カナダの変化 | インド国籍保持者の急増に対応。カナダ移民局は対策を強化|カナダで永住権!トロント発信の移民・結婚・就労ビザ情報
モザイクの国?
カナダは長年、モザイクの国として世界中に知れ渡ってきました。移民が多く、異なる文化や宗教を持つ者たちがお互いに尊重しあって共存している国、つまり誰が移住しても安全な居住地というイメージを持たれていました。
ところが近年カナダの都市部や一部の街に住んでみると、居住者の人種に偏りがあると感じ方もいるかもしれません。昨年頃から「カナダに移民してきた人たちの出身国のトップ10は何ですか」との質問を沢山頂いたことや、コンサルテーションで長期滞在者のお客様とお話すると「ここ5年から10年程でカナダに移民してくる人たちの国籍に偏りが出てきて、すっかり変わりましたね」とのコメントを頂くことが多いことに気付きました。今月号はこの変化についてお話します。
*尚、今月号は記事の内容の特性により特定の国の移民者について解説をしますが、その国の方々について差別や偏見を示す意図は一切無いことをご承知おき下さい。あくまでも事実を元に、カナダ政府が移民対策案をどのように打ち出しているかということを解説することが本記事の目的です。
Statistics Canadaの結果
Statistics Canada(カナダ統計局)は、カナダ政府の統計機関で、カナダの人口、経済、社会に関するデータを収集・分析・公開する役割を担っています。政策立案者、研究者、企業、市民が正確な情報に基づいて様々なことを判断できるようにするための、「公式の数字」を提供する政府の機関です。ご存知の方も多いかと思いますが、Censusと呼ばれる国勢調査を5年毎に行っているのも、このカナダ統計局です。次の国勢調査の実施は2026年ですので、今回は2021年の結果を元にお話します。
下記カナダに居住している移民者の出身国トップ10となります。
カナダにおいて:
- インド
- フィリピン
- 中国
- UK
- アメリカ
- パキスタン
- 香港
- イタリア
- イラン
- ベトナム
特にインドからの移民は2021年の時点で前回の調査よりも約19%増加しており、次に行われる2026年の国勢調査では更に増加しているであろうと言われています。
インド国籍保持者に対して
カナダ移民局(IRCC)は、インド国籍保持者が急速にカナダで増加していることを認識しており、様々な対策を打ち出しています。その一部を下記ご紹介します。
- トルドー前首相は2015年から2024年の間に130万人のインド国籍者にStudy Permitを発行した。これは全Study Permit発行数のほぼ15%に値する。またWork Permitも130万人のインド国籍者に発行していた。この数字を受けて、IRCCはStudy Permitの申請条件の見直しや、PGWP申請条件の変更を幾度も行い、現在では30%から35%発行数が減少している。
- Family ClassにおけるPR申請者で且つインド国籍者に対して、偽装結婚か否かということをオフィサーが正確に判断できるようにするため、見合い結婚のしきたりや、一般的な結婚のしきたりなどについて解説したマニュアルを内部オフィサー宛に作成・配布済み。
- Work Permit申請者で且つインド国籍の者に対して、審査時に気をつける点を纏めたオフィサー用のマニュアルを作成・配布済み。特定のNOC番号を列挙し、それぞれどのような学歴・職歴が必要であるか、言語レベルの精査、過去に申請したビザの履歴をしっかりと確認すること、など様々な厳しい審査の条件を説明している。
- 難民申請者、且つインド国籍の数が急増していることを受け、IRCCは特定の国からの難民申請者の数を抑えることを考慮中としている。
- 2023年に発行されたLMIAの大多数がインド国籍であったことを受け、LMIA申請内容を2024年より厳しく取り締まった結果、インド国籍者の申請数が2025年は激減。
- Positive LMIAをService Canadaから得たインド国籍の大多数が、Express EntryにてValid Job Offer Points(200点或いは50点)をクレームしてCRSポイントを稼ぎ、その結果Invitation to Applyを受領し、PR申請をしていたことをIRCCは把握しており、対処の一つとして2025年春にValid Job Offer Pointsを停止した。
まとめ
一つの国からの移民者が大量に増えることによって、世間はカナダのモザイク文化が失われてしまうことを懸念しています。また特定の職種においては、カナダ人やPRの職を奪っていると考える人も出てきており、政府は(国を特定して発表することは可能な限り避けているものの)、内部のマニュアルが公に出るなどしてきたことで、対策をしていることが明るみになっています。
日本国籍保持者はカナダでは大変少ないため、このような対策の対象にはなっておりません。ただ、このような対策が行われたことで日本人の移民申請に大きく影響が出ているケースも残念ながら存在します。
カナダが昔のように、様々な人種がバランスよく、仲良く安定して暮らせる国に戻ることを皆様願っておられるのではないかと思います。移民申請やビザ申請の対策が行われると同時に、居住・医療・学問・インフレ・失業率などの問題が少しずつ良い方向に解決していくことを期待しています。






