Express Entryの現状と展望|カナダで永住権!トロント発信の移民・結婚・就労ビザ情報
カナダの移民局(IRCC)が2015年1月1日にExpress Entryを導入して以来、早10年が経過しました。Federal Skilled Worker、Canadian Experience Class、Federal Skilled Trades Class等の連邦政府のプログラムで移民申請をするためには必須のツールであり、またProvincial Nominee Program(PNP)とも連携するようになったことで、個人移民申請の窓口と認識されるようになりました。カナダの経済や政治が変化すると同時に、Express Entryの選考やトレンドも変化が見られるようになってきました。
今年から個人移民申請が益々難しくなったということもあり、このExpress Entryについて「現状や今後の展望を知りたい」というご相談を受けるようになりました。今月はこのことについて、解説します。
Express Entryプログラムの意味
カナダの Express Entryプログラム は、世界中から優秀な人材をスピーディかつ公平に受け入れるための移民制度と言われています(スピーディという箇所には少し語弊がある場合もありますが、これはご容赦下さい)。Express Entry導入前の紙ベースの移民申請の頃は、申請パッケージをIRCCに郵送してから結果が出るまで大変長い時間を要していました。Express Entry ではオンラインシステムを導入したため、必要な人材をより迅速に選抜できるようになりました。
Express Entry発足当時の大きな目的は、スキルを要する人材をカナダ国内外から確保することでしたが、近年この目的が少しずつ変化し始めました。現在では、「カナダの労働市場で不足している分野において、即戦力となる人材を確保すること」に焦点を当てて選考を行っています。
つまりExpress Entryは現在、「カナダ経済を豊かにするために必要な人材を、世界中から効率よく見つけ、迎え入れるシステム」として政府が導入しているプログラムであるとお考え下さい。
現状
カナダでは幾つかの重要な分野において、高度なスキルを要する人材不足が続いています。それらの分野とは、医療・建設・教育・STEM(科学・技術・工学・数学)・農業・食品産業などを指します。これらの分野における長期的な人材不足は、残念ながらカナダの国内の経済全体に大きな悪影響を与えています。従って企業はスキルを要する、新しい人材を国内外から惹きつけてカナダに定着させる、という方法を模索せざるを得なくなっている状況なのです。
連邦政府もIRCCもこの事実を把握しており、特定の分野において優秀な人材(労働力)を確保することは、カナダ国内における住宅供給の拡大を後押しするという事実にも繋がると考えています。また、カナダ国民とその家族が必要とする医療や教育に関するサービスを、「必要な時に必要な場所でアクセスできる」ことを可能にするとも言われています。
展望
今後連邦政府がIRCCと共に取り組むべき方向性について、大きく分けて4つあるとIRCCは述べています。
国の魅力をアピールする
カナダという国が「移民先として魅力がある国」であると、世界中に存在する経済成長と繁栄を推進できる高い能力を持つ人材に対して積極的にアピールし、目的地として選ばれるように努力しなければならないとしています。現代では、人材の移動が世界経済を大きく左右し、国際的な経済関係やビジネス戦略も絶えず変化していることがその理由です。
Senior Managerの選抜を優先
企業や組織の運営を監督し、従業員のチームを率いるSenior Managerをカナダに呼び寄せることが重要であるとIRCCは考えています。Senior Managerたちは異なる視点でデジタル変革を加速し、生産性を高め、組織目標の達成に貢献することができることから、これらの人材はカナダ企業やビジネスの成功に寄与し、経済の発展を後押しすると考えられています。
研究者や科学者の選抜を優先
特定の分野における研究者や科学者を率先して選考することも検討しているとIRCCが発表しています。科学研究やそこから生まれるイノベーションは、私たちの経済や生活のあり方を大きく変えてきました。こうした変化は、生産性や業績を高め、経済成長を後押し、人材育成にも繋がることから、新しい発見をさまざまな分野で活用できるようになるとしています。連邦政府やIRCCは、科学者や研究者が経済に果たす重要な役割をしっかり認識しているようです。
国家安全保障と軍の強化
カナダが国として「生産的、且つ繁栄し続ける経済」を実現するには、強固な国家安全保障が欠かせません。政府はカナダ軍の再建・再武装・再投資に取り組んでいます。その一環として、同盟国から軍に関する高度な技能を持つ人材を採用し、カナダ軍の能力を強化する取り組みを支援することを検討しているとのことです。この分野における候補者の選抜を進めることで、カナダ軍が引き続き世界水準の防衛力を維持できるようになるとしています。
最後に
Express Entryの動向をしっかりと把握することはとても難しいため、IRCC関連のニュースや記事も参照してみて下さい。今後も経済や国の状況の変化に応じて、Express Entryの選考も積極的に変化するものと見られます。






