国際結婚ストーリー コリン・サンダースさん × 松田亜未さん
言葉も不自由なく、仲良く過ごしていた二人。しかしある日、夫が無職になって生じた日本人にとって理解しがたい“考え方の違い”。
カナダ人にとって“普通“のことを理解しようとする努力とお互いのコミュニケーションで、“違い”の壁を乗り越えたご夫婦の国際結婚ストーリーとは。
東京で出会い、遠距離恋愛を経て、松田さんがカナダに行くことを決めたそうですね。出会いから結婚までの道のりを教えてください。
亜未さん:2008年、私は東京で働いており、短期間の仕事のために東京に来ていた彼と、通勤中の小田急線の車内で出会いました。毎朝同じ時間、同じ車両、同じドアから乗ることで、お互いが存在に気付き、ある日彼が連絡先を書いた手紙をくれたのです。彼の性格から、見知らぬ人に手紙を渡すことなど考えられないので、相当勇気を出してくれたのだと思います。
一緒に出かけるようになって数ヶ月後、彼の仕事が終了し、トロントに戻ってしまいましたが、連絡は欠かさず取り合い、お互いを訪ね会って家族に会ったりしながら過ごしました。そして1年半ほど経った後、私がカナダに行くことを決めました。
トロントでは彼と彼の家族が温かく迎えてくれ、私がカナダに溶け込めるようにと様々なサポートをしてくれました。そのため家族関係には何も不安はなく、それから1年後、プロポーズを受けて結婚・移住を決意しました。
お二人ともお互いの言葉を話し、意思疎通を取られている二人でも、育った環境や文化の違いなどから生じる不安や違和感はなかったですか?
亜未さん:言葉については、お互いまだまだ勉強が必要ですが、夫は出会った時には日本語の簡単な会話・読み書きはできましたし、何より外国語で生活をすることに理解を示してくれるので、あまり問題を感じたことはありません。
文化についても日頃は特に違和感を感じることはないのですが、3年前に夫が無職になった時には〝違い〟を感じましたね。自分のキャリアに結びつかない仕事はする意味がないと、〝取りあえず働く〟ということはせず、就職活動の傍ら友人とプロジェクトを起こしたのですが、仕事人間の父の下で育った私には、不安定な生活に不安を抱かない彼が理解出来ませんでした。私の両親に話をする時は、心配をかけまいと言い訳がましくなってしまいましたね。結局は、新しいプロジェクトを通して新技術や経験を習得し、それを転職に活かしキャリアアップできたので、今振り返ると彼が正しかったのですが・・・。
ただ、日本人にとっては理解が難しくても、カナダ人やカナダ人を夫に持つ友人たちからは、かなり高い確率で、「うちも○年前に…」という返事が返ってきました。自分やパートナーが無職、または学校に戻るという状況は、カナダ人にとっては珍しいものではないようです。
周りからの助言と、とにかく彼と話をすること、彼を信じること、なるべく楽天的に考えることで乗り切りましたが、私たち夫婦にとっては、その時の経験から学べたことは、非常に大きかったです。
特に私にとっては、彼の故郷ということで少なからず頼ってしまう部分のある生活の中、彼のやりたいことを支援し支えることができたというのは、私の自信にも繋がりましたし、夫婦はお互い支え合い、平等であるものだということを、身をもって体験することができました。
カナダで生活し、現在、1歳7ヶ月の娘さんもいらっしゃいます。夫婦生活、育児等でカナダの良い点はどんなところでしょうか?
亜未さん:やはり夫も私も残業がほとんどなく早く帰宅できること、その分家族で過ごす時間を多く取ることができるのは、とても良いですね。会社や上司が、子供の送り迎えや学校のイベント等に理解があるという点は大変有り難く、日本も少しずつでもそうなって欲しいと思います。ただ、私達はカナダに不満はありませんが、日本も大好きですので、いつか日本で暮らしたいと話をすることもあります。
コリンさんにお聞きします。日本人女性とのお付き合いや、結婚して良かった点や気付いた点などを教えてください。
コリンさん:日本人女性が全て同じとは思いませんが、妻は事前に予定を立てたり、毎週スーパーのチラシをチェックし献立を決めたりと、計画を立てることが好きですね。もっとリラックスしなよ、と思うこともありますが、そのお陰で時間やお金を有意義に使えていると思います。また、日本食は美味しくバラエティに富んでいるので、家で食べることができるのは嬉しいです。妻と一緒に暮らすようになって、魚や野菜をよく食べるようになりました。妻が面白い日本の漫画やテレビ番組を教えてくれて、一緒に見れるのも楽しいですね。また、我が家には妻が買ってきた多くの日本製品がありますが、私は料理に使う菜箸がとても便利で驚きました。何でも簡単に掴めますし、ひっくり返すことも混ぜることも出来て、本当に万能です。日本には北米の文化と異なる伝統的なものと革新的なものがたくさんあるので、それらを知り、刺激を受けられることも良い点ですね。
お二人が仲良く生活していくための約束事やルールなどを教えてください。
亜未さん:約束事は、「隠し事はしないこと」と「子育てと家事は平等に分担し、責任を分かち合うこと」です。夫婦の時間を大切にするため、娘が寝た後に家事を分担し合って、2人の時間を設けるようにしています。話をしたり一緒に映画やテレビを見たり、時にはお互いが別々のことをしていますが、貴重で大切な時間ですね。