The お金とカナダ(インタビュー)
$多民族都市トロントで聞きました!The お金とカナダ$
貨幣価値の考え方は生まれた国や育ってきた環境、教育、そして現在の職業や生活環境などによって大きく異なります。自国を離れ、世界でも有数のマルチカルチャー都市カナダ・トロントで生活する「フィリピン」「ベネズエラ」「台湾」「トルコ」「韓国」「スペイン」「ベルギー」「コロンビア」の人達にインタビューを行い、カナダと自国のお金の価値の違いやカナダでの生活について聞きました。
質問内容
① 自国だと1カナダドルで何が買える?
② カナダと比べて自国の景気はどう?
③ 経済的メリットを考慮してカナダに住みたいと思う?
④ 英語の習得は自国での就職活動に効果的だと思う?
フィリピン Rommel Dagangさん
①地域によって異なりますが、$1で5匹くらいのロブスターが買えます。
②フィリピンはカナダと比べると新興国です。人的資源やココナッツの輸出が主な産業になります。人的資源でいうと近年多くの外国企業がフィリピンでのアウトソーシング事業を展開するケースも増えてきました。まだまだ発展途上ですが、海外企業のフィリピンへの進出の増加と人口増加によって、経済は上向きです。
③カナダはフィリピンよりも仕事も安定性もあるので住みたいと思います。ただ、天候は全く違い、私はカナダに来て18年経ってだいぶ慣れましたがいつかリタイヤの時がきたら、天候と健康のためにフィリピンで過ごしたいと思います。
④どのような職業やキャリアを選択するかによって重要さは異なります。教師、医者、弁護士、エンジニア、航空関係や政府機関で働く場合は重要になります。英語を話せるということはそれだけ高い教育を受けたというアピールにもなります。ただ、フィリピンでは教育的インフラ整備(教員数や学校数充実度)は地域によって異なり、全ての国民が同じ水準の教育を受けられる訳ではありません。そのため多くの男性はより良い仕事を求めて国外へ行きます。
ベネズエラ Ernest Sequeraさん
①スターバックスのコーヒーが5杯くらい買えます。
②自国の経済状況は本当によくありません。10年ほど前と比べてとても悪くなり
ました。ベネズエラは石油に経済を頼っている国家なので、石油価格の下落に伴い経済状況は本当に厳しい状況となっています。石油価格が10年前と比べて現在では3分の1ほどの価格になりました。また、治安も悪く日々様々な所で略奪や強盗が起こってしまっています。
③住みたいです。現在多くのベネズエラの若者がカナダの大学やカレッジに進学し、その後カナダでの就職を希望しています。カナダドルは自国の通貨と比べて20倍近く違います。カナダドルを自国に持って帰ったとしたら、パートタイムの仕事であってもかなり良い生活が送れます。自国の経済状況の改善には最低でも20年〜30年はかかるのではないかと思います。来年には選挙が行われるので次の政権に期待したいと思います。
④経済的に一番繋がりがあるのはアメリカなので、英語が話せることは就職において強みとなります。
台湾 Kevin さん
①コカコーラ缶一つ買って少しおつりがくるくらいです。
②台湾の方が良くないです。台湾国内の工場は中国へ移管され始め、台湾人が就ける仕事がとても少なくなりました。台湾のプロダクトメーカーも少なく、台湾で就職しようと思うと多くの人がサービス業を選択しています。また、ここ10年間で物価上昇が起きていて、物を買いづらい環境が強くなってきました。
③私は既に10年以上前にカナダに移民していますが、もし現在も台湾に住んでいるとしたらカナダに移りたいと考えると思います。若者世代では海外留学後、そのまま留学先の土地で仕事を得たいと思っている人が多いです。特にオーストラリアやカナダは人気で、多くの若者が高校卒業後留学を目指す傾向にあります。若者がそう考える大きな要因の一つが平均賃金の違いです。台湾とカナダでは2倍近く差があります。もちろんカナダの方が高いです。
④台湾ではそこまで重要視されていません。外資系企業や英語圏の企業との輸出入を対象としている企業に絞らない限り、英語が話せるかどうかは就職において重要な要素ではありません。
スペイン Joan Navarraさん
①エスプレッソが買えます。
②よくありません。スペイン国内での仕事は少ないため、国外で仕事を探す人もたくさんいます。特に20代後半から30代前半の世代はロストジェネレーションと呼ばれています。欧州経済危機からスペインの景気は回復してきたと言われていますが、若者の失業率は高く25%ほどの数字を常にキープしています。高い失業率の背景には良い教育を受けたとしても得られる仕事が学歴に見合ったものが少ないので、あえて就職をせずに機会を待っている若者も多くいるということも理由に挙げられます。
③思います。現在スペインは本当に仕事が少なく、一つの求人に多くの人が応募し、かなりの競争率です。よくスペインの国民性はゆっくりしていると言われていますが、経済危機以降人々の仕事に対する取り組みは変わってきました。それだけ仕事を得る機会が少なく、更に得た仕事を手放す訳にはいかない状況です。ちなみに日本人の友人に必ず「シエスタって本当にあるの?」と聞かれるのですがありません(笑)。よっぽどの個人商店などではあるかもしれませんが、スペインの企業もほかの国の企業と同様に、ランチタイムを30分〜1時間ほど取る程度です。
④英語だけを話せるのでは十分なアピールにはなりません。英語は話せて当たり前、更に三カ国目の言語としてロシア語や中国語、ドイツ語などが話せてやっとアピール出来るくらいです。
韓国 Kyung Aさん
①都市部と地方では若干異なりますが、カナダで$1で買えるものとほとんど同じです。日本でおなじみの100円ショップダイソーもソウルには多くあり人気です。
②一概には言えませんがそこまでの差はないと思います。私たち若者世代も韓国内の景気が良くないので海外への就職を目指すという意識は特にありません。
③思いません。韓国とカナダを比べると平均賃金はカナダの方が高いですが、飲食代や生活費は韓国の方が安いので自国の方が住みやすいと思います。またカナダは税金が高いので更に物価も高く感じます。
④多くの企業が学生のTOEICのスコアを採用時に重要視しているため、就職活動においては有効というよりは必須です。ただ、就職後英語を使う仕事が多くあるかというとそういう訳ではありません。英語スキルのみならず、韓国は学歴重視社会です。近年、大卒以上の高学歴者と高卒者間の就職差別が問題となっています。
トルコ Serkan Kulacaさん
①500mlの水のペットボトルが5本くらい買えます。
②カナダと比べるのは難しいですが、悪くはないと思います。しかし10年前と比べるとここ数年の経済成長の勢いは落ち着いてきました。中東に位置するトルコではユーロとドルの影響をかなり受けているので、現在のドル高も景気に悪影響を与えています。ユーロとドルの差が大きくなると経済も安定しにくくなります。
③私自身は経済的メリットだけを考慮してカナダに住むということはありません。ただ、トルコ自体は近年人口増加に伴い若者世代の就職が追いついていないというのは事実で、若者世代が高い教育を受けるため、また学費を安くあげる為に海外留学するケースは多くあります。トルコからの海外留学先は主にフィンランド、ノルウェー、ドイツが挙げられます。これらの国の大学は奨学金制度や、国自体が海外留学生に対しても教育費免除を掲げている事が多いので、学生からみてかなり魅力的です。またトルコからだと飛行機で2時間程度で行ける近さも人気の一つです。その後、海外留学先で就職する者もいますが、そこまで多くないという印象です。
④もちろん有効です。特にトルコは観光業が主要産業ですので、英語の習得は強みとなります。ただ、近年は多くの若者が英語を話せるようになっているので、特別なスキルとして認められにくくなり、ロシア語や中国語など他言語の習得に目を向ける者も多いです。
ベルギー Jessica Dadaさん
①クロワッサン一個が買えると思います。
②すごく良いとは言えませんが、悪くはないと思います。ユーロ加盟国の中でもベルギーの経済は上位に位置しています。ただ、欧州経済危機の影響は未だ残っており、楽観的状況とは言えません。
③私自身は思いません。カナダとベルギーの経済状況はほぼ同等くらいだと思います。ただ、ベルギーの失業保険制度や教育制度は良いので、自分が家族を持つとなるとベルギーの方が住みやすいと思います。例えば、失業保険は仕事を探している限り受給が可能です。知人の一人は30年近く失業保険を受け取り続けています。また高校までの教育は無料で受けられますし、大学に進学したとしても奨学金によって学費が免除されたり、もし払うとなってもかなり低い学費で進学する事ができます。医学部などの特別な学科を除けばほとんどの大学が無試験で入学できます。ベルギーの学校には定員オーバーという考え方がなく、もし志願者が増えればその分枠を増やします。学生には希望通りの教育を受けさせる考え方が根付いています。
④もし、首都ブリュッセルや政府機関で働くのであれば英語は必要です。ベルギーは公用語がフランス語、オランダ語、ドイツ語と3つ存在しますが、同じ国民同士であっても、母国語以外で話す場合は英語を使用する場面が多々あるからです。
コロンビア Leonard Duarteさん
①一人分の朝食くらいは買えます。コーヒーとサンドイッチなどです。
②良くありません。若者の失業率は高く、弁護士や医者などのプロフェッショナルな職業以外は求人がかなり少ないです。経済状況が悪いせいで路上でのひったくりなど犯罪も多いです。ただ、景気が悪くてもコロンビアは陽気で明るく前向きな人たちが多いです。
③思います。求人が少ない上にコロンビアはコネ入社文化が根強く、応募先に知人がいるかどうかが合否を左右する要素となる場合が多く存在します。その為就職活動は全員に平等ではありません。私の友人の多くも大学卒業後コロンビア国外で就職をしました。
④有効です。コロンビアでの優良企業の多くはアメリカとも繋がりが深いので、英語が話せるのは良い企業へ就職出来るかどうかのポイントとなります。