のプログラム構成にしており、どうしてもスタミナが足りない」と絶対絶命な状況を教えてくれました。
私は、この選手をなんとかするためだけに試合に来ているので頭を捻って考えついたのが、この「TAD式ゴリラ風マッサージ」です。
結果は、奇跡的にフリープログラムをバテずに乗り切って好成績。先輩選手の頑張りもあり、目標のオリンピック出場枠を確保することが出来ました。
この経験から「TAD式ゴリラ風マッサージ」を他のアスリートにも試して同様に良い結果を得ていたので感覚的に効果を実感していましたが、今回サッカー選手に試したところ、翌日から血中酸素濃度が高地トレーニング後にも90%維持できるようになりました。
これに気を良くした私は最近「TAD式ゴリラ風マッサージ」を多用する傾向にあります。最近売り出し中のフィギュアスケーターは試合前の緊張が悩みの種でしたが、この方法により2週間前の試合で日本人初となる表彰台に上る快挙を遂げ、朝のNHKニュースでも取り上げられました。その後すっかりゴリラマッサージの虜になっている現実もあります。オリンピックまでこの調子を維持してもらいたいと思いますし、この簡単な方法であれば好調を維持しやすいと考えています(TAD式コンディショニングの基本コンセプトです)。
どんなに素晴らしいトレーニング方法も、それについていける体の状態になければ意味がない
情報が溢れている現代アスリートの世界では、なんとなく新しい方法、有名な先生の方法、有名選手がやっている方法が効果的と思われる傾向にありますが、多くの場合自分には良い効果が出ません。
理由は、受け身の情報を多く取り入れるだけで安心して、自発的、本質的な対策が抜けているからです。自分の技術を向上させる前に、自分の体の最大パフォーマンスが出せているのか?を確認すべきです。もし出せていないのであれば、まずはそのレベルに達しなければ、技術アップするべき項目も分からないので無駄に難しいトレーニングをして体を疲れさせ、全く良い結果が出ない負のスパイラルに陥ります。
このように申しあげましたが、見極めを自分やコーチに求めるのは難しく、過去30年以上多くの実体験から培われた目を持つFlow clinicのセラピスに相談するなど、豊富な知識を持つ人に相談するのが近道であり、短い現役生活を無駄にしない方法だと思っています。





