知識の泉 トロント大学付属図書館の実態に迫る!
トロント・オンタリオ州のみならず、カナダNo.1と称される名門大学であるトロント大学。そのレベルの高さを支えている要因の1つとなっているのが、大学付属図書館だ。
この図書館、実はある「北米第3位」の記録を持っているのです!今回は、その記録を含め、このトロント大学の学生たちの学力を支えている図書館の秘密を徹底解剖していきます!
「北米第3位」として知られる図書館について詳しく教えてください
大学はダウンタウン、ミシサガ、スカーボロの3か所にキャンパスがあり、図書館はその3キャンパスの中に合計44個あります。その合計蔵書数は約1200万冊の印刷本、約150万冊の電子書籍、15万冊の雑誌類、この他、記録保存されているアーカイブデータがあります。私たちは現在、このアーカイブデータの拡大に最も力を入れており、アーカイブは現在2万8千立方メートル、データ量で表すと500テラバイトにもなります。通常の電子書籍が1メガバイトから5メガバイトであることを考慮すると、1千万種類以上のアーカイブを持っている計算です。今後、近いうちに約3倍の1.5ペタバイトまでの拡大を予定しています。
なお、これら蔵書は、カナダ最大のリサーチコレクションを誇っています。またThe Association of Research Librariesが1906年以降毎年行っている北米ランキングで、例年上位5位以内だったのですが、今年は第3位に選ばれました。このランキングは所有蔵書数とその内容、司書のレベル、図書館が提供しているサービスなどを全体的に考慮して選ばれるもので、トロント大学は、上位10位以内唯一のカナダ大学でした。
図書館が行っているサービスについて教えてください
基本的な本の貸し出しや印刷、ITサポート、そしてリサーチの手助けも行っています。これらのサービスは学生、教授だけではなく、卒業生や一般の方にもご利用いただけます。借りられる本の制限は学位または役職で14日間・最大50冊から42日間・最大100冊まで変わります。年間平均400万冊が資料などとして借り出されています。
リサーチの手助けに関しては、直接図書館に来ていただくか、電話、メールでも質問することができます。また、アポイントメントを取ることで、1対1でリサーチプロジェクトの深い内容について話し合うことも可能です。さらに、当館ではオンタリオ州の大学と提携して「Ask a Librarian」というサービスも提供しており、オンラインチャットで夜10時まで質問にお答えしています。昨年度は1年間で50万人の方が我々の作ったリサーチガイドを閲覧し、1年間で900万件近くの資料検索などでデータベースへのアクセスがありました。また3000回以上行なった図書館の使い方セミナーでは約4万5千人の方に来ていただきました。
44の図書館の秘密
それぞれサイズは様々ですが、Robarts Libraryが社会人文学のメイン図書館、Gerstein Sciences Information Centerが自然科学、医学のメイン図書館です。他にも法律関連を集めたもの、歯科、物理学、地球物理学などいくつかの分野ではそれに特化したものもあります。
中央図書館となるのが地下2階、地上14階建てのRobarts Libraryです。ここでは主に社会人文学関連の書籍が収められています。またこの図書館内に東アジア図書館、メディア図書館など部門分けされた特別図書館も収納されています。このRobarts Libraryのみで年間1日平均約1万8千人の利用者がおり、学期末には5000席以上もある勉強スペースが埋まるほど、学生たちは期末勉強やプロジェクトに打ち込んでいます。
東アジア図書館を統括するStephen Qiaoさんに聞く、
北米最大の東アジアコレクションを有するまで
東アジア図書館の歴史は1933年まで遡ります。この図書館は4万冊もの中国語書籍がオークションに出され、それを購入したことから始まりました。トロントに書籍が届いたのは1935年のことで、その後1961年までにさらなる寄付によって蔵書は6万冊を超えました。この年から日本語書籍の収集も始め、1979年には韓国語書籍もこの図書館に加わります。蔵書が爆発的に増えるごとにロケーションを変えていましたが、1987年に150万ドルの寄付金を頂き、1990年にこのRobarts Libraryを改築、1998年には今の形となりました。現在はサービスの機械化などを行いながら、日中韓使えるパソコンの導入や蔵書を増やそうと努力しています。
日本語書籍担当のFabiano Rochaさんに聞く、トロント大学の日本語蔵書
日本語書籍の収集は1961年から始まり、現在では19万冊近くの資料を保持、これはカナダ最大の蔵書数です。主に資料、論文書籍などを社会人文学の広い範囲から選択していて、特に歴史と文学書籍が多いです。他分野で言いますと、日本の哲学、宗教、考古学、人類学、社会学、建築学、映画、芸術など様々です。これらの紙の資料に加え、JapanKnowledge、聞蔵Ⅱ(朝日新聞データベース)、ヨミダス歴史館(読売新聞データベース)、そして他の引用索引用のデータベースがあります。これらの日本語書籍は生徒、または教授の勉学、研究をサポートするためのものであると同時に、研究団体にも提供しています。全ての書籍はRobarts Library8階にある東アジア図書館の中に収容されていて、日本関連の英語、またはその他の言語での研究資料はRobarts Libraryの書庫の中にあります。書庫の利用は限られていますが、東アジア図書館の本は一般の方でも、図書館内での利用は可能です。
こちら3名の司書の方々にご協力頂きました。
Margaret Wall Communications Librarian
Stephen Qiao Acting Director & Librarian, China Studies
Fabiano Takashi Rocha Japan Studies Librarian