トロントの居酒屋風雲児 #18「みなさん、 Wagyu好きですか?」
「みなさん、 Wagyu好きですか?」
肌寒い日も少しずつ減ってきて、日が長くなってきたもののまだまだ夏とは言えない天気が続いていますが、夏もすぐそこのはず。一日も早くTシャツ一枚で出掛けられるような暖かい日が続いて欲しいものです。私たちも今月6月からは週末の昼から営業の開始、中旬からは夏メニューの始動など少しずつ夏らしくなってきました。夏はイベントへの参加も色々と予定しているので、夏の気候を楽しみながら夏を盛り上げていきたいと思います。
先月はメニュー作りやメニュー変更についてお話ししましたが、お客様に喜んでいただけるメニュー、またそのメニュー構成を考えることはなかなか大変なことです。メニューを作る時には季節感がありお客様が求めている物や流行っているものなどをなるべく作るようにしていますが、アイデアに詰まることもあるので、自分が食べたいものやスタッフが食べたい物などを聞いて作ることもよくあります。私達は居酒屋業態なので、お魚からお肉、ご飯ものまで幅広いメニューを揃えていますが、今の店舗ではカナディアンのお客様が多いということもありお魚料理よりもお肉料理の方が人気があります。やはりみんなお肉って大好きですね。
もちろんお肉を召し上がらないベジタリアンのお客様も多くいらっしゃいますが、やはりお肉料理の方が圧倒的に人気があります。鶏の唐揚げや骨付きカルビなどはもう定番として人気ですが、ここ最近人気があるのは和牛ビーフです。部位や産地にもよりますが、かなり高額な商品なので以前はなかなか使用できなかったですが、トロントでも色々な種類の和牛が手に入るようになり、お客様の認知度も上がってきていると思います。
和牛というと日本産の牛肉のように聞こえますが、海外で飼育されていても和牛と呼ぶことができます。厳密に言うと明治以降に日本に昔からいる従来種の牛に外来種を交配し、品種改良を重ねてきた4種類の肉専用種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)のことをさします。そのうち黒毛和種が約95%を占め、一般的には和牛といえばこれを指します。肉質は柔らかく、、最高級の牛肉は筋肉の中に脂肪が入った「霜降り」(サシ)で有名です。「神戸牛」「松阪牛」「近江牛」といった産地を冠した銘柄牛はすべてこの系統に入ります。
日本では1990年代から東南アジアの富裕層向けに輸出され、一定の消費者を獲得してきましたが、2010年に口蹄疫、2011年に原発事故が発生したことで輸出ができなくなり、市場を失いました。和牛が輸出できなくなった間に、米国やオーストラリアで「外国産WAGYU」が生まれ、シンガポール、香港、タイなど東南アジア諸国の高級レストランなどで提供される肉の多くはオーストラリア産に置き換わってしまいました。
今や海外で「WAGYU」と言えば、「日本産牛肉」ではなく、「高級牛肉の代名詞」となっています。現在、私達もオーストラリア産の和牛を主に使用していますが、スーパーで並んでいる通常の牛肉と比べるとサシ、肉の旨味、柔らかさなど、格別です。値段は高いですが、やっぱり美味しいんです。質より量もいいですが、量より質と考えるとやはり和牛になるのですかね?カナダでも和牛の飼育は行われているので、今後もっと価格の面で手が出しやすくなれば、和牛の人気はもっともっと上がるかと思います。美味しい和牛がもっとお手軽に入手できれば夏のバーベキューでも楽しめるんですけどね…
小笠原 克 Ogasawara Masaru
日本ではファッションブランドGapでアルバイトからマネージャーまで7年間勤務、新規店の立ち上げや日本売り上げNo.1店舗での管理職を経験し、2005年にワーキングホリデーでバンクーバーに渡加。ファッション業界からの転身となるが、調理師免許保持や両親の飲食関係の仕事の影響などもあり、大人気居酒屋Guuでワークビザを取得し男前店で副店長を務める。その後2009年トロントでのFC立ち上げ総責任者に任命されトロントへ。寒い冬でも毎日行列のできる大繁盛店となり、トロントの日本食パイオニアとなる。2014年にはKinkaFamily Inc.の副社長に就任し、居酒屋の他、ラーメン、寿司、焼き鳥などのブランドを管理、2015年10月末GuuとのFC契約終了とともに独立・起業。現在は世界で皆に愛される飲食店を開業できるようにと奮闘中。