【第一回目】プロフットボールCalgary Stampeders #19 佐藤敏基選手から学んだトレーニング方法 × マッサージセラピスト青嶋正さん|プロアスリート対談
青嶋:フットボール選手のトレーニング方法について教えて下さい。
佐藤:フットボールは強いコンタクトがあるので安全面から、まずは一定レベルの首の強さになるまでフィールドでの練習は認められません。練習の特徴は、週6日練習日があるとしたら3日が実戦に近い動きの練習です。残り3日はウェートトレーニングとフィールドトレーニングメニューにキッチリ分けます。プロの場合、コンタクトによる脳震盪のリスクを減らす。各チームの練習時間を制限して公平性を保つなどの理由があります。
青嶋:具体的なトレーニング方法を教えて下さい。
佐藤:決まったフットボール選手用ルーティーンがあるわけではありません。大切なのは、自分に合った、自分に必要なトレーニング方法を行うことです。これまでの選手生活の中で怪我をしたり、不調になった時に一つ一つ解決してきた方法を積み重ねてカスタマイズされた自分流トレーニングが完成しました。今まで出会った色々にバックグラウンドを持つ人から学んだ知識の塊です。
自分流を見つけるまでの流れ
③ 技術的な問題は、自分の考え方や体の使い方を変えて改善する。
④ 体の問題は、目的とする動きをするのに自分に何が足りないかを専門家に見極めてもらい、ピンポイントで筋肉を強化したり関節を緩めたりして改善する。
このように問題点を明確に見極めれば、専門家から明確な答えが得られると思っています。
トレーニングで気をつけるポイント
佐藤: 常に自分の体と会話して疲れ具合や、動きの悪い箇所を把握して無駄な負荷をかけないようにトレーニング部位やボリュームを調整するのが大切です。大きなボリュームを根性でこなせば結果が出るという時代は終わったと思います。
私にとってトレーニングの目標は、常にキッカーに必要な動作を良い状態に保つ、そしてより遠くへボールを飛ばすことです。目指している良い感じの動作とは、体の軸が取れた動きです。
「プレーが上手くいかない時は、必ず体の何処かに問題あり!」ということを青嶋先生から教わりました。
青嶋:そこが伝わったのは嬉しいですね。ウエイトトレーニングは、どのようなメニューなのでしょうか?
佐藤:普通はチームスポーツという特性から、チームから提示された同じトレーニングメニューを皆んなでこなす感じです。自分はキックだけを専門に行うポジションなので、強いコンタクトのあるディフェンスの人達と同じメニューというのには疑問が残ります(キックの動作に必要のない筋肉をつけてしまうと動きが悪くなるなどのデメリットがある)。
自分の目標とするウエイトトレーニングは、キックに必要な良質な筋肉を作るためなので独自のメニューを追加でこなします。
最終的にウエイトトレーニングで1番大切なのは怪我しないこと!
佐藤:こういうとカッコ良いですが、実は高校の時の苦い経験がベースにあります。ウエイトトレーニングは、とりあえず「重いウエイトをあげた方が偉い」雰囲気が漂うので、無理なポジションで友人と重さを競って腰を痛めた事があります。
青嶋:ありがちなミスですね。
佐藤: この怪我を機にウエイトトレーニングについて考え直しました。体の構造をチームトレーナーに教わったりして、何がどうなって怪我に繋がったのか?原因などについても考えるようになりました。今は、無理なポジションで無理矢理重いのを持ち上げるよりも、10㎏減らしても綺麗なポジションであげることに心がけています。
青嶋:いまだにウエイトを競争している選手はいますか?
佐藤:とりあえず体を大きくして見栄えの良い「見せ筋」を鍛えてる選手も多い気がします。
青嶋:佐藤選手の考える怪我予防について教えて下さい。
佐藤: 単純ですが、負荷に耐えられる強い体を作ること、体を動かす前後にウォーミングアップ&ダウンを丁寧に行う事に尽きると思います。
高校で怪我をした時は「MCLとは?」と損傷部位もわからない感じでしたが、トレーナーの指示や説明を全てコピーして受け入れているうちに、体の構造や負担のかかり方、怪我を治すだけでなく根本原因を見極めて怪我の再発を防ぐような体のメカニズムに興味を持ちました。
*MCL = 内側側副靭帯(膝の内側を支える靭帯で膝への横からの強いインパクトなどで損傷しやすい)
青嶋:優秀なトレーナーさんとの出会いが、佐藤選手のトレーニングに対する基本コンセプトを築いたきっかけなんですね。
佐藤:正しいフォームを身につける事も重要です。激しい動きも正しいフォームで行うと体に負担がかからず怪我予防になると考えています。
最終的には怪我に対する意識を、どれだけ高く持てるかが大きいと思います。例えば、プロは怪我したら稼げないので怪我予防への意識が高くコンディショニングに対する真剣度がアマチュアとは全く違います。
青嶋: 同感です。私の仕事の本質は体の管理意識ゼロの若い選手たちに、怪我をする前に佐藤選手の様な考えを持ってもらうようにアドバイスしていくことだと考えています。