カナダハウジングプランについて|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第81回】
今回は、今年発表された「Canada Housign Plan(以下「ハウジングプラン」)」についてお話したいと思います。
2024年4月、政府は「カナダの住宅危機の解決」を目標として「Solving the housing crisis: Canada’s Housing Plan」を発表しました。全国的に住宅が不足していることやカナダ国内に住む人たちが住宅を買えないことは深刻化しており、その解決のためには、ニーズに合った全てのタイプの住宅の供給数の増加と物件購入条件の改善が不可欠との認識を示しました。
ハウジングプランは次の3つを主旨としています。
- より多くの住宅の建設すること
- 住宅の賃貸や購入を容易にすること
- 住宅難のカナダ人を救済すること
「頑張って働いてお金を貯めれば自分の家が買える」という何世代も引き継がれてきた認識は、給与賃金に見合わないペースの不動産価格の高騰に直面する若者層や全ての年代に共通する悩みとなっています。また賃貸を選択する人々も賃料の急速な上昇に苦しんでいるのが現状です。私たちに直接関わりのある前述②における主な内容についてご紹介したいと思います。
賃料支払履歴のクレジットスコアへの反映
住宅を賃貸している多くの人にとって、初めてのモルゲージ申請、モルゲージの組み換え、その他クレジットスコアを求められる場面において賃料支払の履歴をクレジットスコアとして使うことができません。
そのためクレジットスコア会社、融資機関等に対して、賃借人の賃料支払い履歴もクレジットスコアとして反映するシステムの構築し、モルゲージ審査の通過やモルゲージレートが改善するよう、規定改定に取り組む予定です。
モルゲージの償却年数の延長
ファーストホームバイヤー(初めて住宅を購入する人)、特に若者層にとって高額のモルゲージ(住宅ローン)の返済金額は重荷であり住宅購入の可能性を遠ざけています。そのためファーストホームバイヤーが新築物件を購入する際のモルゲージの償却年数について、2024年8月より30年に延長されました。
頭金支払いに際する税金免除
最初の住宅を購入する際の頭金の支払いについて、The New Tax-Free First Home Saving Accountに登録した場合、毎年8000ドルおよび合計4万ドルまで頭金の支払に充てることができます。
Tax-Free First Home Saving AccountではRegistered Retirement Savings Plan (RRSP)同様、払い込んだ金額は、該当年度の税務申告上、年収から控除されます。
そして、The New Tax-Free Saving Account(TFSA)同様、住宅購入の際の引き出しについて、プラン内で得たキャピタルゲインや金利もタックスフリーとして扱われます。
つまり、払い込み時には、払い込んだ分がタックスフリーとなり、引き出す時点では、プラン内で得た利益も含めて全額、タックスフリーとなります。
引き出し金額の増加
ホームバイヤープランはRRSPからお金を引き出して自分のための住宅を購入あるいは建設することができるプログラムです。
不動産価格の上昇を背景とするファーストホームバイヤーの頭金支払いの補助策として、初めて住宅を購入する場合、RRSPから引き出すことのできる金額が3万5000ドルから6万ドルに変更となりました。
またこの引き出し金額について税金はかかりません。
短期賃貸物件の税金控除の撤廃
コミュニティーに住むまたは働く人たちにより安定した住宅を提供することを目的として、州・市ともに短期賃貸物件にかかる支出に対する所得税控除が撤廃となりました。
短期賃貸アパートへの規制
住宅を購入また賃貸する人たちを妨げているとして、短期賃貸アパートへの規制が強化されます。この実施策として5000万ドルの予算が組まれました。
外国人による住宅購入禁止令の延長
カナダ人により多くの住宅を提供することを目的として、2023年より2年間の時限法として施行された外国人による住宅購入禁止令(The Prohibition on the Purchase of Residential Property by Non-Canadians Act)が2027年1月1日まで延長されました。
自宅改装における低金利融資
オーナーが賃貸目的として自宅の地下室やガレージを住宅用に改装する場合、上限4万ドルの低金利での融資を受けることができるよう検討されています。
ゾーニングの改定
より多くの住居を提供することを実現するためにゾーニングを改定し、例えば現在の住居を増築して部屋数を増やしたり、1世帯のみ居住可能だったバンガロータイプの戸建てを3世帯が住めるような複数住宅に建て替えることを促進しています。
公共交通機関の整備
住宅エリアの拡大および利便性増加のため、公共交通機関の拡張と整備を進めるための予算が組まれました。
ハウジングプランの実施によってカナダの不動産事情が改善することを願ってやみません。
https://housing-infrastructure.canada.ca/housing-logement/housing-plan-logement-eng.html
今年も大変お世話になりました。どうぞ良い新年をお迎えください!
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