Jeff Chiba Stearns監督 Athena Asklipiadisさんインタビュー [Interview of the month]
あなたにも救える“命”がここにある
社会派ドキュメンタリー映画 “Mixed Match”
●Jeff Chiba Stearns meditatingbunny.com
BC州で日系カナディアンとして生まれ、アニメーションとドキュメンタリー映画の製作を手がける。過去にはエミー賞ノミネート歴もあり、生み出した作品たちは世界中の映画祭で数々の賞を受賞している。
●Athena Asklipiadis mixedmarrow.org
日本、ギリシャ、イタリア、アルメニア共和国、エジプトの血を引く多民族家系に生まれ育つ。2009年、多民族家系患者のための骨髄バンクMixed Marrow設立し、代表としてその活動を続けている。
●Mixed Match mixedmatchproject.com
世界で進む多民族化。白血病などの病気と闘う人々にとって、混血人種であることは彼らの命をも大きく左右する。長く続く闘病生活、困難を極めるドナー探し、それを支える家族や支援団体の存在。様々な視点から現代社会が抱える問題を浮き彫りにしていく。
アニメ・映画製作を手がけるJeff Chiba Stearns監督と、LAで多民族家系患者のための骨髄バンクMixed Marrowを運営するAthena Asklipiadisさんがタッグを組み、6年という年月を経て完成した“Mixed Match”。作品の生みの親であるお二人に、映画の舞台裏について伺った。
なぜ骨髄移植をテーマにした映画を作ろうと思ったのですか?
Jeff監督(以下J):2007年に僕自身が、骨髄バンクのドナー登録をしないかと友人から誘われたのが始まりです。アジア×ヨーロッパ家系の方がドナーを探していたのですが、その頃は骨髄提供に関する知識も全く無く、仕事で忙しい時期だったこともありドナー登録はしませんでした。そして2010年、Mixed Marrow(多民族家系患者のための骨髄バンク)を運営しているAthenaが僕の映画(One Big Hapa Family/2010)を見たことをきっかけにメールをくれて、彼女が行っている活動について教えてくれたのです。そしてどれだけ多くの人が骨髄移植のドナーを必要としていて、また多民族家系の方にとってはドナーを探すのがどれほど大変かという現実を知り、これを題材にドキュメンタリー映画を作ろうと決めました。
この映画を作る上で一番苦労した点はどのような点ですか?
Athenaさん(以下A):患者さんそれぞれのストーリーを追うのに費やした時間ですね。ドナーを見つけるまでの過程を皆さんにきちんと知ってもらいたかったからです。
J:撮影を通して出会った人の中には、残念ながら、ドナーを見つけられない人や病気との闘いの中で亡くなってしまう人もいました。そういう瞬間は僕にとって試練だったと思います。でも、僕がこの映画を作りたかった理由というのは、多くの人が骨髄移植にまつわる多民族性課題のことを知らない・理解していない現実があるからです。これは単なる家系の血の問題ではなく、もっと遺伝子学的なもの。ドナーを見つけるということは、遺伝子上での双子の片割れを見つけるようなものですからね。だから、骨髄バンクで適合者が見つかるのを待っている人達、特に多民族家系に生まれ育った人々にスポットライトを当てる必要がありました。
映画のなかで一番好きなシーンはどれですか?
A:Mayaという少女が骨髄移植のドナーを見つけて、その2人が出会うシーンです。家族の愛に溢れ、人と人との繋がりの素晴らしさが伝わるシーンです。
J:僕も同じです。ほとんどの場合、親は子供のドナーにはなれません。他人に自分の子の命を救ってもらうということに、どれだけの葛藤や苦しみ、そして愛があるのか。子を持つ親の僕にとっても、非常にインパクトのあるシーンです。
この映画を通して伝えたいことは何ですか?
J:多くの人に行動を起こしてもらいたいです。ドナー登録をしたり、Athenaのようにドナーを増やす活動に参加したり。そしてこの映画のストーリーを周りの皆に共有してもらいたいですね。映画の予告編だけでもいいので、一度見てみてください。たった一人の命かもしれませんが、あなたにだって命を救うことはできるのです。
A:一人の人間が持つパワーの大きさを感じてもらいたいです。私も自ら支援団体を立ち上げましたが、最近ではSNSのおかげで、たとえそれがどんなに小さな声であっても、世界に拡散することは難しくありません。誰だってそのような大きな力が備わっているのですよ。
現在、日本で骨髄移植を希望する方の約半数はドナーを見つけられないと言われていますが、この問題に対しどのように思われますか?
A:日本人同士では身内の病気のことを外ではあまり話さないという習慣がよく見受けられます。日本には自分のことは自分でまずなんとかするという文化があるのと同時に、互いに助け合うという素晴らしい文化があることも私は知っています。すぐには難しいかもしれませんが、もっと周りに助けを求めていくことが必要かもしれません。
J:ドナー登録に採血という方法を用いていることも、その数が増えない理由の一つではないでしょうか。カナダでは綿棒で頰の内側をこするだけという簡単な方法です。あとは、骨髄移植・骨髄提供への正しい知識を持つことです。人々の中には自分の子供が骨髄を提供する事に反対する方もいます。子供の安全を第一に考えることは素晴らしいですが、正しい知識さえあればそのようなことはあまり起きないのではと思います。
Mixed Marrowの今後の目標は何ですか?
A:この活動を続けていくことですね。特に今回の映画は、人々に大きな気付きを与えられると確信しています。そして、多民族家系にまつわる骨髄移植の課題が世界へ広まると同時に、私達の活動範囲ももっと広げていきたいです。
TORJA読者にメッセージをお願いします。
A:骨髄バンクは若く健康な方の力を多く必要としています。そして骨髄採取は皆さんが想像するよりも小さな痛みで済むことが殆どです。世界中の誰でもなく、あなたにしか救えない命があります。
J:まずは骨髄移植、骨髄提供についてぜひ調べてみてください。人の命を救うことのできるチャンスというのは人生の中でもそう多くはありませんが、骨髄提供はその一つです。このチャンスを見逃す手はありません。僕らの力で世界により良い変化をもたらしましょう。
Translator: 新海 奏帆
滋賀県出身。子供の頃からの夢であった海外留学をトロントでスタートさせ、CanPacific Collegeにて日英バイリンガルプログラム、ビジネスプログラムにてディプロマを取得。将来は日本と世界を繋ぐコミュニケーターになることが目標。
CanPacific College: www.canpacificcollege.com
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