トロントの若きクラシックピアニストと|トロント音楽散歩 with Cecili
SNSは誰にでもチャンスがあって夢があるけれど、そのチャンスというやつはとにかく徹底的に消費主義な「目を引くもの」であって、こちらの愚直な情熱や、繊細な美学や、崇高なこだわりなんかはあっさり爽やかに流されていく。「やってられない!俺はアートがやりたいんだ!!」から始まり「やっぱり地道に頑張ります」と素直に落ち着くのがいつもの定番の流れである。
そんな今日この頃、先日、あるピアニストの友人とコンテンツのコラボ撮影にお呼ばれするというイベントがあった。彼のスタジオにお邪魔するというだけで私はうはうはだった。なにせ彼は、トロントを拠点に活躍する若き売れっ子ピアニストでありながら、フランス語・ドイツ語・中国語まで話すマルチリンガルという超ハイスペで、しかもクラシックを愛し、ラン•ランのファンというから、私もついオタクモード全開で前のめりで話し込んでしまった。
彼のスタジオのベイビーグランドピアノは、もう最高に柔らかく透き通った生きた音を奏でて、普段家で1番スタンダードなモデルの電子キーボードをカタカタ鳴らしているジリ貧の私としては、触らせてもらっただけで涙が出そうになった。ありがとう友人。
そんな最高の環境での撮影にも関わらず、私のポンコツぶりでテイクを何度もやり直し、彼の辛抱強さに甘えまくった挙句気づけば長時間スタジオに居座り音楽を熱く語り合っていた。私にとっては最高に満ち足りた時間だったが、彼はもう二度と私をスタジオに呼んでくれないかもしれない。
そんなこんなで最終的にやっぱりSNSの話に到着し、「どう編集したらバズるか?」「サムネどうする?」という話をしているうちに、「私たち何を頑張ってるんだっけ」と、2人でアーティストの苦労を分かち合う。
それでもやっぱり、そんなプラットフォームの中でも、良いものを拘って作りたいと思ってしまうのが私たちアーティストの性である。冷酷な消費主義にもへこたれず、これからも元気に楽しく、自由に表現し発信し続けたいものである。








