【音を作り出す楽しさに来場者も夢中】フォーリーアーティスト 小山吾郎さん トロントのジャパンファンデーションでワークショップ開催
映像の動きに合わせて音を入れるフォーリーアーティストとしてハリウッドなどで活躍する小山吾郎さんが10月、トロントのジャパンファンデーションでワークショップを開催した。来場者は実際にさまざまな道具を使って短編映画に音をつけることに挑戦し、自分たちで考えながらオリジナルサウンドを生み出す楽しさを学んだ。
考えながら音を生み出す楽しさ体験
小山さんは一般向けワークショップを定期的に開催。今回は子どもから大人まで約70人が集まり、フォーリーアーティストの仕事や音について楽しみながら学んだ。今回はハロウィン直前だったこともあり、コスチュームを来て登場した小山さん。まずフォーリーアーティストの説明をした後、仕事の様子を写真で紹介した。
ワークショップの醍醐味は、来場者が一緒になって短編映画の音を作り出す実演の時間だ。小山さんが自分で制作した約3分の映画は、真冬に雪が積もる中を歩くロボット人間がエイリアンを拾い、家に連れ帰った後に家の中でハプニングが起こるというストーリー。雪の中を歩く足音からエイリアンが落ちてきた時の音、家の中でスープを煮る音などいろんな種類の音を来場者が作ることになった。
序盤のロボット人間が雪の中を歩くシーンでは、まず小山さんが実演。青いビニールシートの上を歩いてみたり、膨らませたゴム手袋をジーンズ生地に巻いて太ももで転がすようにしたりしてみせると、まるで雪の上を歩くような音が出来上がった。映像からはとても想像ができない道具を使ってみせたため、来場者からは驚きの声が上がった。今回用意された道具は、お菓子の缶、おもちゃ、水、小さなバケツなどさまざまだ。映像の中で必要となる音1つ1つに対して今度は来場者から1人ずつ挑戦者を募り、自分の考えたモノの組み合わせで映像にマッチした音を作り出して録音した。
木が風で葉を揺らすシーンで、ビニール束のようなものをこすり続けるとまるで本当に木々が揺らされているかのような音に。参加者2人がそれぞれ体験し、音の出し方に個性がありお互いの音の違いのおもしろさに興味津々の様子だった。エイリアンが家を暴れ回る場面では、スクイーカーのような音の出るおもちゃと木琴のような音の出る手作り楽器の音を別々に録音。担当した子どもたちは笑顔で音を出し続け、エイリアンの動きがいかに素早く暴れているかがわかるよう工夫していた。
Q&Aで参加者と交流も
ワークショップでは、小山さんへのQ&Aの時間もあった。最近携わった作品についての質問で、『リトルマーメイド』の実写版でアリエルが水中を泳ぐシーンの音を担当したという小山さん。「パワフルだけどスムーズな音を要求された。プールに水を張ってかきまぜると、ぱちゃんと水が弾ける音がしてしまって最初はうまくいかなかった」と苦戦したという。最終的には水のタンクを全部布で覆って波が立たないよう工夫し、ざるも布で覆うことでなめらかな音が生まれるようにしたと話し、「アリエルにとってはこれが彼女の足音となる音。映画を見る人の気が散らない音になるよう考えてようやく出来上がった」と語った。
この仕事をしながらの発見については、自分が日常の音が好きなことに驚いたことを挙げた。サウンドエフェクトは大爆発やカークラッシュの中の話だと思っていたが、慌ただしい朝食シーンなど日常にある音を好むといい、日々の音を作るときは細部に至るまで自然に聞こえるよう工夫していると明かした。
みんなで作った作品鑑賞
ワークショップ最後の楽しみは、みんなで作った映画を鑑賞する時間だ。会場全体がワクワクしながら映画がスタートすると、自分たちの作った音が見事にはまっている場面で大盛り上がり。試行錯誤しながら作った音が1つ作品として仕上げられたのを見て、不思議がったり喜んだりしている様子だった。また、誰がどの道具を使ってどんな動きでその音を生み出したのかを思い出しながら、笑顔で映画を鑑賞していた。エンドロールが流れると会場からは大きな拍手が巻き起こり、ワークショップは盛況に終わった。