弁護士ではなく公証人が必要になるときとは?|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第42話】
カナダでの日常生活において、大事な書類をサインする際に「ノータリー・パブリック(Notary Public – 公証人)による認証」が必要になったり、書類の写しをNotarizeすることを求められたりすることがたまにあります。そこで今回は、オンタリオ州の公証人の役割についてお話しします。
オンタリオ州の公証人
オンタリオ州のノータリー・パブリックは、同州政府任命され、一定の認証機能の権限を与えられています。現在のところ、オンタリオ州法律家協会より資格を授与された弁護士、及び、パラリーガルは公証人になることができ、それ以外の者は、州の審査を経て、公証人資格を取得します。民間の法律事務所に勤務する多くの弁護士が、弁護士業務と並行して、公証人業務を提供しています。それではどのようなときに、弁護士ではなく公証人のお手伝いが必要になるのでしょうか。オンタリオ州の公証人は、主に次の3つのタイプの認証を行うことができます。
その①~事実の宣誓認証
特定の事実の証明が必要な場合に、その内容が真実であることを本人が誓う書類として、Affidavit(宣誓供述書)や、法定供述書(Statutory Declaration)と呼ばれる書類があります。これらの書類を使い、公証人は、同書類に記載された真実が偽りないというご本人の宣誓行為を認証することができます(Commissioner for taking affidavits: 宣誓供述認証コミッショナー)。裁判所や各種法的手続きの書類だけではなく、身近なところでは、車の名義を家族に譲る場合の書類や、年金関係でコモンロー(事実婚)関係にあることを証明する書類などがあります。
その②~署名の認証・立会い
日本のような、実印や印鑑証明という制度がないカナダでは、書類のサインがご本人のものであることの認証を公証人が行います。カナダで公証人によるご本人の署名認証が必要になる書類としては、金融機関や政府機関の書類が多いように思います。また、カナダ国外の法律文書をカナダ国内でサインする場合は、現地公証人の面前でサインが本人のものであることの認証を受けることを求められることがよくあります。筆者の場合は、海外の年金・不動産関係の書類や、日本からの相続・保険・不動産関係の書類などの署名認証を行うことが多いです。
その③~原本認証
運転免許証やパスポート、遺言書など、大事な書類の原本を第三者機関に提出することが難しい場合、公証人は、その写しが原本と相違しないことを認証することができます。その場合、公証人に書類の原本を提示し、公証人は写しを作成し、認証証明書を添付します。公証人の作成する認証コピー(Notarized Copy)は、原本と同じものとして扱われます。
バーチャル公証人?
コロナのパンデミックにより、公証人業務のうち、①の宣誓供述書の認証業務については、法改正に伴い、恒久的にビデオ会議による認証が可能になりました。しかし、公証人としての署名認証は、従前通りご本人との対面のみとなります。
公証人による遺言書の作成は可能?
日本では、公証人役場で公正証書遺言を作成することができますが、オンタリオ州では、遺言書のような法律文書の書類作成の権限は与えられておらず、遺言書作成は、弁護士の職務範囲となります。なお、ケベック州のように、公証人が遺言書の作成を行う州もあり、各州で公証人に与えられている権限は異なります。
ノータリーサービスが必要になったら
オンタリオ州でのノータリーサービスは、通常、公証業務のみを行うノータリーオフィスや、一般の法律事務所で対応していますが、公証業務を提供しない法律事務所も少なくないため、ノータリーが必要な場合は、お近くの法律事務所に一度問い合わせをされることをお勧めします。
[おことわり] このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。また、本コラムの情報は、2022年11月時点での情報に基づいており、今後法改正により内容が変更する可能性があることをご理解ください。