グルメの王様のおしゃれ美食道 第33回「お菓子なニューヨーク」
ニューヨークは間違いなく世界の美食の中心的な街です。世界中から予約が入るお店が目白押し、ということもありますが、それよりも何よりも、美味しいものを食べたい、という意欲のある人が多いことが、この地の食文化のレベルを上げている、と言っても過言ではありません。ニューヨークにはレストランの他に名だたるケーキ店が多くあります。
お菓子というと、皆さんはケースに綺麗に並べられたケーキ屋さんを思い浮かべるかもしれませんが、私にとってのケーキとは、子供の頃から、やはりフルコースの最後を飾るもの、と教えられてきました。
今回ご紹介するケーキ店は、ニューヨークを代表するお店の一つ、パヤードです。 オーナーは、Mr. François Payard。今やニューヨークに何軒もPAYARD を持つ花形パティシェです。そして彼もまたあの大好きなル・サーク出身です。
私が訪れたのは3rd Avenue 店。周りの環境はあまり感心しませんが、それだけに綺麗なお店のショーウィンドーが一際目立ちます。
店内はまるでお菓子とパンの遊園地。大昔英語を習いたての頃アメリカ人女性と会話中、遊園地アミューズメントパークを、間違ってアメイジングパークと言ってしまい、大爆笑を誘ったことがありました。負け惜しみかも知れませんが、特にこのパヤードを見ていると、まんざら間違いではない、そんな気がしました。とにかくお菓子好きには遊園地。夢心地の店内です。
さて何を頼みましょうか?最近東京でも流行している奥にテーブル席がある作りでその手前にカウンター席があったので、ここに陣取りました。パヤードのケーキならどれも美味しいはず、との敬意から、お薦めの四品を注文しました。一人で四種類いっぺんに注文する人は珍しいと見えて、周りの注目を集めてしまいました。
見事なケーキ達は、まずLouvre 初訪問の寿司店ではまず「ぎょく(玉子焼き)」でお手並み拝見ですが、ケーキ店ではやはりチョコレート。そしてPomme Verte 青リンゴがアクセントです。次は実はこれが一番美味しかった。Millefeilleは日本でもお馴染みのミルフィーユですが、流石に一味違います。そして、何故か世界的に大流行したマカロンのパヤードスタイルMacaron Plateこれだけ目の前に並ぶと迫力がありますね。
その時カウンター越しに、「ニューヨークで一番美味しいカプチーノを飲んでみませんか?」と声を掛けられ、その粋な言葉に思わず注文。更に他にも飲み物をサービスしてくれて感激しました。こういう演出には思わずチップもはずみます。
昔々大変親しいホテルオークラベーカーチーフと話した際、ケーキに一番合う飲み物を尋ねたことがありました。答えは「お水」でした。それ以来ケーキにはお水、を徹底しています。しかしここはこのウェイターの熱意に応えカプチーノを注文。
お店を出る前に化粧室に立ち寄ったのですが、奥のテーブル席から丸見えでこれは少々ショックでしたね。ですから私の印象は、お菓子なニューヨークとなりました。
辻下忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。