Interview of the month Feb 2015
Translator: Mifuyu Matsui (松井美冬)
日本の大学で英米文化を専攻。語学力向上のために一年間休学し渡加。CanPacific Collegeで通訳翻訳のスキルや北米文化を学ぶ。将来、日本だけでなく海外で活躍できるようになることが目標。
Canpacific College : canpacificcollege.com
トロント唯一の南アジア芸術センターで数多くの芸術家活動を支援している
SAVAC芸術監 Sharlene Bamboatさんインタビュー
20年続くトロント唯一の南アジア芸術家を支援する団体South Asian Visual Arts Centre(以下SAVAC)で芸術監督を務める傍ら、自身もアーティストとして活動を続けているSharlene Bamboatさん。SAVACの活動やカナダの南アジア芸術に対する考え、最近の南アジア芸術の傾向などを伺いました。
SAVACについて教えてください。
私が4年働いている南アジア芸術を支援する団体、SAVACは固定のギャラリーを持たない団体です。オフィスはありますが20年間ギャラリーなしで南アジア出身の現代芸術家をカナダで支援するために活動しています。さまざまな団体と提携しているので決まった場所がなくても支援できますし、実際に1つの展示スペースに限られることなく、自由に作品をカナダ全土に持ち込むことができることが大きな利点です。
主にどこの国の芸術家たちを支援していますか?
私たちの拠点はカナダにあるので、主にカナダにいる移民芸術家を支援しています。彼らの出身はインド、インドネシア、イラン、アフガニスタン、パキスタン、マレーシア、シンガポール、ネパールなど多岐に渡ります。来年には写真雑誌と提携してカトマンズ出身のアーティストを支援する予定です。
南アジアでの芸術の役割とは?
南アジアを含む多くの社会で、芸術はとても重要な役割を担っています。特にこちらへ移民してきた芸術家の多くは日常生活から個々のアイデンティティをテーマにしたものが多いです。他にも文化、宗教、政治、ジェンダーなど様々な分野で芸術は重要な役割があると思います。
カナダの都市によって芸術に対する反応は違いますか?
そうですね、トロントではアジア芸術や新しい表現に対して少し慣れている感じがありますがアジア人人口も多いのでいつも良い反応がもらえます。ミシサガはトロントに比べて少し反応が鈍い気がします。しかしモントリオールではとても良い反応がありました。モントリオールの人々は私たちが取り扱っているような現代南アジア芸術を見たことがなかったようなので、とても新鮮で面白いと感じてもらえたようです。州や言語をまたがっても芸術を理解してもらえるのは本当に素晴らしいことだと思います。
トロントで人気の芸術はなんですか?
もちろん演劇なども人気ですがトロントではインスタレーション(オブジェだけでなく光・音・動きなども取り入れた現代芸術)や映像芸術など新しいメディア芸術が人気です。オークビルにギャラリーを開いたときに、大きなショーを行ったのですが10人のアーティストのうち9人が映像芸術を発表していました。もちろん絵画や彫刻に特化した展覧会も行いますが、ここまでメディア芸術がメジャーになったのは以前よりも簡単に映像を撮り、編集することができるようになったためだと思います。それに映像であれば南アジアからこっちに作品を持ってくることも他の芸術作品に比べて非常に簡単です。それらがメディア芸術を後押しする要因だと思います。
お気に入りのアーティストはいますか?
特定の好きなアーティストはいませんが、いいなと思うアーティストはたくさんいます。現代芸術は常に前衛的で政治的な側面を持っていると考えています。そういった側面は見る人への問題提起となり、考えるきっかけとなります。私たちSAVACは特にそのようなメッセージ性の強い作品に興味を持ち、価値を見出しています。
SAVACが何か困難に直面したことはありますか?
大きく3つあります。まず1つ目は運営資金の問題です。どこも資金繰りはいつも大変だと思いますが、ただでさえ少ない予算であるにも関わらず、最近オンタリオ州からの資金提供が減額されました。資金提供の減額は、芸術市場や経済に大きな影響を与えます。少ない資金で今までと同じ質、量の仕事をこなすのはとても困難ですが、いろいろ工夫して続けています。もう1つは私たちの組織のアイデンティティに関する問題です。サポートしたいアーティスト全員をサポートできるわけではなく、SAVACとしての理念の範囲内にいる人しかサポートすることができません。最後は私たちと白人社会との間にあるに南アジア芸術に対する理解の差です。私たちのアイデンティティを理解してもらうためには常に教育が必要ですが、それはとても複雑で難しいです。芸術分野ではいまだに白人社会であり、まだまだ白人文化が優位です。人口の半分以上が移民であるにも関わらず、この20年変わることがないというのは大きな問題です。
将来、南アジア芸術はどうなると思いますか?
南アジアの定義は広いので、答えるのが難しいですがインドや中国の成長とともに発展していくと考えられます。世界各地で中華系またはインド系のイベントが開かれるようになっているのもアジア芸術を広めるのに一役買うでしょう。また、欧米など多くの人々が以前よりも南アジア芸術に注目し始め、芸術市場としてもこれからますます大きく成長していくと思います。
最後にTORJA読者にメッセージをお願いします。
トロントは大きな街で、たくさんのイベントなどがあり、無料で参加できるものもたくさんあります。また多くのギャラリーは無料で、ただウィンドウショッピングをするように歩くだけで様々な芸術に触れられます。それにトロントはニューヨークに比べて小さいけれど、たくさんの文化に関するお祭りがあるので、常に新しい発見があると思います。私はいつも、同僚と冗談で「1年間の休みがとれたら365日毎日ギャラリーや文化センター、お祭りをできる限り回って、新しいものに出会いたい」と言っています。トロントでは新しいものに出会うたくさんチャンスがあるので、学校の友達だけでなくいろんな人にも会ってみてください。
South Asian Visual Arts Centre
savac.net
カナダ唯一の南アジア芸術家を支援する団体。それぞれの地域や国で起きている出来事を中心に問題提起や考え、経験を表現し、それぞれの地域や国に対しての新しい見方を提供する。固定のギャラリーは持たず、展覧会に合わせて様々なギャラリーと提携しカナダ全土で展覧会を行っている。
次回Exhibition
「Monitor 11: South Asian Experimental Film + Video」
Curated by Leila Pourtavaf & Azar Mahmoudian
3月31日午後7時~@OCADU (Ontario College of Art + Design University)